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3話 『その頃の特任部隊』





「──こ……これは、任務なのかぁ……?」


ルヴァンが部屋に入ってくるや否や、そう呟いた。ここは特任部隊の施設で、今まで空室兼物置であった場所である。


彼のその手には、頭の高さも超える量の機器が積まれており、下ろしたと思えばどさっと大きな音を鳴らした。ちなみに今は三往復目だったりする。



「さぁ? でも、これは確かにキツいですね……」


隣では、彼の後ろをついて来ていたテラも辛そうに同調する。体力自慢の双子も流石にバテバテであった。それほどの重量の荷物がここに積み込まれたらしい。


それだけではない。

特任部隊のメンバー全員が何かを運んでいるのだ。


それらの機器はバラバラに分解されているように見える。つまり、1つ1つは大きな何かの部品のようだ。それが既に一室をほぼ丸ごと埋めるような状態であった。



「あっ、ようやくきた。これで全部?」


ルヴァン達がようやくその奥まで運び終えると、その部屋では1人の少女がそれをうまく、まるで美術作品のように綺麗に組み上げていた。


その様子はまるでパズルだ。一部は天井にさえ届きそうな高さの機器を、土台を駆使しながら適切な場所に当てはめていく。


「……まぁ組み上げてくれるのは助かるんだけどさ。壊すなよ? エレナ」


いや本気で。とルヴァンが付け加える。


──そう。組み上げている少女はエレナだったりする。

実はエレナは理系的なことが大得意なのだ。その実力は、自身である病気の特効薬なども作ったことがある程でもあり、普通に凄かったりする。


…………まぁ定期的に爆発するのだが。



「まぁまぁ私に任せといてよすぐに終わらせてやるわ!!」


よーし!とエレナが腕をまくる仕草をする。やる気満々なようだ。普通なら良いことである。

──だが。


「いや丁寧でいいから!! マジでゆっくりやってくれ!!」


……とルヴァンが懇願して言うように、エレナはやる気マンマンで何かを行うとやらかす傾向が強い。


薬品開発で研究室爆破したときとか、探索魔術で高崎をぶち飛ばしたときとか。



そして。そんな嫌な予感は、大抵当たるモノだ。



「「「…………あっ」」」


どん。

今積み上げたばかりの部品が落ちた。その様子から察するにどうやらうまく部品と部品がハマりきってなかったようである。


そして、それは奇跡のようにルヴァンの足へと落ちていった。数ある部品の中では比較的軽いモノであり、安全靴も履いてはいるが、当然すっっごく痛い。


「がああああああああああああああああああああ!!!?」


ルヴァンが転げ回る。これはガチでキツいやつだ。もはや折れている気さえしくる。

こうなったらいつもの回復魔術である。この世界困ったときは魔術を使えば何とかなるのだ!!!








────────────────────────────








「ルヴァン、本当にごめんね。………てへっ☆」


エレナが舌をだしてコミカル風に謝っていた。どうやら少し反省が足りていないらしい。


「お前一回マジでぶっ飛ばしてやろうか……??」


ルヴァンが地面に這いつくばりながら言い返す。

しかしその声に覇気は全くない。


回復魔術を使ってもすぐには立ち上がれない。何故なら、今回使ったのは即効性の魔術ではないからだ。


回復魔術には2種類あり、急激に治るやつと少しずつ回復するモノである。当然前者の方が圧倒的に魔力を使い、かつ確実性のある治癒方法なので、基本的に緊急時以外は使わない。それが鉄則だったりする。



「それにしても、これ何に使うんですかね?」


そんな中ずっと設計図を見ながら地道に作業を続けていたテラが首をかしげる。なんだかんだでコイツも畜生の才能があったりするのかもしれない。


「……さぁな。あとこれは何なんだ??」


ルヴァンが寝転がりながら近くの段ボールの箱を開ける。その中には、本が入っていた。その表紙を見てみると、正朝に関する資料……であるらしい。



「なんだ、これ……??」


ルヴァン達がさらに何なのか訳分かんなくなっていると、デバイスに着信が届いた。相手はロダン少佐だ。




『例の機器は完成したか?そろそろ作戦に移るぞ」


「──作戦?」


ルヴァンが突然聞いた知らない情報に首を傾げていると、通話先からため息が聞こえた。


『その反応ってことはまだ完成していないのか。その機器に今回の作戦のデータが入れられている。まぁ待つのも面倒だろう。今軽く確認でもしておこうか』


そう言うと、少佐は一息ついた。


『今回のお前らの任務は正朝に飛ばされているタカサキの補助。それがメインだな』


ロダンが伝えてきた任務の概要に、ルヴァンが小さく頷く。なるほど。確かにアイツは今1人で大陸の方に行かされていると聞く。それをこっちから補助すると言うのか。ルヴァンがそんな感じで納得していると、ロダンはさらに言葉を続けていく。


