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8話後編『魔術博覧会④』





7月20日、午後6時。

太陽は沈みつつあり、空は綺麗なオレンジ色に染まっていた。

ぼちぼち街灯もつきはじめ、夜の訪れを感じさせる。


そんな中現在、教育特区は大騒ぎとなっていた。

世界中から集められた珍しい魔術遺産の品々。それを一目見ようと押し寄せた数十数百万の人々が、それぞれひどく困惑していたり、文句を言っていたりしているのだ。



──というのも、先程から流れている館内放送のせいだろう。







────────────────────────────





『本日は魔術祭典のため、教育特区にご来場いただき、誠にありがとうございます。

──さて、明日より開館を予定していた『ノストの大球』の展示ですが、諸事情により延期とさせて頂くことになりました。

まことに勝手ながら、ご理解をいただきますようよろしくお願いします。


──また、これも諸事情により特区15地区で起きたハプニングのため、当地区全体を一時的に閉鎖させて頂いております。

周辺にいらっしゃるお客様は、警備員の指示に従って地区から離れるようよろしくお願いします。

……また、それに伴なって、本日の終了時刻については予定より3時間ほど早めることになりましたので──』





────────────────────────────






──そんな、突然の通告である。

そう言う訳で、「一体何があったんだ!」「まだ見回りきれてなかったのにどうしてくれるんだ」……と大騒ぎという訳だ。


まぁ当然だろう。急な閉鎖時刻の変更等など、場合によっては賠償金問題にもなりかねない。



そして、その問題の15地区。

すなわち教育特区の中心部に、1人の少女の姿があった。

茶色のショートの、“ここらに住む人々には”見慣れぬ服装だ。


そう、彼女は稲星彩奈であった。



「──もう! 何が起きてるの!? 佑也の様子でも見にこようと思ったらこの騒ぎ!!どうすればいいの!?」


彼女は現在、魔術博覧会の混乱の真っ只中にいた。

昔ながらの幼馴染であり、今では彼女にとっての唯一の心のつながりを持っている高崎が最近はここで任務をしていると聞いて、興味本位で来てみればこれだった。



「──それにしても15学区には何があったんですか? ……聞いた感じ大分目玉でもあったらしいですけど!」


「うん、『ノストの大球』のことね。私も噂にしか聞いてないんだけど、でっかーい特殊金属でできた球体みたい」


「へぇー、皆、そんなのが見たいんですかねぇ」


「まぁ、レアだって聞いたら見たくなるんじゃない?」



ふと横から、そんな2人の女の子の会話が聞こえてきた。

なんとなく目を向けてみると、向こうへと歩いていく金髪とピンク髪の後ろ姿だけが見ることが出来た。……「ノストの大球」、館内放送でも話題に出ていたものだったっけ。


そんなことを思い返しつつ、彼女は再び歩みを進めていく。西にあと10分も歩けば、もう外に出ることができるだろう。

この特区は円や四角といった綺麗な区切りにはなっていない為、外との境界は意外と曖昧なのだ。


しかし進めば進むほど、人混みはひどくなっている。監視用の簡易高台の上から、警備員が慌ただしく叫んでいた。

だがこの混乱では指示はいき届きそうもない。




彩奈は心の中で物思う。


果たして、何故そんな混乱を招くようなマネをしたのか。

もし、何かしらのトラブルがあったとして、急に全員を退去さねなければならない程の理由とは何なのか?


──そして、何よりも気になるのは。



「……佑也、今ごろ何してるんだろう?」



頭に浮かぶは、2年ぶりに再会したあの男。

いわゆる幼馴染で、そして私がずっーと……。


──そんな彼は、現在お仕事中らしい。

以前の彼といえば、部屋で寝っ転がってゲームしながら一生働きたくない、部活もめんどいとグチグチ言ってたぐうたらだったのだが、この2年でだいぶ変わったようだ。




それは良いことではあるのかもしれないが、それのせいで最近あんまり彼には会えていないのが現状である。


……なんだか、遠い場所に行ってしまったような気分だ。

いや、実際遠い場所に行ってた訳なのだけれど。




──そんな風に、思う彩奈なのだった。









────────────────────────────









(──よし、ようやくたどり着いたか)


