リスタート(3)
闇に暗躍し、ターゲットの命を奪い取る裏稼業・殺し屋。
これは、その中でも最強と謳われた1人の殺し屋と仲間達の転機の物語。
死力を尽くして戦う2人の男。
1人は失った6年を取り戻すため、日常を守るために刃を振るい、もう1人は6年前に仲間の命を奪った宿敵を討つために、十手を振るった。
譲れないものを賭けて戦う両者は、激しい金属音を立てて奮闘した後、間合いをとり、呼吸を整えた。
「はぁ、はぁ、はぁ……」
「はぁ、はぁ、はぁ……しつけぇな、ボウズ。そんなにあの嬢ちゃんが大事か?」
「当然です。未来さんは僕にとってかけがえのない人ですから」
「それは、俺らの屍を越えてでも守りてぇもんなのか?」
黒柴の問いに、青龍は少し迷ったが頷いた。
「はい。本当なら、あなた達と戦わずに済む方法があれば一番いいんですけど、それはそっちが望みませんよね?」
「あぁ。特にうちのガキ共はな」
「だったら、踏み越えていきます。未来さん達の命を狙うあなた達の屍を」
青龍の心を知った黒柴は高らかに笑い、
「その覚悟、気に入ったぜ。なら俺も、敵であるお前に敬意を表して……」
と、言って、足音を立てない独特のステップをその場でやり始めた。
「大技で殺してやる。俺の持てる最強の技で、な」
「……いいでしょう。だったら僕は殺し屋らしく……」
青龍はそう言うと、ドラコスラッシャーで足元を叩いた。
「あなたを容赦なく殺します。過去を乗り越えた僕の悪夢の力で」
「悪夢だ? 見せれるもんなら見せてみやがれ!」
そう言って黒柴は独特のステップを保ったまま青龍に接近し、青龍は意識を集中した。
「闇夜流十手術最終奥義……」
「いきます……」
「無月!」
「アビス……キリーングッ!」
2人はそう言うと、呼吸を読み切る一撃と6年前に黒龍らを塵も残さず消し去った暴走技を、眼前の敵に浴びせた。
必殺技での決着。それを制したのは青龍だった。
躊躇なく腕や足、胴体までもが微塵切りにされ、己の死と敗北を悟った黒柴は、
(畜生。ここまでか……すまねぇな、お嬢…………力になれなくて………………)
と、心の中で蠍に詫びて、無に帰していった。
主のために戦い、本気で自分とぶつかってきた彼を葬った青龍は、未来と共に黒柴の死を悼んだ。
「龍君、あの人……」
「うん。悪い人ではなかった。あんな人がブラック・ナイトにいたんだね」
「だから、あんなことを?」
未来にそう聞かれて青龍は頷いた。
道さえ誤らなければ、ブラック・ナイトは人の為に尽くす組織。ならば、彼らと和解できる日がいつか来るかもしれない。
そう彼は思っていたが、黒龍らに両親を奪われた未来は、水に流せるほど寛大ではなかった。
黒柴がやろうとした技・無月は、独特のステップから敵の背後に静かに降り立ち、通り過ぎると同時に呼吸を読み切った渾身の一突きで、急所を貫く絶対防御不能の暗殺技です。
これをかわすには予知してよけるか、青龍のアビスキリングのような超高速の技で先制するしかありません。