『そこでその機器だ。それは『特殊電波通信機』という、軍特製の一品でな? 直接世界中の我が軍のデバイスと独自の電波で通信できるといった一品だ』


「特殊電波……ですか?」


『まぁ簡潔に言えば、ただの新型無線通信機だ。ただ、ウチの最先端の科学力と大量の資金を注ぎ込んで開発した特殊な電波を使用しててな? 他国の機器にも感知されることはない』



つまり、と彼は結論づける。


『それを使えば、正朝内でアイツは外国と通信している! ……ってバレることもないというって訳だな』


「はぁ。つまりこれで連絡を取れば良いんですね」


テラが納得したように返答する。確かにそれなら合点はつく。この機器の意味が。



…………でも。


「それにしてもなんで分解してまで特任部隊の本部に持ってきたんですか? そんな高価なモノをわざわざ。……しかも何で俺たちにやらせるんですか」


──そうだ、何でここまで持ってきたのかが分からない。

めんどくさかった…とかじゃなくて単純に非効率だ。

軍本部がこれを使って指示でもすればいいのに。



すると、少尉が口ごもる。


「……信頼のある者が指示を出す方が統率感が出るだろ?」


その言葉に、テラは簡潔にこう答えた。


「なるほど。……で、“本音”は何ですか?」


「とか何とか、“上”の連中は豪語してたが、結局それは建前。“上”の本音はその機器“メンドくさい”ってことなんだよ。扱い方が難しい。奴らには全く理解できないらしいな。

……まぁ俺も最新機器の類は得意ではないがな』



つまり、扱えないから任せる。と言いたいらしい。

何とも素晴らしい上層部なんだろうか!!!


『──んでここからがさらに本当の声。この連休、どうしても“上”は休みたいんだとよ。だから部隊の奴らに任せればいいって寸法らしい』


まぁ俺なんかはお前らの監視とか諸々あって結局休めないんだけどな、と辟易したように少佐が言う。



そう。実は今日の建国記念日だけが休みではない。

今日が終われば明日からは普通の休日が2日続き、その次の日は現国王の生誕祭だ。つまり、やりようには4連休以上の大型連休に出来ちゃったりする。

上の連中は、色々任せてこの連休を満喫する気満々ということなのだ☆



「………クソだな。死ねばいいのに」


ルヴァンが本気のトーンで言う。その声はひどく恐ろしいとまで言える。そんな彼の怨嗟の言葉にロダン少佐も、それに関しては同意だな、と低い声で返した。

普段は対立しがちな2人も、どうやらこのことに関しては完璧に意見が一致しているようである。



──『“上”はクソ』……だと。



「……まぁ確かにクソな理由ですが、文句を言っても変わりません。それに先輩のことも不安ですし、やれることをやりましょう」


テラが軽く咳払いをして苦笑しながら言った。

彼ももっともな事を言ってるような気がしてくるが、よく考えてみれば、クソであると言う主張は同じだ。



「そうね!! 部下に押し付けて休む上司はクソだけど、私たちは今はユウヤの補助に集中しましょう!」


エレナも同意する。……あとクソという感想も同じらしい。



なんとも醜くひどい理由によってではあるが...、これで全員の気持ちは一致した。外に敵を作ることは内部の団結に繋がる、とは良く言ったものである。

………いや、大きく見れば内に敵を作ってるのだが。



「だな。じゃあまずはこれを完成させるところから始めるか」


ルヴァンも仕方ない……という感じで話を纏めた。ロダンも『頼むぞ、後でまたかける』……と言い残して通話を切る。




──そうして、彼らはまた作業を開始し始めるのだった。











【ぷち用語紹介】


・特殊電波通信機

数年前完成したばかりの、アルディス連邦王国が誇る独自の形式を使用した通信機。

その性質から、世界中のどこからでも通信を行える&傍受される危険性が少ない、という優れもの

普段は当然厳重に管理されているが……?

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