月夜
ふたりは高校生で、お互い初めて異性とつきあう仲だった。
ある飲み会のあと、彼と彼女は、飲み会メンバーで、一人のメンバーの家に泊まり、雑魚寝することになった。
月夜だった。
彼は彼女に「起きてる?」とひっそり言った。
「起きてるよ」
「そう。じゃ、指を貸して」
彼女が指を差し出すと、彼は彼女の指を舐めた。
彼女はぞっとした。
生温かくて気持ち悪い・・・なぜ、こんなことをするんだろう。
次に彼は、指を差し出して言った。
「俺のも舐めて」
彼女はまったく気が進まなかったが、言われるとおりにした。
気持ち悪い・・・指はこうして使うものじゃないでしょう?
そのあと、彼が言った。
「俺はあなたと、憎んでも憎しみきれないほど、愛し合いたい」
彼女には、よく意味がわからなかった。
どうやら、彼の方が性的に成熟しているらしいということだけはわかった。
その後、彼女は彼のことを気味悪く感じて、別れを告げた。
彼はとても悲しみ、その後、何年も女性と付き合えないほどのダメージを受けた。
しかし年月が経つうちに、彼は狡猾になっていき、一人の男になった。
変貌した彼を再び見た彼女は、違和感を覚えながらも、再び付き合うこととなった。
だが、彼女は、彼の狡猾な部分だけは許すことができなかった。
ふたりはよく喧嘩をした。
彼女がもっとも許せなかったのは、彼の女癖の悪さだった。
そして何度目かの喧嘩の末、お互い罵り合いながら、激しく別れることとなった。
何十年も経った。
彼らは、高校の同窓会で再会した。
そのとき彼らは、ほんとうにお互い憎んでも憎みきれない関係となっていた。
しかし、彼の方はそのことについては触れなかった。
「元気そうだね」
「うん・・・・・・」
「あれ? 丸くなった?」
彼女は、どうやら自分が気の強さから、彼に愛想を尽かされたことに気づいていた。
そして、こころのなかで思った。
「(あなたが言ったとおりの関係になったわよ。よかったわね)」
おそらく、あんなふうに過ごした月夜のことを、彼はとっくに忘れている。




