オープニング 〜回想〜
──異世界。 そう、『異世界』だ。
この言葉を耳にしたら、君はいったいどんな世界をまず思い浮かべるだろうか?
RPGでよく見かけるような、中近世ヨーロッパ風の世界?
王国と魔族が世界の命運を巡り、長き争いを続けている世界?
冒険者ギルドやレベルの概念がある、ゲームみたいな世界?
勇者なるものが、魔王を倒して英雄になる世界?
いや。“日本人が転生して、チート能力で無双する世界”??
……きっと、そういった世界が思い浮かぶのだろう。
だが、人々の異世界への想像や要求は大まかに1つにできる。
──それは、“現代社会とはまるで違う”ということだ。
例えば、現代社会と比べて発展度に違いがあったり、一般的な人類とは見た目が明らかに異なった種族が存在していたり、魔法や魔術という謎の力があったり……。などだ。
しかし、ただ違えば良いという訳でもない。
言うなれば異世界は、まるで“ゲームのように楽しそうな世界”であるべきなのだ。
つまり。そういった現実世界には存在しない、かつ魅力的な要素を、人々は異世界に求めるのだろう。
かくいう俺も、そういうものを求めていた。
──ただし。現実というものは、そう簡単に人の想像通りにはいかないらしい。
…………そう。
異世界だからって、必ずしもファンタジー溢れて魅力的な、都合の良い世界じゃあない場合だってあるのだ。
あれは、高校3年の春のことだった───。