絶望なんてしてられねぇ
エアロックから外に出る。
デブリとかが無いことを確かめつつ外側、コロナから離れていく方向に働く遠心力に注意しながら、重機こと作業用フレームジャケットの推力ノズルを一秒だけひねる。
慣性の法則に従って直進しつつ、デブリや岩の出っ張りにぶつからないよう、慎重に移動する。
目的地は電気の通っている隣の農業ブロックだけど、出来ることなら全体の様子も把握しておきたい。
まずは太陽と地球と月の位置の確認出来るところまで移動して、時間と位置情報を合わせる。
その三点の位置から、コロナの軌道がズレていないか確認。
といっても難しい計算を出来るはずも無いから、そういうのはアプリのMOMOに頼る。
『現在地をゼロ基点として観測を開始します。 ガイドに従ってカメラを移動させてください』
ヘルメットに映った矢印に従って、体ごとヘルメット付属のカメラを動かす。
太陽の方向に身体を向けると、液晶バイザーが自動で光量調節を行ってくれるが、それでも眩しいものは眩しい。
目を細めつつ、三点の位置確認を済ませる。
『観測完了しました。 現時点でのズレを修正します。 今のコロナの環境は、それまでより五百メートルほど月に近い位置になっています』
月に近づいた?
なんでだ?
水蒸気のブシューと関係あるのか?
『位置情報にズレが生じていることから、コロナ本体になんらかの影響があったものと考えられます。 より詳細な情報が必要であるなら、コロナ本体の観測を並行して行うことを提案します』
その提案に乗ろう。
今はいろんなものが必要だ。
空気や食べ物といった物質も、今何がどうなっているのかという情報も、これからどうするか何が出来るのかという予定を組む為のなにもかもが足りない。
眼下に農業ブロックを見つつ、その先の工業ブロックへ向かう。
工業ブロックはこの辺に・・・。
無い。
工業ブロックが無い。
ていうか、工業ブロック所じゃない。
『前方に大きな障害物があります。 大きく迂回するか、障害物がコロナから離れるまで待避することをオススメします』
んなこと出来るかよ。
目の前に浮かぶ、半分に割れたっぽいコロナを無視するなんて、どうやったって無理だろ!
しかも浮いてる向こうの塊の何カ所かに、電気の明かりが確認できる。
もしかしたら生存者が残っているかもしれないし、誰もいなくても何か役に立つものが残っているかもしれない。
ちょっとどころか結構な冒険になりそうだけども、イロイロとやれそうなことが見えてきた。
あのでっけぇ塊を隅々まで探って、何としてでも生き残る。
そして脱出までの生活をアップして、本にでもなれば印税生活がまってい
『警告 デブリに注意』
ゴンってな感じに、漂っていたペットボトルに横っ面を殴られた。