chat noir (1)
闇に暗躍し、ターゲットの命を奪い取る裏稼業・殺し屋。
これは、その中でも最強と謳われた1人の殺し屋と仲間達の転機の物語。
やがて黒猫が泣き止むと、未来達が2人の元に集まり、ペガサスと澪が手当てを始めた。
「ネコ……すまねぇ。俺、幼なじみなのに、何にも気付かなくて」
「なんで宙君が謝るの? 知らなくて当然だし、謝る必要無いよ。むしろ、私の方こそごめん」
互いに頭を下げ、美夜にも許された黒猫は、彼らと元の幼なじみとしての関係に戻った。
まぁ、さすがに、黒猫から正式にフられた宙の恋は見事に終わりを告げたが。
何はともあれ、これで一件落着となった今、そんな美夜らのためにも、黒猫がブラック・ナイトの司令から足を洗えれば1番いいのだが、現実はそう上手くはいかない。
今回敗戦したとはいえ、彼女自身、龍への復讐を諦めたわけではないし、それが無くても、特捜5課のブラックリストに危険人物として載ってる以上、いつ命を狙われ、宙達に危害が及ぶかわからない。
何より、これまで蠍として多くの人を拷問で殺し、黒猫と名乗ってからも殺しに明け暮れていた彼女にとって、殺人は最早日常であり、龍と雲雀のような殺人依存症にかかっているといっても過言ではない。
猫宮柚は生まれながらにして、普通の少女になれない宿命を背負っているのである。
そのことを本人の口から聞かされた雲雀らは、何とか全てが丸く収まる方法は無いかと思案したが、どのように考えてもロクな事にならない。
そんな中、龍はある解決策を思いつき、黒猫に提案した。
「あ。じゃあ、僕らのところにおいでよ」
「え?」
「普通に戻れないなら、それまでの間、死獣神の仲間になってくれないかな? そしたら、猫宮さんだって苦しまずに済むだろうし」
まさかの勧誘に黒猫はもちろん、澪らも耳を疑い、雲雀と大牙にいたっては龍をバックネットまで引っ張っていき、抗議した。
「何考えとんねん、ドアホ龍! あんた、自分が言うてる事の意味わかっとんのか!?」
「そうっすよ! さっき死闘繰り広げただけじゃなく、先輩を殺すって宣言してる人を勧誘するなんて、正気の沙汰じゃありません!」
「え? そう?」
「『そう?』やあるか! はぁ……あかん。こいつ、完っ全にドアホ全開や……」
雲雀は龍の間の抜けた返事に呆れ果て、深いため息をついた。
それは黒猫も同じで、会話に加わろうと、ペガサスらと一緒に彼らのところに来た。
「ま、2人の言うとおりね。1度病院で診てもらったら?」
「ははは、手厳しいなぁ。それで、猫宮さん。どうかな?」
「そんなの断るに決まってるでしょ。バカじゃないの?」
至極ごもっともな答えと辛辣な言葉に、龍はぐうの音も出なかった。
しかし、彼以外にも黒猫加入賛成派がいた。ペガサスと武文と紫乃である。
雲雀と黒猫は判断ミスや龍のアホがうつったと好き放題言ったが、即戦力級の加入は死獣神にとっても有り難いし、宙らと同じ幼なじみである武文は、友として龍と同意見だった。
彼らの賛同を得られた龍は武文達に心の中で感謝し、手を差し伸べながら、もう一度黒猫を勧誘した。
が、その手を黒猫は、迷いつつも握ろうとはせず、龍達から目を逸らした。
『友達なんかいない』と言っていた黒猫は反省し、宙らとちゃんとした幼なじみになりました。
ですが、だからといって、龍を許したわけではありません。
仲間に加えるのは至難の業ですし、雲雀らの気持ちもよくわかると思います。




