表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/84

7話 『王都エント・シュラル』





あれから、1週間が経った。


国内での同時的な魔獣の襲撃は当然国内中で話題となり、様々な陰謀論が囁かれている。

まぁ、あれだけの惨事が起こったのだから無理もない。


政府としてはこれは許されざるテロ行為であるという声明を出してはいるが、未だに詳細は不明という立場を取っている。

当然ながら事の詳細で出ないことに対して、マスコミ等を中心に疑問視する声は多く出てきているが、政府はまだ確信が取れていないので断定もできないということで無理やり抑えこめているようだ。


また、高崎はその間に怪我の治療をしていた。

そのため例の件で負った体の怪我はほとんど完治し、今ではもうピンピンしている。



……そんな訳で。



「うわっ、あれが噂の魔力真空リニアって奴か。ほんとこの世界の乗り物はどれも馬鹿みたいな早さだ……」


「……え? この世界?」


「──あっ、いやこの国のなッ!!」



彼ら特任部隊のメンバーは、アルディス連邦王国の首都『エント・シュラル』に行くため、電車に乗っていた。


因みに彼らが乗っているのはいわゆる昔ながらの“電車”で、特にめっちゃ早いとかいうことはない。

.....だがそんな電車から見える、半透明な筒を通る『魔力真空リニア』に高崎は思わず感嘆の声を漏らしていた。


『魔力真空リニア』と呼ばれるこの世界における最新技術が生み出した列車は、速い。とにかく速い。

電磁力と魔力をエネルギーにして駆動するリニアを、真空の筒を通すことで摩擦や空気抵抗の問題を失くし、なんと最大では地球で言う2000km/hは超える速さになるという。


勿論それだけの速度を生み出し、かつ長距離の真空を維持するにはとてつもなく莫大なエネルギーが必要となる。

そのため近年までその実現は難しいとされていた.....のだが、魔力が動力として活用できるようになったことで不可能は可能となった。魔力真空リニアは、そんな“新エネルギー革命”における発明である。

当然それだけの速度Gとか抵抗とかがヤバイので、加速減速にはかなりの時間をかけていたり、カーブを極限まで排除したり、魔力や最新の科学をたっぷり使ってわずかに浮かせちゃったりして、そのスピード下での安全性を手に入れているのだ。

  

──まぁそんなことは置いといて、だ。

何故今電車に乗っているかといえば、仕事で政府の人間と接触するからである。……ほんとに何故なんだろうか。

多分先週ロダン少佐に話したあの事が関連しているのだろうが、本当にそうなのかもわからない。昨日、突然行ってこいと彼に少尉から連絡が来ただけである。


ちなみに今回のメンバーは4人。

高崎、エレナ、ルヴァン、テラだ。



「結局何で呼ばれたんだろうな?」


「やっぱり、秘密を知った者は消される……的なことじゃない? だとしたらこっちも黙ってられないわね!!!」


「んな訳あるか! ……って言いたいけどありえなくもないのが怖いわ。てかエレナ、お前流石今日こそやらかすなよ?」


高崎がジト目でエレナを見つめて諫めておく。

政府の人怒らせたら何があるかたまったもんじゃない。


「いやお前人のこと言えるか? なんか常識ねぇし」

「うっ……」


ルヴァンに痛いところを突かれ、高崎が思わず狼狽る。彼もこの国の常識にはまだまだ疎かったりするのだ。



そんなこんなで談笑を続けていると、後ろに座っていたテラも会話に参加してきた。


「それなら、何かしらの公にできない闇の任務を押し付けられるとかが一番ありそうじゃないですか? ほら、特任部隊って汚れ役的な面もありますし」


「闇の任務とか響きはちょっとカッコよく聞こえるけど、やる当事者になるのは最悪だな。失敗したら敵に殺されるか味方に消されるかの未来しか見えねぇぞ」


高崎が呆れたように呟く。

正直、この国の連中はそんなこともやりかねないくらいな倫理観を持っているのではないかと思わなくもないが、流石にそこまでではない……と信じたい。


──まぁどの道、良いことがあるとは思えないのであった。




「まぁ行けば分かるだろ。今はゆっくりしてようぜ」


「……ああ、確かにそうだなぁ」


高崎が小さく欠伸をしつつ、体を少し伸ばしながら、そんなルヴァンの意見に賛同する。これが近未来世界の力なのか、この電車はかなり揺れも少なく騒音も小さい。寝るのにも快適な空間である。


