9話 『潜入任務開始』
そんなこんなで、1週間が経った。
時刻は夕方。今まで地上を明るく照り付けていた太陽も山脈に隠れつつあり、空は次第にオレンジ色へと変化を遂げ燦々と輝いていた。それでもまだまだ周りは明るさを保ってはいる…ものの、そんな光景は1日の終わりを感じさせる。
現在高崎達一行は、目的地であるアルディス連邦王国の大陸側に位置する田舎街、『ダラーデン』に到着していた。
しかし、ダラーデンに到着したといっても本当の目的地はまだまだ奥。しかも、その場所周辺にはなんと公共交通機関もないので、車を使って先へと進んでいる。
「……なんか、懐かしさを感じるなぁ」
そんな中、高崎がそんなしみじみした言葉を漏らした。……彼がそう呟くのも無理はない。
というのも、ここは『アルディス最後の秘境』とも呼ばれるほどの、言わば“ど田舎”なのだ。
近くといえる街からはだいぶ離れた場所にある集落であり、周辺との繋がりも殆どない孤立した世界である。車から周りを見てみると家はぼちぼち立っているものの、とにかく緑が多い。
例えるなら、日本の地方でも余裕で田舎と言えてしまうレベルである。いや、もはや“廃村”の方が近いのかもしれない。最近、高層マンションばっか見てた高崎にとっては何だか込み上げてくるモノすらあった。
しかし、かと言ってそんな彼の古い記憶にあるような場所……いう訳でもない。遠くへと目を向ければ、そこにはゆうに高さ5000mを超える大きな山岳がその目に入る。それは『エルヴィス山』と呼ばれる、東大陸でも3番目に大きい山である。また、その周辺にも途方もない時間をかけて川の侵食や風雨によって築かれた、歴史ある岩肌を見せる山々が聳え立っており、いかにも大陸らしい……といえる雄大さを示していた。
──ちなみに、今車を運転しているのはルヴァンだ。
兵器に精通する彼は、当然の如く車は運転できる訳だ。
「ここ辺がこんな感じなのには理由があってな、ここらは昔から国の中でも孤立してるんだ……宗教的な問題でな。」
「──あ、宗教?」
高崎が、突然口を開いたルヴァンの言葉に首を傾げながら問い返す。彼もこの世界の事情にまだ疎いとはいえ、この世界に宗教がいくつかあるのは知っている。
例えば、この国の国教であるテスナ教。確か有力貴族であるエレナなどはそれ故にテスナ教の敬虔な信徒であるらしく、よく礼拝に行っているのを見かける。
しかし、だとしても。
そんな孤立を進めるような宗教については聞いたことはない。
「あぁ、『ベルナ教』。通称“旧教”とも言われるこいつの聖典には、ちとめんどくせぇ記述があってな? ──『汝、自己の利に溺れ、他を害するすること無かれ』」
ルヴァンが軽く呆れたように解説を始める。
そんな彼自身は、この国ではそれなりに珍しい無宗教家だ。曰く、「んなモンに頼らなくても戦場で死ぬ覚悟はできてる」らしい。……まぁ、ルヴァンらしい言い分だった。
「奴らはこの文章の解釈を拡大して、科学の発展は利便に溺れて自然を害する邪道だ! ……って考えている訳だな。
まぁ無論、ベルナ教信者が全員そう考えてる訳じゃなくて、ここに住んでいる奴らが特段イかれてるだけだが」
「ちなみにアルディスの国教『テスナ教』、通称“新教”とは何かと対立しがちなので、周りの街もあまり関わりたがらない……というのも理由にありますね」
ルヴァンに加えて、テラもそんな丁寧な解説を加えてくれる。彼に関しては魔術に精通している事もあり、テスナ教の信仰者だった筈だ。
だが…なるほど、だからここは極端な田舎なのか。
……いや、待てよ?
「だとしたら、政府はどう考えてるんだ? この地域だって大切な自国の土地なんだからほっとく訳にもいかないだろ?」
「もちろん国は彼らへの説得を続けています。……でも全く進展しないので、そろそろ強硬策にも出るって噂もありますね」
そんな高崎の素朴な疑問に対して、テラが再び懇切丁寧に解説を行った。その様子は、何かとこの世界の事に疎い高崎と物知りなテラ、彼らがまだ知り合って浅い時から続く平常運転であると言える。
ちなみにエレナは寝ている。これもまた平常運転であった。
強行策か………………ん?
