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僕の憧れだった華麗な経歴の詩人が 三十才で夭折したのは、 ひとつのストーリーとしては悲しい。

作者: 秋葉竹



僕の憧れだった華麗な経歴の詩人が

三十才で夭折したのは、

ひとつのストーリーとしては悲しい。


けれどほんとうのことをいうとね、

若くして亡くなった「経歴」含めて華麗なんだよね。


煙草が大好きで、

病室で息を引き取る直前まで

煙草にこだわって、

彼の母親の人差し指を煙草に見立てて

吸ったふりをされたという。


家で

愛されていた

彼のことが伝わるよね。


息子がこの世に生を得て

わずか数年で天国へ召されたとき

とても悲しい詩を書いた天才詩人は、

そのおのが最期の瞬間

僕は幸せでしたと

母親に告げたくて

「僕が一番親孝行だったのです」

と言っちゃった。


波を人魚に変えて見せた、

すべての悲しみを汚しちまった、

サーカスさんが大好きだった、


性格破綻者の彼は

詩という暗い血を吐きまくって辿り着いた死後、

日本でもっとも愛される詩人になって

母親孝行したという平仄。


人は重なり、消えていく。


その純粋な、バカバカしいまでの真実の中で

その日々の営みを嘲笑った詩人の遺した夢は、

どこにあるのかわからない

市井という場所に住む

人々の暮らしに染み渡り、

とても大きな声で、

僕の頭の中で

ガンガン鳴り続けている。


まるで遠い海の上を走り回る

海坊主が実は丸坊主の怪物ではなく、

「ボウズ」と呼ばれていたころの

彼の、8歳くらいの姿だったという

事実を差し置いての妄想が、

僕の頭の中を縦横無尽に駆け巡る。


そしてガンガン鳴り続けていた

あのころから、

彼の詩を初めて読んだ中学生のころから、

僕の憧れだった華麗な天才詩人の、

なにを言ってるのかわからない比喩を

読み解くことが一度もできず、

ついに彼の享年をこえた今となっても、

一行たりとて理解すること能わず、

そしてガンガン鳴り続けていた

激しい、この身を斬りつける風が、

真夜中の疾風吹き荒れるイメージが、

僕を悲しくさせるのだ。


悲しくさせて、満足しているのだ。


バカバカしいほどの、天才っぷりでね、

100才も年下の僕を傷つけて、

笑ってるって、史実どおり、

その悪評どおり、彼の性格さいあくだねって、

悲しくさせて、満足して、それで?


それで、また、僕からもっと好かれるって、

なんか、まるで、性悪女みたいな彼。


そんな人もいたから、

僕は死なずに生きてこれたんだって話、

ちょっと重いから、まあ、よすけど、

詩人って、人ひとり救うことができるから、

僕は懲りもせず、信じて、

こうしてヘッタクソな詩を書き連ねているんだろう。


懲りもせず、信じて。


懲りもせず、信じてる、信じてるから。











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