……と言ってももうすぐ着くのだが。

王都とデルカットはそれほど遠くはないのだ。




「──おっ見えてきた! あれが“エント・シュラル”か!?」


そんな下らないことを考えていると、まだ到着するのには多少時間は掛かるが、街並みが徐々に見えてきたのが分かった。勿論、王都からは外れた今の場所も王都に近いためにそこそこ栄えており、一軒家と団地の立ち並ぶ住宅街なのだが、それでも王都ははっきりと見ることができた


……なぜならバカみたいに高いから。建物が。

しかし、街という感覚がしない。遠いのになんだか建物が大きく見えている。最早その光景は、空に向かって伸びる棒が立ち並んでいるような感じといってもよかった。


彼の知りうる情報によれば、そのような異常なくらいに高い建物が立ち並んでいるのは、王都の中心部の金融街周辺にあるらしく、つまりそれはまだまだここから遠いことを示している、のにだ。



「やっぱ王都ってのは違うなぁ。未来の世界って感じだわー」


高崎がそんな感想を呟きながら感嘆していると、ルヴァンが対照的に冷めた顔をして口を開く。


「──ま、確かに中心部のビル群は建築学的にも目を見張るモノがあるけどな。結局あんなのただの見せモンだぞ?」


「ん、どういうことだ?」


急に投げかけられた言葉に、窓からルヴァンへと視線を移しながら高崎が聞き返す。すると、彼は呆れたように軽く分かって再び口を開いた。



「簡単な話だ。世界最先端の技術国と名高いアルディス王国たるもの、それを世界中に見せつける必要がある訳だ。国家の威信の為にもな。そんで特に国家の首都中心部なんかは、国の発展度を見せつけるためには最適だろ?」


そんな訳で、あんな無理矢理と言ってもいいくらいに派手なモノをおっ立ててるんだろ。とルヴァンが付け加える。


随分と捻くれた考え方だったが、けっこう納得出来ないような論理でもないため、高崎は「そういうもんか」と頭の中で納得した。確かにあれだけの建築物は、ただ利便性等を追求した上での成果の産物だとは思い難い。



「それに考えてみろ。あれだけの高層建築物が乱立してたら、その下はどうなる思う? 昼でも街灯がなきゃ夜みたいに暗ぇわ、裏通りも死角だらけだの……最悪な訳だ」


「なるほど、確かにそうか……」


納得したことを見せつけんばかりに高崎が頷く。

確かにあれだけの密集は、日照・治安・いつか取り壊す際など、様々な問題を孕まさざるを得ないだろう。

ルヴァンの話によれば、監視カメラの数が領土の広さに反して世界一である...という調査もあるこの国の中でも、あの地帯には異常なくらいにカメラが設置されているのだという。