「ってことは、ここの住民はアルディスのことは当然好ましく思ってない。だから戦争をさせたかった?それで負けてもらうことで、今度はウラディル領土になりたかった……とか?」
ふと思いついた仮説を、高崎が呟くようにして言った。
確かウラディル共和国には国教もなく宗教には寛容であり、国民性としてもどんな宗派も受け入れる国として有名でもある。
……それに、ウラディルから金を貰っていた理由も、これなら辻褄が合うような。
「なるほど、面白い意見だな。でもそれじゃあ確実性もない。回りくどすぎるしな。それに、この土地の奴らがやってるかも決まってないんだ。人目につかないことを良いことに他の地域から来た奴らが作った可能性も大いにある。
……まぁ役人の動きやウラディルからの金の流れ的にここにアジトがあるのは間違いないだろうが」
「それに、お世辞にも発展してない地域の人なのに改造人間を作れるってのも話がおかしいですしね」
そんな彼らの返答に対して、高崎は納得して小さく頷いた。
確かにそうだろう。やっぱり直接確認するのが一番だ。
──そうやって話している内に、漸く目的地が見えてきた。
建物は外面はツタが絡まりまくっていること以外は普通に見えるが、その中は改造人間さえも作る組織の本部。否応にも緊張してくる。
「………じゃあ作戦に入るぞ」
高崎達は車から降りて、例の建物を囲う塀の傍に隠れつつ、前日に練っておいた作戦に関しての直前の確認を行う。
──作戦は簡単だ。
「まず、俺とテラで捕虜が漏らした情報を元に、侵入口から入る。それで成功するならこれで終わりだ」
しかし、と高崎は加える。
「当然奴らだって無警戒な訳じゃないだろう。バレちまう可能性も当然ある。その時はルヴァン。お前があらかじめ設置しておく爆薬を起動してくれ」
バレたら警報がなる。それは外まで漏れるだろう。
そこで外から起爆することで混乱を起こさせる。そうすれば簡単だ。一旦巻いて透明化魔術でもテラに使ってもらえばいい。
ちなみに高崎達は爆弾の設置場所も、中の部屋の構図もだいたい分かっているから、安全地帯も推測できている。
だから巻き込まれることも……多分ないと信じたい。
「そんで機密文書を手に入れたらうまいこと脱出、そんで即車で逃亡。これで完璧だな」
「……あぁ、単純な作戦で何よりだ」
そんな高崎の解説に、ルヴァンは自虐風に返答した。
まぁ実際なかなかに甘い作戦な気もするが仕方がない。これが3日間の彼らの思考の限界だったのだ。
「……ねぇ。私は??」
高崎達がそうしていると、横からエレナがなんだか不満そうに聞いてきた。あぁ、そういえば役割ないよなコイツ。
──というかそもそも、彼女は立場が立場なだけに正直来るべきでないのだが……。「私だけ仲間外れなのは嫌だ!」いう本人の駄々……もとい主張と、前に出ないサポートに徹するという約束の元、ここへ来ることとなったのだ。
だが正直高崎としては、もしも何かあった時やばいので、出来れば安全地帯で待機させておきたかったのだった。
「お前は……ホラ、アレだよアレ。もしも怪我したときに治療する係。危ない仕事だからな」
「わかった! 任せておいて!!」
エレナがとりあえず役割を与えられて嬉しかったのか、笑顔で胸を叩いた。完全に適当に考えたのだが、意外とうまく(ほぼ意味のない)役割を作れたらしい。
……うん。アドリブ力に自分で驚いてしまいそうな位だ。
──まぁ、コイツがバカなのも幸いだったのかもしれない。
そんな彼女が聞いたら怒り出しそうな失礼な事を思いながら、高崎はゆっくりと息を吐いて気持ちを切り替える。
「……よし、じゃあ行きますか。てな訳でテラ、頼む」
「はい。『ダナ・シディル 』!『デ・クノ・ネルヴィ!!」
満足そうにして待機を始めたエレナを横目に、本格的に作戦の準備が始まる。まず、高崎がテラに消失魔術と消音魔術をかけてもらうと……。
