おお、星が見える
二重扉を順番に開けて、感覚的には下へと階段を下りていく。
実際にはコロナの中心から外へと向かっているので、地表から上に向かうというのが正しいのだけれど、遠心重力の関係でどうしても外側を「下」として認識してしまう。
分かってるの、わかってんのよ。
でもね、感覚がどうしても邪魔すんの。
階段のせいか?
エレベーターだと素直に中心部と外縁部を認識できるのに、階段で移動すると途端に上下でとらえちゃう。
でもまそれは別として、階を移動した。
なんか寒々しい。
いや具体的な気温とかじゃなくて視覚的にね。
うん。
電気が点いてないよ。
どこかで断線してる?
フロア丸ごと電気が来てないってどうなってんだ?
ついでに言うと、星空がきれいを通り越して不気味に光って見えている。
足元から。
だって床が無ぇんだもん。
どこ行った床。
そりゃ空気もなくなるはずだよ。
いくらか床材の梁のようなものと、天井と一体化してるらしい建物は残っているけど。
コロナの分裂した際の衝撃がこれほどとは・・・。
っていうかよくもまぁ上のフロアは無事に残ってたな。
そんなところを普通に歩けてた方がびっくりだ。
・・・でも、ここにいた人たち、ほとんど助かってないよな。
いやでもシェルターに近いところにいた人とか、資材搬出入港とかにいた人ならうまく助けっているかも。
とは言え今は自分のことだ。
「エル、聞こえてる? それから見えてる? 工業区は半壊状態。 工具とかともかく重機とかは場合によってはあきらめた方がいいかもしれない」
『うわー。 監視カメラがやけに作動してないと思ったらこうなってたか。 ぁー。 港湾施設にフレームジャケットあるはずだったんだけどな・・・』
「そうは言ってもこの状態じゃね。 一応送ってもらってたToDoリストで、出来そうなもんからやっていくけど?」
『了解。 ここの工業区でフレームジャケットと、できるだけ多くの各種ガスのボンベをありったけ集めて。 一見要らないだろうってボンベも、どこにあるかチェックをお願い』
「オッケー。 優先度はあるかい? 酸素と窒素以外のアルゴンやネオンは?」
『それもチェックしておいて。 じゃこっちも別の作業に移るから』
回線は繋がってるみたいだけど、エルが引っ込んだ。
どこから手を付けるかなと。
・・・搬出入港のあった個所に行ってみるか。
いくら半壊状態だと言っても、港の基礎くらいは残ってるだろう。
ああいうところはかなり頑丈に作るから、倉庫とかもついでに残っているかもしれない。
ちょっとは期待してみてもいいかな。