昼食時に
「鶏に突かれまくった」
「襲われた拍子に卵割れてが顔にかかった」
「藁やらなんやらが服の中に入ってちくちく気持ち悪い」
「ヤギも臭かったけど鶏も臭かった」
いっぱい愚痴が出てくるなぁ。
「はいはいはい、愚痴はいいからとっとと着替えて手を洗ってくる。 水は節約して、体は絞ったタオルで拭う!」
うつろな目をしたまま歩いて行ったよ。
なんつうか思考力奪われてないか?
そんなにきつかったのか鶏の世話。
こんなんじゃ話聞くことも無理かな。
・・・。
まぁ昼ごはん食べながら聞いてみるか。
反応が返ってくるかも怪しいけど。
「じゃあアンタはポットの用意をして、お茶を取ってくるから」
ダイアナの指示で動くのも慣れてきた。
いいことなんだか悪いことなんだか。
いやまぁ右も左も分からない中じゃ、むやみにアチコチ回るよりも指示を受けて動く方が安全か。
誰も道案内できない状況だったらまた違ってくるけどね。
「ん、戻ってきたね。 じゃぁ昼食をいただこうか」
人数分のスープとプレーンオムレツ、紅茶とサラダで昼食にする。
「ダイアナさん、旦那さんとは一緒に食べないの?」
ふと気になったことを尋ねる。
なんか八田と堀田の二人がビクってなってたけどなんだろ。
「アタシの旦那は色々配達みたいなこととかしてて忙しいからね。 一緒に食べるのは二日か三日にいっぺんくらいかな。 今コロナの中で働ける人間はみんな何かしらやってるからね。 カレンダー通り、時間通りに過ごすなんて中々」
「忙しいんですね」
「農業プラントの方も人手が要るし、他の施設もね。 一時的に作業を止めてるところもあるんで、稼働状態は六割前後ってとこじゃないかな。 それだってもアンタたちを頭数に入れてだから、いかに人手が足りないかってことは解るだろ?」
うなずいておく。
インフラの維持ってのはとにかく人手がいるからな。
「あ、質問だけど、結局なんでコロナの中にこんな施設を作ったの? 普通に生活ブロックのような施設を表面に張り付けりゃそれで済むんじゃないの?」
そうすりゃ取り残されることも無かったんじゃないのか?
「言ったろ。 アタシたちは好きで宇宙に暮らすことを選んだって。 だったら生きるための手段を確保するために、生活する環境を広げていくってのは自然なことだとは思わないかい?」