その瞬間、彼とテラの姿は“消えてしまった”。
消失魔術とは、その対象の存在を消す。……いや、正確に言えば『その存在を証明する各情報を隠す術』である。
──つまり、本来見えるその姿を周りに“認識”出来ないモノにさせる魔術……という訳だ。
また、消音魔術はその名の通り足音や呼吸音を極限まで立てなくさせるモノである。消失魔術があればそれほと必要はないのだが、まぁ念には念をというヤツだ。
「さっすがテラ、これなら余裕かもな」
「だからって油断するなよ。魔術も完璧じゃないんだからな」
満足そうに呟く高崎を横目に、ルヴァンが目を細めて釘を刺すように言った。
そう。確かに、これらの魔術も万能という訳でもない。
監視カメラなどの機械を通せばその存在は確認できるし、周りの者に違和感を感じられると、“その認識のズレ”は無効化されてしまうのだ。
だが、それでもこれ以上に潜入に向いた術はまず無いだろう。
ちなみに、2人同時に魔術を受ければ、互いのことは視認できるという機能もある。もちろん便利なのだが、何か敵にも見えてるんじゃないか?って思ってしまって怖くも感じてしまう。
そして、2人は建物の入り口……ではなく、裏側へ回っていく。ただし、別に裏口があるという訳でもない。
そりゃそうだ。裏口があったところで監視の目はあるに決まってる。だから、高崎達は普通の方法じゃ入らない。
──すなわち。
「……ぐっ。身体強化魔術でもあればな……ッッ!」
「気持ちはわかりますけど、透明化魔術とは相性が悪くて打ち消し合っちゃうんですよねぇ」
ゆっくりと、壁を登っていた。
と言っても、ただ力で登っている訳ではない。潜入隊が使ってそうないわゆるラペリングを使っている。そんな状況は、正直本当の特殊部隊みたいでカッコいい。
──まぁ一応、彼らは本当の特殊部隊なんだが。
それでもキツイものはキツイ。高崎が軽くゼェハァしながら登り終えると、テラはもう息切れもなく次の準備に取り掛かっていた。見た目によらず体力も強いようである。
しかし。電子系のモノではなく、旧式の鍵で開ける奴ではあるが、屋上の扉にだって鍵はかかっている。流石に敵だってそんな甘い警備体制は敷く訳がない。
「………よし。じゃあこれを使いましょう」
テラは懐から何かを取り出した。
ただしそれは、別に特別な器具ではない。
──いわゆる、ヘアピンである。
テラはそれを2本持ち、光を当て鍵穴を覗き込んだと思えばすぐに穴に入れ始め開けてしまった。
そして、それらをガチャガチャ動かし始める。
……すると。
ガチャ。
「よし。これでおっけーです」
「………怖い。……俺は今お前が一番怖いよ……」
テラがあっという間に扉を難なく開いてしまった。
その間僅か6秒。どこでそんな技術覚えたんだと思いながらも、高崎は大金を手に入れた暁には自宅のセキュリティを強化することを心に決めた。
そんな訳で、簡単に突破されたドアを開いて中に入っていくと、そこは意外と普通の建物であった。下へと続く階段が正面に見え、禍々しい雰囲気などは感じられないごく一般的なモノである。
高崎達はとりあえずカメラ等がそこにないことを確認すると、その階段をゆっくりと下っていった。この建物は4階建てである。まず上から見ていくことにした。
「ここからは組織の奴らもいる。気をつけるぞ」
そう小声で言いながらドアに手を掛ける。恐らく、この奥には何人かはしないが敵がいるのは間違いないだろう。
だとすれば、不用意にドアを開けると、違和感を感じ取られ、消失魔術を破れてしまう危険性がある。
──“普通なら”。
「……テラ、例の別件の作戦は上手くいってると思うか?」
「まぁそりゃ完遂してもらってなきゃ困りますよ。……どうします? 一応ドアの先を透視でもしておきましょうか? このくらいの厚さなら多分容易にできると思うので」
「……まぁ念には念を入れておくのも大切か。テラ、頼んだ」
