心の光 影の忠義(1)
闇に暗躍し、ターゲットの命を奪い取る裏稼業・殺し屋。
これは、その中でも最強と謳われた1人の殺し屋と仲間達の転機の物語。
青龍が飛び込んだ3階に到着したものの、そこに彼の姿は無く、すでに移動したあとだった。
幸いにも、人的被害が出ていないことに一安心した未来と死獣神メンバーは、手当たり次第に教室の中を見て回ろうとした。
と、その時、割れたガラスを踏む音がパリッと聞こえた。
青龍かもしれない。そう思い、音がした柔道場の方を向いたが、そこから出てきたのは青龍ではなく、モノクルを着けた外国人男性だった。
「やはり、彼を追いかけてここに来ましたか。ですが残念。青龍はたった今、そこの教室の窓から飛び下りたばかりですよ」
流暢な日本語で語る彼の言うことは合っていて、正門と本校舎の間にあるテニスコート兼中庭から、暴走する青龍にやられた影達の悲鳴が聞こえてきた。
「……の、ようですね。そう言うあなたも、見たところブラック・ナイトの一員のようですが」
「えぇ。申し遅れました。私はブラック・ナイトの参謀にして、現ナンバー2の黒蛇。以後お見知り置きを」
その名を聞いた朱雀達は、紳士的そうな彼が黒蛇ということに意外性を感じた。
そんな彼女らの様子には触れず、黒蛇は鞘に納められた剣の柄を握り、
「さて、月並みな言葉で申し訳ありませんが、彼を追いかけたければ私を倒してからにして下さい」
と、言いながら、紫色の刀身のレイピアを抜刀し、構えた。
「はっ。たかがレイピアで、うちら全員を止めれると思っとんのか!」
そう言って朱雀は黒蛇を斬ろうとしたが、彼が持ってるレイピア・ヒドラはとんでもない代物だった。
「ただのレイピアと同じだと思わないで下さい……蛇尾!」
黒蛇のその言葉と共に振られたレイピアは、見る見る内に刀身を何倍にも伸ばし、校舎を断ち切った。
何とかギリギリかわした朱雀達だったが、その常識はずれな構造に驚倒した。
「なんやそれぇっ!?」
「このヒドラは、我がブラック・ナイトが開発した液体金属製の毒入りレイピア。掠っただけで命を落とすことになります」
「な、なんつーインチキ……」
「動揺している場合ですか? 廊下という狭いフィールドで私と出会ったことを、後悔して下さい。覚悟、毒蛇斬ッ!」
そう言うと黒蛇は床を突き、地を這う蛇のように刀身を床にバウンドさせた。
彼の真正面にいた朱雀に直撃必至。そう思った仲間達や朱雀は死を覚悟した。
しかし、その危機はペガサスが身を挺して盾になったことで免れた。
「ペガサス!」
「ふふふ。さしもの天使ペガサスもここまでですか。いくら彼と言えども、毒をくらっては……」
黒蛇はペガサスが討ったと確信し、勝ち誇った。
初登場の黒蛇の武器・ヒドラ。
これがどのようにして作られ、どんな構造をしているのかはブラック・ナイトの機密で、一切が謎に包まれています。