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友達は優しい

ボーン ボーン ボ~~~ン


始業のチャイムが鳴った桜花学園高等部1-Bでは、各々友人同士のグループで集まってた生徒たちが一斉に自分の席へと戻りはじめる。口々に「今日の1限数学だっけ?」とか「うえ・・・今日ゴリラだ・・・」など他愛もない話が飛び交う。


ガラガラガラリ


皆が席につき、先生を待っている中、後ろのドアからなるべく音をたてないように入ってきた少女は灯だ。

(セーフ・・・)っと心の中で呟きながら少女は自分の席へとつくと前の席の少女が振り替えりこちらを見る。


「おはよう灯ちゃん。ギリギリなんて珍しいね?」


この少女は高校生になって初めて灯にできた友達、田中優花だ。黒い髪は短すぎないショートで前を揃えている。性格は控えめだか優しくて笑顔を絶やさない子だ。


「おはようユウカ。実は登校中に悪魔と邂逅してしまったの・・・でも大丈夫よ。ちゃんと始末してきたから。」


と返す灯は心の中でこんな事を思っていた。

『あぁ・・・優花・・・いつも笑顔私の可愛いお花さん。貴女のお尻を鞭で叩いてその顔を歪ませたらどんなに素敵なのかしら。』


「ハァ?邂逅とかマジキモいんですけど?どうせ犬にでもぶつかったんでしょ?」


灯が妄想に更けってると、後ろから高圧的な声が上がった。その一声でヒソヒソと話をしていた生徒たちも口を止め教室は静まりかえる。


「どうせ寝坊しただけでしょ?お嬢様は一人で起きられますかぁ~?」


キャハハッ!!と後ろの女子たちが、下品に笑う。皆髪の毛を金か茶色に染めていて、スカートは校則よりも短く、化粧もしている。その中のこえをあげた一人に向かって灯は言った。


「おはよう葛西あゆさん。その茶色今日も似合ってるわね。てっぺんの方が黒くてプリンみたいで、頭の緩い貴女にピッタリだわ。」


あまり大きな声を出したわけではないが、静かな教室では誰もが聞こえたはずだ。さっきまで笑っていた女子たちも黙り、あゆと呼ばれた少女は茶色のストレートの髪から出た耳を真っ赤にしていた。


「なんだって?自分がハーフだからって調子のってんじゃないよ?うぜぇんだよっ!!」


あゆは声を荒げ立ち上がる。すると灯の隣の男子が後ろを向いて言う。


「まぁまぁ、先生も来るし落ちついて・・・灯さんも言い過ぎだよ?」


「まあ、一馬がそう言うなら・・・」


一馬は、学校でも3本指に入るほど顔が整っており、勉強もでき、運動もできる。茶色髪の少女はさっきまでとはうってかわって、恥らないながら席につく。

一方で灯は『あのプリンは足を舐めさせながら蝋燭をケツにぶちこんでやる』などと考えていた。

もう誰一人としてしゃべらなくなった教室に「おはよう!!」と勢いよくゴリラが入ってくる。ゴリラはいつもより静かな教室に疑問を持ったのか前の席の男子に顔を近づけ「何かあったのか?」などと聞いていたが、その男子は体をひき「なにもありませんよ」と答えていた。体をひいたのは息が臭かったのであろう。

『そういえばこの隣の雄も私に舐めた口聞いたわね。お前はゴリラと交尾させてやる。馬とゴリラでお似合いね』クスクスと笑う少女を見るものは誰もいない。


ボーン ボーン ボ~~ン


朝の会は、灯が進路調査のプリントを忘れた以外は特に何もなく終わった。その時後ろで笑い声が聞こえたせいか、少女はイライラしながらトイレへと向かう。教室から少し離れた廊下で灯は袖を捕まれ振り替えると少し悲しそうな顔をした優花がいた。


「ごめんね。灯ちゃん・・・葛西さんにひどいこと言われたのに私何も言い返せなくて・・・」


『あぁ・・・優しいな。ユウカは・・・』


「でもね?葛西さんもそんなに悪い人じゃないと思うの・・・今は灯ちゃんに少し意地悪するけどきっと仲良くなれるよ!!」


『本当に優しい子・・・でもあんなプリンを庇うんじゃ、お仕置きしないとね』


「あんな下等生物気にしてないから大丈夫よ。それより今日帰りに喫茶店いかない?新しいお店を見つけたの。美味しいケーキがあるみたいよ?」


「うん!いこういこう!」


笑顔に戻った優花は、灯に並んで廊下を歩きはじめる。


「そういえば灯ちゃんが忘れ物なんて珍しいね?本当に今日寝坊しちゃったんでしょー?それで灯ちゃんは将来なにになりたいってかいたの?」


少しイタズラな笑みを浮かべた優花は、にやにやしながら灯の顔を覗く。


「吸血鬼よ!」


ツンッ!と優花から顔を背けそこまま続ける。


「優花こそなになりたいの?」


すると彼女はイタズラな笑顔をやめ、心あらずに答えた。


「わたしは・・・」


「わたしはみんなの味方かな?」


「えっ・・・?」


予想外の答えに灯は思わず優花に視線を戻す。そこにはいつもの笑顔の彼女がいた。


「な~んでもないよ~!!」


そう言いながら少女はくるくるとステップを踏みながら先にいってしまう。


「速くしないと授業はじまっちゃうよ~?」


後ろを向き、手でメガフォンを作るようにして急かしてきたかと思うと、また前にスキップをしながら進んでいく。


「こら!待ちなさい!!」


朝日の差し込む廊下で、二人の少女が走っている。後ろの少女は少し怒り顔、でも本当は楽しそうに。

前の少女はとても笑顔で、腕に着けている花のアクセサリーのついたブレスレットもキラキラ輝いていた。



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