高崎がそう言ってドアの正面からどくと、テラが扉の前へと歩み、目をつぶって小さな声で何かを唱え始めた。
──透視魔術。
簡単に説明してしまえば、壁の先がどのような状況になっているかを把握することが出来る術である。
しかし、透視といっても綺麗に全てが見えるという訳ではなく、せいぜい部屋の空間を読み取ることや、熱源反応を把握する程度しか出来ず、かつ超多量の魔力を消費するため、あまり多用出来る魔術ではないというのが通説である。
……つまり裏を返せば、無尽蔵の魔力を有するテラなら全く構わないということなのだが。
「──大丈夫ですね、行きますよ」
しばらくの間、そうしてドアに張り付いていたテラがそう呟くと、すぐさまドアを開いた。普通ならとても潜入中の振る舞いとは思えないだろう。
……しかし、中からの反応はなかった。
ただし、部屋の中に人が“いなかった”訳ではない。
「…………ぐぅ………がぁ………zzzz」
「………ままぁ………おなかすい、たぁ……zzzz」
──というのも。
テラの視線の先にある机で、組織の下っ端であろう奴らが2人して突っ伏して寝ていたのである。
それを見たテラは特に反応を示すことはなく、迷わずカバンから縄とガムテープを取り出して、組織の人間を縛っていった。しかし、決して彼らが起きることはない。
……何故か。
「──事前に手回ししておいた、組織人員の無力化作戦は完璧だったみたいだな」
「ですね。流石はアルディス連邦王国軍が誇る睡眠薬です。こいつらあと数時間は起きませんよ」
──そう。
実は事前に軍の上層部に協力を要請し、この組織が懇意にしている配達業の会社の特定、及び脅……交渉して、奴らに持っていく飲食物に強力な睡眠薬を入れてもらっていたのである。
さらに無味無臭で、体内に取り入れてからいくらか時間が経過してから効く薬なため、食事に混ざれていたことにもまず気がつくことはないという逸品だ。
正直、こんなものが存在すること自体が無茶苦茶に恐ろしいが、味方につけばこれほど素晴らしい存在もそうそうない。恐らくこの調子なら、かなりの人員が無力化されている筈だ。
高崎とテラは、そのまま用意していた縄などでこの階にいたすべての人員を無力化して一息つく。ついでに証拠隠滅のためにロッカーにしまっておくこととする。
「……よし、これなら楽に捜査できるな」
「言うまでもないですけど、油断は禁物ですよ?奴らの一部が寝ていないとか起きちゃうとかもあるんですし。…それとまだカメラにも気をつけないと」
テラが真面目な顔をしてそう注意を促す。
無論、高崎とてそんな事はよく分かっている。
それに、そうだとしても普通より遥かにやりやすい状況なのは間違いない。彼らはそのまま制圧した4階を捜査し始める。
調べてみてまず分かったことは、どうやらここ4階は、建物における警備員の休憩室兼、物資の保管所のようであるということだ。基本、1番上にボスの部屋があるようなイメージだがここは違うようだ。
──ただ。
「……こりゃ、4階には狙いの物は無さそうだな」
汗を軽く拭いながら、高崎がそう結論づける。
実際、あらかた怪しそうな場所はすべて捜査したのだが、ここで見つかったのはせいぜい武器庫くらいであった。
まぁそれらの中にはウラディル製の武器も存在し、ウラディル側から色々流れていたことの一応の証拠はついたのだが。
とりあえず証拠品としてウラディル製のマガジンを1つポケットに入れつつ、さらに頭の中で場所にチェックを付けておいて、次に高崎達は3階へと下っていく。
当然、そこらにも監視カメラは存在する危険性はあるためため、最新の注意を払って行動していくしかない。
しかし………。
「……ダメか、1階にも見当たらねぇ」
なんと3階も、2階も、そして1階も。
特に証拠となりそうなモノはなかった。
いや、それどころか2階以降は人1人さえ見当たらないのだ。
これはおかしくないか??
