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頑張ってる人は輝いてる

作者: 春風 優華

 友人が授業でミュージカルを演った。私は生で公演を見ることはできなかったが、友人に録画を見せてもらった。はぁ、すごい。そう思いながらじっと画面を見つめて、観客(小学校公演なので児童)と一緒に笑ってびっくりして笑って、そして嘆息した。同級生が、毎日頑張って作り上げたものがここにはある。演技にも感動したが、その背景を思うと、より感慨深かった。

 だからこそ、失礼なことではあるが、プロと比べてしまった。プロはすごくない。なぜならそうであって当然だから。そうでなければならないから。プロは練習を感じさせない。一糸乱れない。動揺しない。最後まで演じ切る。その裏には、まさに人生をかけた練習の日々がある。友人たちはアマチュアだ。恥がある。それでも、精いっぱい楽しんで、時にぶつかって、勉強もある中でミュージカルを優先して頑張ってきた成果が表れている。何回も鳥肌が立った。目を見張った。でも、プロのそれとはまるで違った。40分の劇を、見事演じ切った友人ら。何時間もの劇を、観客を一切飽きさせず、休憩を経ても世界観に閉じ込めたままで演じ切るプロ。比べるものじゃない。けど、プロの劇と比べたくなるほど、友人たちの劇は良かったのだ。不揃いで、未完成、それでも全力の友人たちは、輝いていた。喜び・怒り・楽しみ・焦り・不満……様々な感情を、全身で表現してくれた。彼女たちの武器である声を活かし、観客を巻き込み、取り込み、一体となって作り上げた世界。生で見れるのが楽しみで仕方ない。これほど素晴らしいものを届けてくれた彼女たちに、このような場ではあるが、拍手を送りたい。

 ここからは私事で申し訳ない。タイトルにも書いたように、頑張っている人は、自然と輝くものだ。それが汗なのか、涙なのか、笑顔なのかは分からない。何が言いたいかというと、何か目標に向かって努力している人はかっこいいということだ。憧れてしまう。恥ずかしながら私も演じること、ひいては表現することが大好きだ。しかし、今まで文化祭などを通して名のある役をやったことはない。高校三年にいたっては狙っていた役に落ちたのでおとなしく音響を担当した。裏方だって重要だ、なんていうのは裏方本人が言うセリフではない。今、心の中にあるのは、思いっきり声が出したい。叫びたい。届けたい。マイクなんかいらない。体育館の奥まで届く声で、思いっきり……。

 自己表現はいいものだ。本当に。ため込んでいたら体がいつか裂けてしまう。だからわたしはこうして吐き出している。でもほんとうはずっともやもやしてて、高揚感もあって、ああああああって夜空に響かせたいくらいだ。彼女たちのように、打ち込めるものを、叫べるものを私にも。それは、今はホルンしかないと気づいた。このホルンに出会わせてくれたのも、同じ友人だ。ホルンに出会い、オーケストラを知り、大勢で力を合わせてなにかを作り上げる喜びを知った。私はついて行くばかりだ。迷惑かけるばかりだ。それでも笑ってくれる仲間がいる。感謝してもしきれない。まだ、分からないことばかり。それでもいい演奏を届けたい。私たちの演奏の一曲に、閉じ込めたい。演奏会が終わってすぐは、片づけとか色々考えて意外と冷静なのに、しばらくしてふと、あの時、演奏が終わった瞬間のことを思い、感動の秘密って何かな、と考えるときがある。真剣になれば、もっとっもっと分かるはず。それは、観客には分からなくていいこと。演者だけが分かる特別なもの。

 今回ミュージカルをした彼女たちにもあるのだろう、特別なものが。残念だがそれを私が分かることはできない。けど、そんなこと最初から求めてないはずだ。だから私は聴きたい。分かる気はないが、彼女たちが情熱を注いだものから感じた思いはなんだったのか、聴かせてほしい。よかった、頑張った、あそこはもっとこうすべきだった……そんな思いを、ぶつけてほしい。それが彼女たちの努力の証であり、彼女たちにしか得られない、特別な輝きの結晶なのだから。


追伸

 児童を出口で見送りながら手を振っていた彼女たちの笑顔も、児童のちょっと照れくさそうな笑顔も、本物ばかりだった。まずは一回目の本番、お疲れ様。最後みんないい顔してたよ。

 それでは、また。


2017年7月15日土曜日 春風 優華

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