冷酷な復讐鬼(2)
闇に暗躍し、ターゲットの命を奪い取る裏稼業・殺し屋。
これは、その中でも最強と謳われた1人の殺し屋と仲間達の転機の物語。
なんとかドラコスラッシャーで防いだ龍だったが、彼女が手にしていた武器を見て目を疑った。
黒猫が彼を殺すために選んだ凶器。それは2本のドラコスラッシャーだった。
「驚いた? ブラック・ナイトの技術で再現したの。本当なら今夜、これのアレンジ版を受け取るはずだったし、当初の予定とは違うけど、この際仕方ない……今ここで殺してあげる。あなたの愛刀2本でね」
「わからないよ」
突然そう呟いた未来の声に2人は反応し、戦おうとする手を止めた。
「どうして自分だけ被害者みたいな顔するの!? 私だって、あなた達ブラック・ナイトのせいでお父さん達を失った。なのに、あなただけ不幸な目に遭ったって言い訳して、みんなを巻き込むなんて……そんなの卑怯よっ!」
ブラック・ナイトへの恨みを吐き出すようにそう訴える未来と対照的に、黒猫は冷静に返答した。
「言い訳も何も、私の方があなたより多く失ったからよ。仲間、憧れの人、居場所、親……私はそれらを一夜にして失ったの。大切な人がいるあなたと違って、私には何も無い……だからっ!」
そう言って黒猫は目障りな未来から殺そうとしたが、その凶刃を龍は死に物狂いで払った。
「何考えてるの? 猫宮さんっ! 未来さんは友達だろう? なのに、なんでそうやって平気で殺そうと……!」
「私に友達なんていない」
彼女の口から出た非情な一言に、龍は一瞬フリーズした。
固まる彼に黒猫は、未来だけでなく龍達や、幼なじみである宙と美夜も友達ではないと断言し、長崎の一件は龍の実力を測りつつ、自分のことをカモフラージュするためだと明かした。
彼女の思惑通り、死獣神は黒柴らとの戦い後、長崎でのことや蠍が同世代ということで、宙や美夜らも疑っていた。
「そう。みんなただのクラスメート。失っても惜しくない赤の他人よ」
「……宙君が君に好意を持ってたことや、真美さんが死ぬこともわかってて?」
「うん。元々、龍君以外のみんなや奏さんを1人残らず殺して、絶望に落ちたあなたを殺すつもりだったから。なんだったら、今から宙君達を殺しに行ってあげよっか? 真美さんみたいに惨たらしく」
そう言われて腹が立った龍は青龍になった。
「なんで……なんでそんな悲しいこと言うんだよ。猫宮さん! 友達じゃないなんて、そんな寂しいこと言わないでよっ!」
そう怒鳴る彼の顔には怒りだけじゃなく、友達の存在を否定する彼女に対する悲しみもあった。
そんな彼の様子を見た黒猫は、心なしか嬉しそうだった。
「やっとその気になったね。なら、そうなってる内に殺さなきゃ。でないと、あなたを討てたとは言えない」
「猫宮さんっ!」
「言っておくけど、私のことをドジっ子・猫宮柚だと思って手加減しないでね。あなたの敵・黒猫だと思って殺す気でいかないと、死ぬよ」
そう言って黒猫はデビルアイを発動させ、青龍と刃をぶつけ合った。
忘れてましたが、黒猫と龍のバトルを描く今回は、未来が復活した話より、長くなります。
それぐらい白熱したということで、ご理解下さい。




