赤い目の真実(1)
闇に暗躍し、ターゲットの命を奪い取る裏稼業・殺し屋。
これは、その中でも最強と謳われた1人の殺し屋と仲間達の転機の物語。
平成11年12月25日午前4時半頃。仲間達の機転で中四条小学校の惨劇から免れた蠍は、親である闇と黒揚羽ら本部の者に黒龍らのことを知らせようと、息を切らしながら走り続けた。
ところが、やっとの思いで帰ってきた時にはもう手遅れで、本部は特捜5課の手によって灼熱の炎に包まれていた。
「何……これ……?」
突然のことに状況を呑み込めずにいると、先代司令・黒鳥と闇に言われて脱出していた黒蛇が彼女を見つけ、駆け寄った。
何が起こったのか尋ねる蠍に彼は、本部を襲撃された経緯と黒鳥達が忍の父親ら特捜5課の手にかかって亡くなったことを包み隠さず話した。もちろん両親の死も。
突然すぎる別れと衝撃的な事実を、8歳の少女が受け止めきれるわけがなく、蠍は認めなかったが、事実は変えることができず、どうすることもできないと悟ると、
「そんな……うっ、うぅ…………パパーッ! ママーッ!」
と、叫び、泣き崩れた。
涙が枯れるまで泣き続けた少女。
その無垢な瞳はやがて、燃え盛る炎よりも真っ赤に染まり、果てしない憎悪と怒りを宿す復讐鬼の目へと変わっていくのだった…………
平成18年1月13日。3学期に入って4日経ったこの日の昼休み。冬休みの間に玄田建設とペガサスに自宅を建ててもらい、親の研究も継いだ未来は、翔馬に呼び出されて保健室前に来ていた。
「翔馬君。お持たせ。それで話って?」
「あぁ。ほら、あの一件とか冬休みとかで会う機会がなかったから、まだ蠍って子のこと聞いてねぇなって思って。どんな奴なんだ?」
そう聞かれて未来は、暗闇だったせいで顔までは覚えていなかったが、背丈や声などから同い年ぐらいということや、闇の中でもはっきり見えるほど真っ赤な目をしていたことなど、覚えてる範囲のことを語った。
それを聞いた翔馬は合点がいったらしく、質問の真意を述べた。
実は忍の父親の部下が、先日、ブラック・ナイトの新たな本部を見つけようと影を尾行していたのだが、案の定捕まり、拷問の末、殺されたそうだ。
その間際に、特捜5課おなじみの超小型カメラで撮った現司令の姿とこっそり打ったメールを手がかりとして残していたらしく、そこから司令がコードネームを改名したことと、例の目・デビルアイをしていたことが判明した。
「……残念ながら他に手がかりは無いし、画像がぼやけてて顔もわかっていない。ただ、俺が同じ立場なら、間違いなく、死獣神や龍の弱味を握るために、学校に通って情報収集するな」
「でも、そんな目の人、1人も……」
「デビルアイは人の場合、龍の紋章と一緒で精神高揚することによって発動するんだ。ペガサスのエンジェルアイもそうなんだけど。だから、普段は他の奴と全く同じなんだ」
デビルアイと蠍のことを聞かされた未来は理解し、龍にこのことを伝えに彼のクラスへと向かった。
その胸中に、同級生を疑わなければならないのかという複雑な感情が抱きながら……
ここからの一連の話で、いよいよ長崎の黒い闇こと蠍の正体が明らかとなります。
ご期待下さい。