狭く長い通路を通り抜け、遂に広い間に出ることに成功した高崎が心の中で安堵するように呟いた。


教育特区中央会議室。

今回の騒動において、“カギ”となる。


……いや、むしろ中心と言っても過言ではない場所だ。




──なぜなら。



(あれが『ノストの大球』、か。本当にもつ運び込まれてたのか。にしてもこりゃまた立派な遺産なことで)


高崎が見上げるようにして、その異様さに圧巻される。

大きさは実にメートルにして5m程か。それほどの大きな球体が、仰仰しく光沢に光る台座の上に置かれている。

どうやら既に搬入は終えられていたようだ。時間は一刻を争っている。


そう思いながら、彼はこの大球を眺めた。

現在のマナスダ合衆国中部ノスト州の人々。ここではノスト人と表現するが、そんな彼らが代々受け継いできた魔術遺産だ。


領土の大半は砂漠なのだが、金を中心に鉱山資源が豊富であり、昔から強力な王権が根付いていた地域だ。

最新の研究でも、昔は土着宗教の儀式に使われてただの、単なる王家の威信の見せつけだの、色んな説に分かれている。

その中に秘められた膨大な魔力は、歴代の豪傑達が触れてきた証ともされており、目を瞑り触れば魔術の腕が良くなるという伝説もある。


そんなモノが、今回2000万人を殺す兵器の役割を果たすというのだが、何が起きるのか分からないというものである。




(──ま、そんなことは今の俺にゃ関係ない。さっさと“やること”やって、引き上げちまおう)


そんなことを思いながら、彼がそれに手を触れた瞬間だった。


──ザッ!!!!


突如背後から“何が”音が起きた。

それは、まるで人が駆け出す時の足音のような──。


「ッ!!?」


高崎は咄嗟に横に転がるようにして回避行動をとる。

ここは今閉鎖されている。だから一般客なんている筈もない。


台座周辺の段差から飛び降りた彼は、思ってたより大きな段差だったこともあり、胸を叩きつけられながら背後を確認した。



───あぁ。やはり、そうだ。


彼の目の前には、身長を軽く超えるほどの長さの槍を持った1人の女が立っていた。

また、槍は彼がいた場所に美しい程に突き刺さっていた。

きっと少しでも反応が遅れていれば今頃オダブツだったのだろう。彼の額に汗が流れる。


高崎は腰につけた拳銃に手をかけながら奴に話しかける。

先手攻撃を思い切り放たれてる時点で、もう透明化に期待することはやめといた方がいいだろう。



「おいおい突然な挨拶だな、人様には後ろから斬りかかるなってお母さんに教えてもらわなかったのか?」


「………………」


虚勢を張るようにして軽口を叩いてみたものの、その女は何も返してこなかった。突き刺さった槍を抜くのみである。

呆れられてるのか、それとも──。



高崎はいつ再び仕掛けてくるのかを警戒し睨みつけながら、その女を観察してみることにした。


(……エルディノ=ローシア、か)


高崎が“例の力”を使用して名前を読み取る。

名前的特徴から察するに、アルディス系ではないだろう。


年齢はおおよそ20代後半、いや30はありそうか?