──その後もそんなことをルヴァンと話していると、寝ていた訳ではないのだろうが、先程から目をつぶって黙りこくっていたエレナが再びその目を開いて話し出した。


「──久しぶりだなぁ。『エント・シュラル』」


「……ん? ……あぁ!! そういえば一応お前貴族だったな。なんか忘れがちだけども」


高崎が暫しの無言の後、思い出したように手を叩いた。そういえば忘れがちだが、エレナは名門貴族サマである。

まぁ実質追い出された身なのだが。


「一応って何よ。あー懐かしいなぁ。いろんな楽しい思い出がどんどん浮かんでくるわね!」


「思い出ねぇ。どんなのがあるんだ?」


彼が目を細めてエレナに問いかけた。このトラブルメーカーのことだから、大方ロクでもない思い出なのだろうと。



すると、聞かれるの待ってましたと言わんばかりにエレナは力強く振り向くと笑顔で話し出す。


「そうね、例えば、あの一番高い建物で幼馴染の貴族の子と一緒に魔術の練習してたりしてたの。毎回失敗しちゃってたけどね。……あの子今何してるのかなぁ」


「あぁ……なるほどね。俺の同志か……」


高崎がそんな犠牲者を想いつつ、心の中で敬礼をした。

気の毒に。どうせいつも巻き添え食らってたんだろうなぁ。しかも相手は超名門貴族サマだから文句言えなさそうだし。



なんて話している内に、本当にもう街に着くようだ。

遠くの景色だけでなく、周辺の景色もだんだんとより都市らしく変化していくのが分かった。


まずその印象としては、先程も言及したように中心部である奥の場所の建物が高い。何度も言うが非常に高い。

100階建てなんてとても比じゃないだろう。

ブルジュ・ハリファが何個もあるようなイメージである。


そして、綺麗だ。

細かく整備されている。建物の劣化もあまり見当たらない。

道も中心部は放射状に、郊外部は条坊作り的な感じで敷かれていて、ちゃんと自然公園などもあるのに、犯罪の温床となりそうな場所なんかどこにもなさそうである。


以前見た情報によると、ここらは近代化に伴う人口増に際して作られた新しい都市らしい。その為、新しい世界の流れに対応した、緻密で計画的な都市になってる…という訳だ。

中心部はとても高い建物の立ち並ぶ金融街やオフィス街で、その周りを目的別に居住地区や様々な施設が立ち並ぶなど、しっかりと区画された都市となっているのである。



そして、その中でも1番目立つものは、圧倒的に高い1つの建物だ。その先はもはや視認することはできない。


あれはこの国この街の名物。

いわゆる『宇宙エレベーター』と言うヤツだ。

宇宙開発競争も激しいご時世だが、民間向けに公開されているのはこのアルディス王国の宇宙エレベーターのみである。


その他にも、多くの施設で溢れているようだ。

図書館や広場、学校や商店街なんかも確認できた。そしてそのどれもが、活気があふれているのが軽く見ただけで高崎にも伝わってくる。


紀元200年代からおおよそ2300年以上続く伝統ある輝かしい王国の首都は、これまでの何度かの遷都と長い長い年月を経て、とてつもない未来都市へと変貌したのだ。



「すげぇなぁ、さすが現首都って感じだ」


高崎が見とれていると、電車は遂に王都の領域へと入った。

すると景色は一転。王都郊外ギリギリに位置するそこそこ栄えている電気街から一転し、見渡す限りの一軒家の地帯となった。最新式の建築から1000年クラスの歴史を感じさせるような伝統的な家屋までもが並んでいる。


「……なんだ、ココ?」


「普通に居住地よ? この街は経済的な役割を持つ地区だとか、古くからある居住地区だとかで区分けされているの。....まぁここに住めるのは、昔から影響力を持つ本当の大金持ちとかだけだけどね」



まぁそりゃそうだろうな。ってそうじゃなくて。


「いや土地は足りてるのか? こんなに一軒家に使ってさ」

「当然足りてないな」


ルヴァンが入ってきた。説明したがりの血が騒いだのか?


「土地は足りてないが問題にはならない。何故か。……他の方法があるからだ。地下とか、異空間とかそう言うところで補ってる訳だな」


「なるほど地下や異空間なぁ。……異空間? ……は?」


高崎が思わず納得しかけたが、ルヴァンの言葉を復唱してきる内に、その言葉に強い引っかかりを覚えた。

異空間。そんな言葉、アニメやゲームの世界でしか聞いたことないのだが……。



「魔術によって作られた人口の空間のことよ。王族みたいな重要な人物の本拠地や国会のような重要な機関、あと牢獄とかスポーツ場はそこに作ってあるの。……だから、そう。例えばあそこに見えるお城は昔の時代の遺産を残してるだけで、今はあの中に住んでる人はいないって訳ね」


はえ〜、魔力便利っすね。東京とかにも欲しいなそれ。


ぽかーんとした表情になっていた高崎に対してのエレナのご高説に対して、そんなしょうもない感想を抱く、他世界出身、高崎佑也18歳なのだった。




ぴんぽーん。

そんなこんなで話をしている内に、チャイムと共にアナウンスが流れ始めた。


「あっ、もうすぐ目的地に着くみたいですね」


「……お前ら、本当に失礼の無いようにしろよ?」



そして、とうとう電車はついに目的地の駅に着いたらしい。

王都なだけあって一度に大量の人が乗り降りする中、彼らは押して押されるように電車から降りた。


ホームも案の定人だらけなので、人混みで気分が悪くなる前に出来る限りさっさと移動し改札口を出ると、なんかすげぇ強そうな人たちに囲まれたお兄さんがお出迎えしてくれていた。SP付きとはなかなかである。


彼らと挨拶と軽い話をした後、高崎達はお付きの人が使った『サバディラード(空間転移)』とやらで彼らは部屋に連れてこられた。


……これが異空間とかいうヤツなのだろうか?





