朱雀と人形(4)
闇に暗躍し、ターゲットの命を奪い取る裏稼業・殺し屋。
これは、その中でも最強と謳われた1人の殺し屋と仲間達の転機の物語。
部屋に入ると、団長は酒を呑んでいたせいか上機嫌だったが、その笑顔は酒によるものにしては、いやらしいものだった。
「話って何? 団長」
「おぉ、雲雀。おめぇ、もっとトンファーを上手く使えるようになりたいか?」
日頃、人志の圧倒的な技術を側で見てきた雲雀からすれば、願っても無い話である。もちろん首を縦に振って即答した。
すると、団長は素早く雲雀に近付き、唇を奪った。
「なら、身も心も俺の物になれ」
その言葉に雲雀は仰天した。
実はこの団長、とんでもない好色家で、女であれば年齢を問わず手を出す真性のド変態だったのである。
そのせいで何人もの団員が泣かされており、雲雀も噂ぐらいは聞いていたが、まさかそれが本当で、自分に降りかかってくるとは夢にも思っていなかった。
そんな彼女の感情を無視して、団長は再び口づけをし、舌まで入れてきた。
あっと言う間にファーストキスを奪われた雲雀は、ショックで涙ぐんでいたが、内から込み上げてくる感覚に戸惑いを隠せず、だんだん抑制できなくなっていく。
そしてついに、それは覚醒した…………
突然聞こえた団長の断末魔に驚いた人志ら団員が何事かと思い、急いで団長の部屋に入ると、雲雀が返り血に塗れながら、団長の生首とディープキスしていた。
事態を呑み込めない団員らの前で興じる彼女の表情は、普段のあどけない少女のそれとは違い、扇情的で狂気に満ちているものだった。
「ひ、雲雀……お前、何を……?」
「い、イカレてる……」
口々に聞こえてきたその声に、雲雀はキスをやめたが、その顔はまるで欲求不満の雌そのもので、幼い手にはトンファーが握り締められている。
それを見て彼らは悟った。次は自分達が獲物だと。死にたくない団員達は一目散に逃げようとしたが、何を思ったのか人志が彼らの首を片っ端から切り落としていく。
「これでいいかい?」
「お、おおきに、人兄ぃ…………」
感謝を述べ、貪るようにキスをする雲雀を見届けた人志は、自分が狙われないように退避した。
それからしばらくして、サーカス団崩壊を告げる紅蓮の炎がテントも団員も跡形もなく燃やしていった………………
これが雲雀が殺し屋・朱雀になった経緯です。
女好きの変態団長のせいで悪癖と殺人欲求がついてしまったのですから、ある意味哀れかもしれません。




