ガールじゃねぇ、ボーイ・・・男トーク?
夕飯を適当に済ませるとやることが無くなり、岩居さんの提案でパズルゲームのアプリで対戦することになった。
二勝二敗になった頃、岩居さんがゲームしながら彼女の有無を蒸し返してくる。
「えー、彼女とかいないのかい? 今まで一度も?」
「いないって言ってますからー」
ダイヤとルビーを入れ替えて三連鎖。
「学生の時とかは? いい子とかいなかったの?」
あ、同じ三連鎖で返された。
「だから彼女とか全然ですって」
くそ、四連鎖された。
「一人か二人か三人はいただろー。 あこがれてた娘とか」
ルビー、サファイア、ルビー、エメラルド、トパーズ五連鎖。
「いたかどうかならいたけど、でも仲良くなったりとかも無かったし、部活とかでも接点なかったしさ」
二連鎖、二連鎖。
「はー、なんで仲良くならなかったの?」
三連鎖返し。
「いやたいがい向こうは五六人で固まって動いてたし、放課後とかでも帰る方向が逆なのもあって、全然関わるようなことが無くて」
ヤバい積みあがってきた。
「そういう時は色々理由付けてアプローチしたりさ、そういうことはせず?」
「しませんよ。 最近の女の子ってのは怖いんですから」
「最近どころか、女ってのは昔から怖い生き物だぞー。 それでいながら一緒にいると楽しかったり気持ち良かったり面白いときもあるんだから、自分から近づいて色々体験しなきゃ」
「いやいいですよ、馬鹿にされるだけだし」
「そこで足ふみしてちゃもったいないって。 馬鹿にされても何しても付きまとってでも気になった女の子にアタックするのも、一つの経験だぞ」
あ、また二連鎖、二連鎖。
「え? それやったらストーカーとか言われあー!」
「ははー! 勝ったー!」
積んだ。
負けた。
「もう一回やる? パズルジュエル」
「いやもうやめましょ。 また明日も色々見たり探したりするつもりだし、何か使えそうなものがあれば、脱出用の手段に取っておいてもいいし」
「まぁ、そうだね。 大島クンが早いとこ地球で彼女作れるようにおっちゃんも頑張ってみるか」
「いやだから、そういうの別にいいですってば」
「でもまぁ、早く帰れるに越したことは無いでしょ。 このままコロナにいたって女の子が向こうからくるわけじゃ無いし」
ぐ。
・・・その通りだ・・・なぁ。
こんな状況じゃ生存者の方が圧倒的に少ないし、その中に女の子がいるってことの方がまずありえないか・・・。
岩居さんだって仕事の都合とかでコンテナの中にいなかったら、脱出カプセルか何かでコロナから離れてたかもしれないし。
「そういや岩居さんはどうなんです? 奥さんとか、そういう人はいないんですか?」
ベッドの下の段に向かって声をかけてみる。
「んー、ここに来る前に離婚したのよ。 宇宙なんてまだまだ危険なのに、好き好んで飛び込んでいくなんて気が知れないつって大喧嘩。 今頃はこの事故で死んでるかもしれないってんで、保険金を子供の学費と家のローンの返済に当ててるんじゃないかなー」
って。
「それちょっと一大事でしょ! それこそ岩居さんのがしっかり生き残って地球に帰んなきゃ!」
離婚しててなんでこんなに明るいんだこの人は。