──そして。


彼らのテレポートによて飛ばされた先は、それはそれは豪華な部屋だった。絨毯・壁紙・カーテン・家具など。どこを見ても完璧と言っても良い美しさを持っており、あまりの絢爛さに圧倒される。

……いや、なんかここに合わない人物が目の前に居やがる。



「──君たちが『特別任務遂行部隊』のメンバーかね?」


すげぇおっさんが前に佇んでいた。

どういった凄さかというと、その服装がすごい。


……なんか女装している。しかも可愛らしいドレスだ。

そう、10才くらいの女の子が着ていたら似合うレベルの。




「へ……へ、変態だああああああああああああああああああああああああああッッッ!!!!??」


「ちょッ!? おい何言ってんだお前!! 相手は我が国の宰相閣下だぞッ!!?」


「──え、さいしょう???」



目の前の信じがたい光景に驚きの声を挙げていると、ルヴァンが慌てたように彼の隣でそんなことを叫んだ。

高崎は、そんなルヴァンの唱えた謎の文字列を反芻する。


さいしょう?

……最小……最勝……宰相…………宰相!!?



「えええええええええええええええええええええええええええ!!?? この人がああッッ!!!??」


「宰相をこの人呼ばわりとかアンタは馬鹿なの!? すみません彼本当に常識なくて! すみませんっ!!」



エレナはそんなアホを引っ叩きつつ、宰相に対して頭を丁寧に下げる。彼女も流石に腐っても貴族サマらしい。


そんな彼女を横目に、高崎はエレナに常識無いって言われてしまったことに落ち込みながらも、徐々に状況を冷静に取ら得られるようになってきたらしい。



(……冷静に考えたらヤバイこと口走ったな俺!?)


時間にして1秒以下の熟考の後、そんな結論に至った。

いくら女装趣味のオッさんだとしても、ガチのマジであれは泣く子も黙る宰相サマらしいのだ。


そんな訳で、彼はそんな自身のヤバい失態を取り返す為にも全力で謝り倒すモードへと移行する。

彼が考え抜いた、今の場をうまく切り抜ける言葉とは……。




「……………あ、すみません、取り乱してしまいました」


どうやら思っていた以上に自分は動揺していたのだろう、と彼は後に悟ることとなる。

自分でもよく分からない謝罪になってしまったのだった。

取り乱したって何だよ。大丈夫?処刑とかされないよね?



「……まぁ構わないさ。そんな感じのことは議員にも国民にも大使にもよく言われるからな。気にしてはいない」


やっぱ言われてるのかよ!!? 寛容な心を持っていることに関してはとってもありがたい限りなんですが、少しは気にした方がいいんじゃないですかね!?



そんなツッコミを心の中に、高崎は再び彼の服装を見直す。

うん、どう見てもただの変態だった。しかし顔に関しては、よく見てみれば、テレビなどで見覚えのなくもないソレであることがようやく判明する。


つまり、それは我が国の宰相であった。ニュース等で見る姿は流石に公的な場であるからなのか、流石にこんな姿ではなかった筈である。流石に場所は弁えるタイプであるようだ。

……それにしても国の中核を担う者が女装癖だとは、アルディス連邦王国も自由な国家なようで安心である。



──ちなみに、この男の名はロデナ宰相。

32歳にして宰相へ推薦されるほどの人望と才能を併せ持っている超エリートなようだ。

……人は外見で判断してはいけないことを高崎は学んだ。


因みに、宰相とはこの国における為政者である。


勿論、この国『アルディス連邦王国』には王はいるのだが、その体制としては立憲君主制であり、実質的には民主主義が基本となっている。


宰相を推薦する権利は王にあるが、その最終的な是非が問われるのは議会な為、基本的には王は議会で承認されるであろう候補者を推薦する。その為、結局は国会……つまり衆議院での議席が1番多い政党によって政治が行われる。

