朱雀と人形(2)
闇に暗躍し、ターゲットの命を奪い取る裏稼業・殺し屋。
これは、その中でも最強と謳われた1人の殺し屋と仲間達の転機の物語。
午後4時。チェックインを済ませた龍達は、部屋に荷物を置き、宿周辺を散策した。
ゆったりと流れる時の中で登別を満喫し、あとは宿に戻って温泉に浸かるだけ。
そう思いながら宿に帰る道を仲良く歩いていると、雲雀はある物を見つけ、足を止めた。
そこにあったのは、何年も前に焼けたであろう松の木の燃えカスだった。
「この木、まだ残ってたんや……」
「この木って……赤羽さん、この近くに住んでたの?」
「住んでたってわけやないんやけど、うち、昔、サーカスの団員でな。日本中転々としながらあのトンファーを使った曲芸やっててん。そん時の会場がここにあったんや」
雲雀がサーカスに所属していたことを知り、龍はそこで彼女の運動神経が磨かれたと納得し、澪はどうせピエロだろうと小バカにして、自ら喧嘩の火種をつけにいく。
と、そこに、左目を前髪で隠した中性的な男性が話しかけてきた。
「あれ? もしかして、雲雀? 久し振りだね。9年振りぐらいかな?」
「え……? 人兄ぃ!」
雲雀はそう言い、思ってもみない再会に驚いた。
彼の名は経堂人志。雲雀のサーカス団時代の先輩であり、雲雀にトンファーとニードルの扱い方を教えた師匠でもある。
彼は9年前のある一件から殺し屋をしており、『狂乱の人形』と名乗って活動している。
その名は業界では有名であり、人志のせいで多くの殺し屋が巻き込まれたり、殺されたりして命を落としたことから、『殺し屋殺し』という異名がついている。
「ふーん。あれやっぱ人兄ぃやってんや。あれからなーんも進歩してへんな」
「そっちこそ、相変わらずディープキスしているんだろ? DNAを調べられて逮捕されても知らないよ」
「そんなヘマせぇへんわ。人兄ぃこそ逆恨みされへんようほどほどにしときや」
久し振りに顔を合わせたというのに、2人はお互いに憎まれ口を叩き合う。
「ははは。雲雀の口の悪さはちっとも変わらないね。安心したよ。それじゃ、僕はこの辺で」
雲雀の様子にほっとしたのか、人志はその場をあとにした。
雲雀の師匠で殺し屋殺し。龍と雲雀と澪が警戒するには、十分すぎる出会いとなった。
今回は朱雀メインの話です。そのキーパーソンはお察しかもしれませんが人志です。




