さあどうしよう
ジャガ芋を思い浮かべてくれ。
メイクイーンのような細長いのじゃなく、男爵とかの丸っこいのを。
で、男爵の表面にある芽が出るへこみのところ。
回転させた時の赤道上にある、あのへこみの部分に生活ブロックがあるんだわ。
数は十基で半分以上は地面に埋まってる。
地球や月と違って、遠心力で発生する人工重力の関係から上下は逆になってるんだけど、そんなのがジャガ芋の表面に十基あるんだ。
そのほかにも赤道からズレたところに、工業や農業のブロックがあるんだけど、そういうのがちょうどジャガ芋の芽が出る部分のように、へこんだ部分に点在してるんだわ。
で、その生活ブロックがどうなっているのか表示してもらったんだけど、その大半から反応が無いんでやんの。
具体的には、今いるジャガ芋のてっぺんの坑道付近には電気が通っているからか黄色く表示されているけれど、それ以外の生活ブロックの大半、ジャガ芋の半分より向こう側には一切の表示が出ていない。
真っ暗だ。
生活ブロックはそれ自体に脱出機構があるから、事故に関連してブロックごとコロナから脱出したとすれば、今反応が無いのはうなずける。
だけど、そのほかの工業や農業のブロックはどうだろうか?
実はそれらも確認しようとしたのだけど、今いる坑道横の休憩所、便宜上ここは
北極穴と呼んでるのだけど、そこから一番近くにある農業ブロックの一つに電気が通っているのが確認できただけで、それ以外のブロックのほとんどから反応が無いんだな。
だから今表示しているコロナの状態は、北極とその近くの一つに明かりが着いている以外は、全部のブロックが沈黙しているってことか。
「たー、まいったなこりゃ」
生活ブロックが無いだろうというのは覚悟していたけれど、それ以外のブロックが沈黙しているのはヤバい。
まず脱出するにしろ、救助を待つにしろ、拠点となる空間と食料と水と空気を確保しないと生きていけないのはちょっと考えればわかることだ。。
はっきり言って、北極穴の休憩所にある物資だけでは何をするにも足りない。
せめて工業ブロックが生きているなら、そこにある工具や何やらで脱出手段に出来る何かを作れないかと思ったが、電源が来ていないならどうにもならないかも。
「なんつーか、やるだけやってみるか?」
ここにいるだけじゃ、救助が来るか確認出来ないし、生き残るための手段が複数あった方がいいだろう。
重機と宇宙服の充電と酸素の残量を確認。
よし、二時間くらい行動できるな。
ハードタイプのズボンから履く。
上半身の接続を確認してロックをしておく。
重機を背負うようにして着る。
ヘルメットの中で、チェックリストが浮かぶのを確認してから、それぞれの項目で「はい」を選択。
エアロックをきっちりと閉め・・・しまった、あれを忘れてた。
『宇宙服と作業用フレームジャケットとの接続を確認しました。 周辺状況を確認するため、カメラの一部機能を当アプリと連動させます』
オッケー。
これでアプリのMOMOが、カメラを通して周辺状況の確認と警告をしてくれる。
さぁ、色々確認しに行こうか。
・・・エアロックを開けた途端に絶望した。