コンテナ
「MOMOに確認。 これより救急救命活動に準じた作業を行う。 緊急対応として要救助者のいると思われるコンテナをフレームジャケットを使用して、安全が確保できる場所まで移送する」
『オーダー確認しました。 救急救命活動、記録、開始いたします』
よし。
これで作業できる。
『おい、確認するぞ。 そこのコンテナから救難信号が出てた。 おそらくそのコンテナの中に人がいる。 だな?』
エルが聞いてきた。
「その通りだよ。 MOMOに確認。 まだ救難信号は受信できているか?」
『確認しました。 救難信号はまだ継続して発信されています』
なら早く助けないと。
『・・・あらかじめ絶望する前に言っておくぞ。 救難信号が出ていても、中の人がすでに死んでしまっている可能性もある。 空気漏れや、コンテナがめちゃくちゃに揺れてとかでな』
・・・ぅぇぁ。
マジかくそ。
考えてなかった・・・。
いや、目の前のコンテナに人がいるかもしれないってことで、助けないとってこと以外の他の考えが浮かんでなかった。
一気に引き戻された。
全く根拠なく無事に助けられることを前提にしてたけど、中の人がすでに死んじゃっている可能性もあんのか・・・。
っあー。
何か中の様子分かんねぇかな。
電波。
端末とかでどう発信してどう受信したらいいんだか。
外から叩いて・・・。
中の人が叩き返しても音が聞こえない。
あ、でも中に空気があれば外からの打撃とかの音は伝わるよな?
一方的に発信することになるけど、それでも注意喚起の意味で叩いて知らせるか。
「アプリ起動。 モールス信号変換」
『起動しました。 変換する語句を入力してください』
「救助活動開始します、揺れるので気を付けてください。 この内容を変換」
『変換実行します。 --・-・ -・・- ---・- ・-・-・- --- -・--・ ・・-- ・-・-- ・・ ・--- -・-- ・-・-- ・・・- -・ ・・ -・-・- ・- 』
長いな。
これに合わせて叩くのも大変な気がする。
道具はこれでいいか、フォークリフトに乗ってたペンチ。
「MOMOに要請。 今のモールス信号を、ゆっくり再生」
『了承しました。 再生開始します』
長音の時は二回。
単音の時は一回。
MOMOが再生する音に合わせて、コンテナを叩く。
念のために、もう一度最初から一通り。
コンテナの中に伝わっているかは分からないけれど、中の人はどう反応したかな。
作業を続けよう。
中の人が助かるように。