服装に関しては、あまり見慣れないスタイルである。

私服ではなく、どっかの部隊の制服とかなのだろうか。

そして、今までの情報から察するに……。




「アンタが、マナスダ合衆国から派遣されてきた奴か。……こりゃまた大変な任務ご苦労さん」


「………………」


またも無言。どうやらまともに対話するつもりはないらしい。


──いや、というか。だ。


彼は再び目の前の女を睨みつけるように見た。

その服装や年齢ではない、“表情“だ。


“まったくの無”。笑わないとかそういうレベルではない。最早表情筋の消失を疑わざるを得ない程である。まるで3Dモデルの初期状態を見せつけられいる気分だ。



そして、その刹那だった。


「……………ッ!!!」


奴が動き出した。

その槍をして突き刺さんと一瞬で距離を詰めてくる。



「──おおッ!!?」


その時を待ち構えてたとはいえ、余りのスピードに反応が遅れる。どうしようもなく、転ぶようにして伏せた。

……いや、そうするしかなかった。


ただし、幸運というべきか。

鋭利な槍は、彼のその髪の毛を掠るようにして通り過ぎた。

突き刺すという直線行動だからこそ何とかなったのだろう。



「クソったれがッッッ!!」


流石に高崎も一瞬死を覚悟した。

あまりの恐怖と近づく死の感覚に、身がすくみそうだ。

──だが、逆にそのお陰でもう吹っ切れた。


奴は紛うことなき敵である。話し合いも通用しない。

だから、用意していたA2561のトリガーを迷いなく引く。


それは、先程運良く通り過ぎるようにして入れ替わった女の背後へと突き進む軌道にあった。

高崎はその後ろ姿を見た。この距離、この角度。──まず、避けれる筈はあるまい。




──しかし。



「…………は?」


射撃音が響き終える中、高崎は茫然とすることとなった。……いや、するしかなかった。


突如として、奴がその視界から消えたのだ。

避けたとかそういう次元の話ではない。“消失”したのだ。


(ど、どうなってやがる……!?)


高崎が目を見開きながらその元いた場所を凝視する。

決して透明化ではないだろう。そもそも奴は特にそういった詠唱をしていなかったのだ。


ならば、どう言う理屈だ? 突然と姿を消すなんて、いくら魔術といえどそんな便利なモノでは──。


待て、前にもこういうことがなかったか……!?


そうだ、あのカーチェイスのとき!

つまり、コレは本当にテレポーt──────。



「ってことはッッ!!?」


高崎が後ろを振り返る。

するとそこには、案の定槍を構えて突撃する奴の姿があった。

その距離は、もう目前である。



「──がああああああ!!!!?」


今度は全てを避けきれなかった。

脇腹を掠るようにして先端が突き抜ける。


傷は決して深くはない。……が浅くもない。その傷口からなかなかの量の血が流れる。


「……………ッ!!!」


しかし、攻撃はそれだけでは止まらない。

奴は変わらず無表情のまま、槍を振い続ける。

その速度は1つ1つが凄まじく、振るわれる度に鋭く風を切る音が静かな室内に響いていた。


しかしそれでいて、彼が銃を撃つと再び姿を消す。

その度に、高崎はギリギリの行動を余儀なくすることとなる。


当然だ、背後を取られることほど危ないことはない。

今はまだなんとか出来ているが、もし奴がもう少しでも通常の攻撃方法に長けていれば今頃串刺しだったに違いない。




「………あぁ、クソッ!!このままじゃ埒が明かねぇ!!」


そう叫びながら彼は2発連続して銃を放つ。それは再び外れたが、当てることが目的ではない。

彼は奴が回避行動をとったのを見ると、迷わず壁付近に転がるようにして移動した。繰り返しになるが、奴がテレポートを使うというのならば後ろを取られる事が何よりも危険なのだ。


しかし、だからといって攻撃が止むわけではない。

高崎は脇腹を抑えながら槍の攻撃を避け続けねばならない。


しかし、さっきから“どれも当たらない”のだ。



──ただし、それは相手も同じである。


確かに一度あの槍を脇腹に食らってはいるが、逆を言えば“最初の奇襲ですら”その程度で済んでいる、ということになる。

勿論、彼は別に戦いに関して特別優れている訳でもなく、むしろロクに魔術も使えないような人物である。


と、いうことは……。



確信した高崎は、その振るわれる槍を回避しつつ語りかける。

一応強力な身体強化魔術がかけられてるとは言え、“それ自体が”既にオカシイのだ。




「──お前、普通の攻撃は苦手なのか? だってそうだろ、じゃなきゃ今頃俺なんか串刺しだ。そのことが証明してる」



そう彼は言い放つ。我ながらなんともみっともない証明方法と思わなくもないのだが……だってそうだろう。

さっきから続く攻撃はとても洗練されているは言い難い。どうも槍の扱いに長けていないというか……。いや、そもそもの身体能力がないというべきか?


