少女の涙(4)
闇に暗躍し、ターゲットの命を奪い取る裏稼業・殺し屋。
これは、その中でも最強と謳われた1人の殺し屋と仲間達の転機の物語。
そんな終幕を、龍が許すはずがなかった。
制止の声を上げながら、龍はドラコスラッシャーを払い飛ばし、彼女の頬に平手打ちをした。
甘さと優しさの塊である龍のこの行動に、澪らは意外性を感じ、黒猫も何が起こったのか一瞬わからず固まった。
「……猫宮さん。やめてよ。なんでそんなに、自分を粗末にするの?」
「龍……君?」
「仇を討つとか、自殺するとかそんなの間違ってる。猫宮さんはそんな存在じゃないし、誰かの代わりでもない! 君は、僕らの大切な友達なんだ!」
「勝手なことを、また……あなたに私の何がわかるって……」
「わかるよっ! 似た者同士だから……だからこそ、君には自分を粗末にしてほしくないんだ」
そう言い終わる間際に、龍は大粒の涙を流した。
戦って言葉と刃を交わす内に見えてきた彼女の心。
自分と同類で好意を持つ相手に死んでほしくないと、涙ながらに説得するのは当然なのかもしれない。
龍はしばし泣いてから涙を拭い、説得を続けた。
「仇を討つ以外存在価値が無いんなら、僕が一緒にみつけてあげる! 真っ暗闇みたいに未来が見えないんなら、一緒に探してあげる! だから、死なないで。猫宮さん。僕はもう、君が死ぬのはもちろん、心も体も傷付くところを見たくないんだ!」
龍からの心の叫びを受けた黒猫は、沈黙し俯いた。
己の行いでも反省したのか。龍や宙らがそう思っていると、
「龍君」
「ん?」
「バカッ!」
黒猫は下を向いたまま、罵声で返した。
急にの『バカ』発言をされギョッとする龍に、黒猫は顔を上げ、
「なんでそんなに優しいのよっ! 敵なら……敵なら敵らしく……冷たくしてよ……」
と、徐々に涙ぐみながら言葉をぶつけ、号泣した。
彼女の本心から出た言葉に龍はようやく気付いた。黒猫が教室でした同じ質問の真意に。
龍はその答えがみつかると、泣き続ける彼女をそっと抱き、優しく頭を撫でた。
「無理だよ。猫宮さん。君は、敵である以前に友達だから。それに、言ったはずだよ。『それが僕だから』って」
「……本当に、大バカ……」
せめてもの悪態で返し啜り泣く黒猫の頭を、龍は慰めるように何度も何度も撫で続けた………………
個人的にではありますが、この一連のシーンは結構好きです。