それに、建物の中はどうも組織の本部とは思えない。
ここは、見た感じは……ただのオフィス。
いや、もはや3階や2階に関しては、空き家のような気さえ起こさせるほどのシンプルさであったのだ。
──流石にこれには、高崎としても作戦の前提に懐疑心を抱かずにはいられない。
「もしかして、潜入がバレていたとか? それで、あらかじめ証拠になりそうモノを大方消しておいた……とか」
高崎が悩ましそうにそんな仮説を立てる。ここまで何もないのだと、流石にそんな可能性を感じざるを得なかった。
しかし、テラが彼の言葉に対してすぐさま首を横に振った。
「いや、恐らくその線はないと思います。バレていたんだとしても、奴らと建物周辺の動きは軍が常に監視していました。もし、他に可能性があるとしたら……」
すっ。
テラが何かを言いかけたそのとき。
うっすらと、彼らの2人の足元に影のようなモノが映った。
そして、その違和感に気がついた瞬間。
足元に大きな。穴が、開いた。
「──地下かッッッ!!!?」
気がついたときには最早遅い。当然ことながら、高崎達の体はその地下へと向かって自由落下していった。
……間違いなく、敵の罠だった。
このまま落ちたら、本当にどうなるかは分からない。
「クソッッッ!!!!」
高崎が緊急用のワイヤーフックを飛ばす。
これは、前に王都で宰相に貰ったあの道具の中の1つだ。先端が壁に命中すれば、すぐ様人1人分の体重は支えられる程に吸着し、軽々と身体を巻き上げてくれる優れモノである。
──これがあれば、なんとか復帰できる!
…………が。
「ごばッッ!!!?」
そんな高崎の狙いは簡単に崩れ去った。
ワイヤーフックによって高崎が上がりきる前に、穴が閉まってしまったのだ。彼はその天井に、勢いよく頭をぶつける。
その上昇速度はかなりのモノである。
それによってぶつかった衝撃はなかなかに凄まじい。
彼はそこで意識を失い、落ちていってしまった。
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「やはり来ましたか………薄汚れた国家の犬どもが」
そしてそのとき、その地下の奥。
暗い部屋で、1人の男がその様子を動画で見ていた。
そこはまるで牢獄のようにボロく、暗い。
彼は一枚の紙を大切そうにして手に取り、立ち上がった。
「──さて、私が直々に相手をしてやりますかね。少しくらいは、新しい力の調整にでもなってくれればいいのですが」
そんな男の声と靴の音が、広い部屋に響いていった。
【プチ用語紹介】
・ベルナ教
通称「旧教」と呼ばれる宗教。
その歴史はアルディスト王国の国教であるテスナ教よりも古く、そもそもテスナ教は元々この宗教の一宗派であった。
3400年以上前に起きた大規模な戦争の際に、地上に降り立った「ベルナ」という神が人々を救い、数々の教えを説いた。とされている。また、神ベルナは善悪二元的な面を持っており、聖書には彼の救いと破壊が記述されている。
現在、西大陸では主流の地域が大半なものの、東大陸……特にアルディス王国では一部の過激派だけが信仰しているのみに留まっている。その聖地とされるのは、西大陸ロムラナ共和国に位置するとある教会である。
・テスナ教
通称「新教」と呼ばれる宗教。
ベルナ教が主流であった約2500年前に、「テスナ」と呼ばれる者が、神の絶対性を否定。そして人間の平等を説き民衆の支持を集めた。また、当時「ある」理由により滅びかけていた人類を、「魔術」によって救った。ともされている。
加えて、『魔術聖典』と呼ばれるモノを作ったと言われ、一般民衆に魔術を広まったのはこの頃である、と記述されたいる。
しかし。そんなテスナ教は、西大陸においては迫害の対象となる宗派でもあった。その結果、迫害から逃れるために西大陸から東大陸に逃げてきた一族が、現代まで続くアルディス朝の始祖達である。その為、この宗教の聖地とされるのは、テスナ教の守護者アルディス国王の後ろ盾を得ている、カラヴィナ公国の大公の住む正教会となっている。
また、因みにテスナ教はテスナは“神”であるとしており、一方のベルナ教はテスナは“預言者”……つまり人間としている。
このことから、両宗教の対立は深く、現在でもその根は深いモノとなっている。