奴は相変わらず黙ったままだ。……しかし、突如手を止めた。

その行為はいったい何を意味するのか。高崎も同じく一旦足を止め、奴の目を見つめて様子を伺う。



「だが、お前はあまりその特殊な力も使わない。もし使いたい放題ってんなら、使いまくって翻弄すればいいのにだ。なのにやらねぇってことは──」


一旦溜めて、言い放つ。


「使うのに“なんかしらの制約”があるか、“多用できない理由”があるってとこなのか? ……例えば、一度の使用ですら消耗が激しすぎるとか」



それでも変わらず無表情。

そこからは別にの専門家でもない彼は何も読み取れない。

……しかし、それで今するべきことはハッキリとわかった。



「だったら」


高崎が不適に笑いながら懐に手を突っこんだ。


簡単な話だ。奴がいくら通常攻撃を苦手にしていたとしても、どう考えても今の状況では分が悪い。何ならテレポートがなかろうと、あの槍でブッ刺されかねない。


だから。



「──逃げるが勝ちじゃあああああッ!!!!」



そう叫びながら、彼は懐からすっと取り出した球体を迷うことなく足元に複数投げつけた。


──煙幕である。


古典的な方法ではあるが、非常に有効なものだ。

まぁスモークグレネードといって差し支えない。


これに対処するなら赤外線スコープとかやりようはあるだろうが、生憎今はそんな対処法は持ち合わせていないだろう。


気がつけば室内は、既に煙に包み込まれていた。

互いに存在を視認できるはずもない。




(……今のうちだッ!! “やる”なら今しかないッ!!)



高崎は迷わず足を走らせた。

命が惜ければ、今のうちに行動せねばなるまい。









────────────────────────────










──そして一方その道中。


ルヴァンとテラが闘うその大きな空間は、混迷を極めていた。

そこを支える巨大な柱は何本か損傷、もしくは破壊されており、今急に天井が落ちてきてもなんら不思議ではない。


そして、一旦激しい攻防に間が空いた。

両者が10m近くの間隔を開け、睨み合う。



「おいおい、まさかアンタの力はこんなモンなのか? さっきから無駄に攻撃外して周りばっか破壊してるが、もしかして道連れでも狙ってんのか?」


「そういう貴様も、さっきから中途半端な攻撃ばかりだがな。 ……目的は時間稼ぎか?」


相対する男、ロドネスはそう言うと、笑いながら続ける。



「“奥”に仲間を入れてる間の囮、ということか。……しかし、残念だが無意味だ。今頃、大切なお仲間は串刺しになっているだろう」


「──そうかい」


その言葉に対し、ルヴァンは特に反応を見せない。

少しの動揺といった感情も見せないことに違和感を覚えたのか、ロドネスは眉間を寄せた。



「──だがな、俺は信じてるんだ。あいつは何だかんだでやってくれる男だ、元よりそう考えてやってんだよこっちは」


そしてルヴァンはそう言い放った。

その目は自らの言った言葉を疑いなく確信していることを伝えるが如く、真摯に前を向いていた。



「ま、だから俺はそっちについてはお構いなくテメェのその舐めた面を潰してやる時間があるって訳だ。

 ……悪ぃが、まだまだ付き合って貰うぜ?」


「おもしろい。随分奴を信頼してるようだが、まずは貴様から殺してやる」



そうして再び戦闘が始まった。

2対2による戦闘。そういった場合一般的には、前方で接近戦と魔術による後方支援がキモとなる。


ルヴァンとテラの場合は、ルヴァンが前衛だ。

彼は今回は銃ではなく、近接武器を手にしていた。



『ヨノクトセル』。テスナ教に伝わる、テスナの弟子の1人である“ヨノク”が使っていたとされる鈍器をモデルとしたアルディスの武器だ。


見た目としては、メイスに近いかもしれない。

宗教的な意味を持つ模様が施されており、魔力増幅の役割も果たす。また、式典にも使用されたり、軍でも使用する将校がいるなど、現在でもアルディス人には親しみ深い武器だ。


