帰
「ケント?おいケント、しっかりしろよ。鈴音がもう10分くらいで着くみたいだぜ」
「あ・・・そうなの?」
「どうした?顔色悪いぞ?」
「いや何でもない」何か忘れているような気がする。思い出せない。
「朝起きるのが早すぎたか・・・」
「うん。そうかも」
「二人ともお待たせ。ジュース買って来たよ」
「また片方だけ変なのかよ・・・」真也が言う。
「変なのじゃないよ珍しいやつだよ」天川が”がぶ飲みブルーチーズ味とコーラ”を差し出す。
無言でコーラを指差す二人。
「恒例の行きますか・・・」
結局買ったのはケント。
「はい、真也。じっくりと味わえよ」と真也にがぶ飲みブルーチーズ味を差し出すケンヤ。
「うぇ、これ不味すぎるだろ・・・」実は案外美味しい。
「今度さ友達とお店へ行ってくるんだけど。隠れ家みたいな店だって。秋葉にあるの」
「へぇ〜どんな店なんだい?」真也が尋ねた。
「うーんとね。わからないけど隠れ家みたいな店なんだって。」
「そう言うところ行かないほうがいいってなんか怪しいよ」
「でも、その子この間大事な人を亡くしたみたいで、相談に乗って欲しいことがあるんだって」
「さぁさぁ、こんな暗い話はもうおしまい!!コミケコミケ♪」
天川は少しおちゃらけるように話を濁した。
「どうしたのケンちゃん?」天川がケントを気にかける。頭に手を当てて痛そうにしているのだ。「なんでもないよ二人とも」ケントはそう答えた。
コミケは大盛況だった。
「じゃぁね二人とも」
「じゃぁな」
「またね」
1週間後、天川が交通事故で亡くなったことを真也から告げられた。涙がでた。悲しかった。
でも真也はもっと悲しいだろう。知った途端に急に頭が痛くなった。頭が焼けるような痛みを覚えた。
そして・・・思い出した。僕はなんてことを真也を殺したなんて。そうだ、あの店で願いを叶えて・・・天川が死んだんだ。死以外の代償で人を・・・いやダメだ。考えちゃダメだ。
もうこんなことあっちゃダメだ誰も人殺すなんてことは・・・これが正しい道なんだよ。きっと。
しばらくして、真也はケントをアニメイトに誘った。
「ヤァいいもん買ったな」真也が秋葉の街を歩きながら言う。
「本当だね。」そうケントも言った。
そしてあの道に差し掛かる。
「なぁケント、こんなところに道なんかあったっけ?」
「え、前からあったけど」ケントはそう答えた。
「怪しい。なかったような気がするんだよな・・・ちょっと行ってみようぜ」
「ちょ・・おい待て真也」真也は歩いて行ってしまった。
「こんなところ絶対ろくなもんないよ」そうケントは言った。
「なぁケント、これ読めるか?」真也があの店の看板を指差しながら尋ねた。
「帰ろうぜ。真也もう飯の時間だよ」
「なぁケント。お前、ここ知ってるだろ?」
「いや別に」
「なんだおい言ってみろ。ストリップ劇場でもあるんだろう!」
「いや、なんだよその古風なネタは・・・」
”からんからん”真也が扉を開けた。
「いらっしゃい」撓れた声のおばあさんがいた。いつ見てもどう見ても異質である。
「なぁ真也、帰ろうぜ」
「おいケント」真也の声が変わった。
「一度死んでくれないか?」真也が尋ねる。
「真也・・・なんでそのことを・・・」
真也はポケットからナイフを取り出して、ケントに斬りかかった。
ケントは腰が抜けて何かないかを探った。
”バンッ”銃声と共に真也が倒れた。
暗い中、床が血塗られていくことがわかった。真也の血だ。
「アァァァァァァァァァァァ」真也の死に顔を見た僕は叫んだ。
手に届いた血。靴とズボンを染めた血、頭の中まで血に染まってしまったように。
何も考えられない。僕は壊れてしまったのか?
「真也?真也?真也?」僕は彼の首をナイフで切って・・・途中でそんな気力もなくなり
斬りかけの真也の頭をそっと戻した。そしてなぜか冷静に戻った。
「時を巻き戻して。」
「代価はいただいたよ。叶えよう」撓れた声でおばあさんが言うと。
また僕は落ちた長い間。落ちた。