工業区へ
暗くはないけど明るくもない通路を歩く。
歩く。
「結構歩いてないかこれ?」
『軍用の通路みたいだしなー。 さっきのスライダー待機室だって、中継点にある派出所っていうか、まぁそういうような場所だし』
軍用かー。
やっぱりさっきまでいたスライダー待機室はそういう目的で作られたのかな?
「で、肝心の国防軍の兵隊さんらはどこに?」
『避難誘導とかで、あちこち動いてたのは見た。 で、コロナの分解と前後して、脱出艇とかでほとんどの人はいなくなっているはず』
「はず、か」
『正義感が強くて、最後の一人も見捨てない! てのが一定数はいるからね。 気持ちは分からなくもないけど、そういう人のせいで逆に脱出が遅れる場合があるから、どこかで見切りをつけてもらわないと』
「見切りをつけられた方はたまったもんじゃないな」
『地球でそれをするならいいよ。 でも宇宙じゃ、一瞬で命が失われるのは当たり前だからね。 実際、君が助かったのだってかなり珍しいケースだからね。 なんであの混乱で生き残れたんだか』
「そこはまぁなんだろう、運が良かった?」
『かもしれないけど、自分で言うかな? まぁ今はそれは置いておこう。 もう少ししたら、工業区に通じる道にでるから』
もうすぐか。
・・・あの足元にある四角いのか?
「あれか?」
『そう、そこ。 そこの足元の扉をあけて、ちょっと行ったところのエレベーターで、工業区に行くから』
エレベーターあるのか。
「この作業用宇宙服、着たままで行けるのか?」
『元々が国防軍の人が使う前提の設計だから、大丈夫なんじゃないかな。 あの人たち、重い装備付けたまま動くし』
の割には、手狭感があるんだけどなこの通路。
「まいいや。 中はいるぞ」
遠心重力がかかっているから、下に落ちる感覚が強い。
「よ」
・・・つ。
足痛い。
何度かぶつけた右足にキタ。
「・・・ぁつ~」
『大丈夫か? どっか捻った?』
「ちがう・・・ぶつけてたとこに響いた・・・」
『・・・そか。 そこのところの扉の先にエレベーターがあるから』
おっけー。
足の痛みはとりあえずおいておこう。
いや、足から痛みがなくなるわけじゃ無いけど、いったん意識から外す。
一階と二階しかボタンがないやこのエレベーター。
ボタンを押して下に行く。
割とゆっくり動いてるな、このエレベーター。
ワイヤーけん引式じゃなくてギヤスライド方式なのかな。
まぁ宇宙空間じゃワイヤーよりもギヤで動かした方が安全か。
ゴっ
あ、着いた?
到着音が鳴らなかったような?
じゃぁ中には・・・吸いだされた!
真空状態か!?