ルヴァンは、今回それで殴りかかっていると言うわけだ。



一方、テラはというと。


「テラ、反射神経系強化の更新を頼む! 身体能力もだ!」

「はい兄さん!!」


テラがそう返答すると、詠唱を始める。

そうすれば、次第にルヴァンの体が軽く輝き始めた。強化魔術が施された確固たる証拠だ。


こうして彼は、強化魔術といった支援を中心に行なっている訳なのだが……、どうも“何か”違和感を覚えたらしい。

彼は戦闘体制を切らすことなく問いかける。



「さっきから気になってるんですけど、その後ろの方。もしかしてあなたが操ってたりでもしてるんですか?」


そう、後ろにいる男。つまり“セレン”に、テラは違和感を覚えたらしい。多少の不自然な何かを感じるのだ。


(──あの焦点の少しズレた目。機械的な動き。そして無言にも関わらず奴との連携は完璧な点。どれも禁忌の技『精神操作魔術』の効果と一致します……)


テラが睨みつけるようにロドネスの様子を凝視した。

すると彼は戦いながらニヤリとして口を開いた。



「……操っている訳ではない。ただ、『認識を歪めた』だけだ。目標達成の為なら死んでも構わないと。……そうだろう?」


そうロドネスが一旦下がってセレンに問いかけた。

するとセレンは虚ろな目をしたままに感情なく笑いながら、何を当たり前のことを……とばかりに言った。


「あぁロドネス。勿論だ」




「これが、私の“チカラ”。認識改変、記憶消去、傀儡化。貴様もじきにこうなる。

──“()()()()”によってな」



その言葉に、ルヴァンの眉間が動く。 


“魔術聖典”。この前ユウヤに聞いたばかりの話ではないか。

……嘘だとは思ってなかったが、こんなにも早く出会うとは。




「──ここでその魔術聖典とやらか、クソが。

 神の力をそんな風にしか使えねぇのか西大陸の連中は?」


「──神? ……はっ、貴様は何をいっている?」


突然、ロドネスが大笑いした。腹を抱えて涙を流すレベルで、ルヴァンを嘲笑するように笑って。






「……そんなもの、“()()”にいるというんだ?」


奴はルヴァンの目を一心に見つめながら、底の見えない真剣な表情でこちらを見つめてそう言った。




「貴様は、少しもおかしいと思わないのか?」


奴は両手を横に上げて、子供に解説するときかのような優しい感じの声質で語りかける。



「世界が救われたのは、神の如きテスナ様のおかげだと?

……なら、これだけの力をなぜ封印なんかで済ませた? もし奴が神の如き存在なら、それを全てぶち壊すくらい造作もないことだろう?」


ルヴァンとテラは黙って、彼の言葉を聞いていた。



「故に違う。この世界に蔓延ってる宗教とやらは『色々と』を履き違えている」


ロドネスは、最後にそう結論づけるように言い放った。

その目は変わらず真剣そのもの。でっち上げた話をしているようには一見してみればあまり思えない。




「はっ、なる程な。お前の意見はよーく分かった。……確かに、お前の意見は面白い。考えてみる価値もありそうだ」


しかし、ルヴァンは再び武器を構えて走り出した。



「だが、一旦そういう話を続けるのはやめにしよう。その機会はまた今度だ。……そう、独房で塀越しにな?」



ガンッッッ!!!

武器と武器が火花を散らした。

身体強化を互いに行なっている今、両者の武器は火花を散らし、今にも曲がるのではないかという負担を掛け合っている。




「──いいだろう。ならば貴様の本気を見せてみッ!!!」


その鋭い攻撃によって再び彼の闘争心に完全に火がついたのか、ロドネスも殺意に満ちた表情へと移り変わった。彼の武器である大きな剣が、突如火を舞い上げた。



「──『怨嗟の炎剣』、古き時代に最愛の人を処刑された男が復讐に燃え作り上げた一品だ。そう。斬られた奴を、呪いの炎で焼き尽くす、な……ッッ!!」


ロドネスも地面を蹴ってまるで飛ぶように迫っていく。




───こうして、再び戦闘が始まる。





そして。


2000万人の命を。

さらには、アルディス連邦王国の未来を掛けた戦いは。




ついに、佳境に差し替かるのだった。










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