つまりロデナは宰相であると同時に、現在の与党『アルディス国民党』のトップなのだ。


まぁ要するに、実質的な議院内閣制的なのものであると言ってもいいだろう。




「……ん? そこの貴方、どこかで会ったことがあるかね?」


宰相がエレナの方を向いて首を傾げた。

そうか、エレナもこの国一番とも言われる貴族の出だ。

どこかで昔あったことでもあるのかもしれない。


「私はエレナ=カスティリアです。確かに私が5歳の頃にパーティであったことがあるかもしれませんね」


エレナが笑顔で答える。どうやら本当にあったようだ。

……すると、宰相の様子が突然変わった。



「やっぱりそうか本当は分かってたよ懐かしいなぁ成長したねぇあの時はあんなに小さかったのにもう大きくなってかわいくそして美しくなったじゃないかぁぐへへおっと思わずヨダレが別に興奮してるとかじゃないんだただおじさんうれしくてぐへへへ……ちょっと髪触ってもいいかな??」


「やっぱ変態じゃねぇか!!!! 宰相がこれでいいのか本当にこの国はッッッ!!!?」









────────────────────────────

────────────────────

─────────








「……で結局話って何なんですか」


エレナが聞く。

めっちゃ睨んでいる。ド変態宰相さんに怒っているらしい。


まぁ当然なんだが。今のご時世、セクハラは流石にアウトである。なんなら、本気で訴えられても文句は言えないのではないだろうか。



「……い、いやぁあはは、さっきのはちょっとした場を和ませる冗談のつもりだったんだけ「話は何なの」すみません本当に私が悪かったですどうかお許しくださいお願いします」


宰相さんが最早土下座でもしそうなくらい小さくなって謝っていた。その様子は、もはや世界に冠たる世界三大国の一国の宰相のソレでは到底なかった。


やだ怖い! エレナって怒るとあんなに怖かったのかよ!?

……と、心の中で絶対彼女は本気で怒らせないようにしようと誓う高崎なのだった。



てか思いっきしタメ口なのだが……。そういえば何度も言うが、エレナは『王の右腕(デルナ・ヘヴィス)』とも呼ばれる名門貴族の娘である。


今でこそ貴族自体に特権はないが、色々な場所への繋がりとか財力とかで、結局間接的に権力を持っているのが現状。

宰相とはいえ平民上がりの人間には、あまり強く出れる相手ではないというのだろうか。


民主主義、自由平等バンザーイ……。




「コ、コホン。話というのも他ではない。例の魔物の件だ」


「やはり、そうでしたか」


ルヴァンが答えた。

そういえば彼ら兄弟はずっと静かであった。

コイツら、根は真面目なのだ。


「そうだ。そして今回の事件に関する依頼がある」


完全に真面目モードに立ち直ったロデナは、真剣な感じで高崎達の目を見据えてそんな言葉を投げかけた(いや、服装は相変わらず不真面目なのだが)。

やっぱそうなるよなぁ……。高崎は心の中でため息をつく。

出来れば、めんどくさいのはやめてほしいんだが。



「その前に、今回の事件の『黒幕』は誰だったんですか?」


テラが聞いた。確かにそのことに関しては高崎としても強く気になっていたところである。本当にあの件はウラディルの陰謀だったのか?



すると、彼はその質問を待ってたと言わんばかりに微笑む。



「勿論その話もするつもりだ。ではまずそちらからいこうか」











【ぷち用語紹介】

・魔力真空リニア

この世界の最先端の電車。電力磁力と、魔力をエネルギーにして駆動するリニアを、真空の空間を通すことで摩擦や空気抵抗の問題を失くすことで、最高速度2000km/hを超える速さを実現したとんでもない乗り物。


・異空間

魔力の「世界を歪める力」を利用して作られた人口の空間。

普段は観測できない場所に存在しており、空間転移魔術によって行き来を行う。

その中は人が快適に過ごせるように作られており、災害もな安全なため、高級・重大な施設も多くはここに作られている。


・貴族

アルディス連邦王国に存在する階級。

古くは王に直接仕える存在であったこともあり、現在でも国王の補佐や城の管理をする官僚や、議会の議員を務めている者が多い。

『王の右腕』カスティリア家のような、古くから貴族として存在する一族のみが占める階級で、現在は新しくなれることはない。また、当然と言うべきなのか、現代においては別に貴族だからといって特別な待遇や特権はほぼない。

……あくまで、「ほぼ」ない。ではあるが。


・宰相

アルディス連邦王国における役職。

国際的には、実質的な国家代表として扱われる存在で、いわゆる内閣のトップとしても存在する、言わば「首相」。

しかしあくまで国家元首は王であるため、宰相は国会内の1個人とされている。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