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もう少し

 距離 768.11・・・751.26・・・742.83・・・


 速度が出ない。


 重機がないから仕方がない。


 細かいデブリが当たる。


 スラスターがなくて避けられないから仕方がない。


 あー、まだかな。


 なっかなか進まない。


 かといって加速も出来ない。


 手持ちのスプレーもあと一本のみだから、ここで使うと減速ができずにコロナにぶつかってミンチになる。


 急ぎたいけど急げないジレンマ。


 エアの残量は残り二時間分はあるけれど、バッテリーの方があと一時間分くらい。


 残りの距離、およそ七百メートルを移動するのに三十分くらい。


 たどり着くには十分だけど、何かトラブルがあったらたちまちレッドゾーンに突入する。


 ・・・呼吸を深く静かに。


 アプリもスリープモードで、電源節約。


 ・・・。


 ・・・・・・。


 かえって緊張する。


 距離 610.25・・・608.94・・・607.66・・・


 わかっていても、何度も距離計に目をやってしまう。


 ヘルメット内の矢印の向きがずれそうなので修正。


 使い物にならなくなったボトルを投げて、その反作用で軌道修正と微弱加速。


 距離 605.38・・・604.1・・・602.87・・・


 コっ


 またデブリに当たった。


 大きいのには当たってないけども、微細なデブリについては当たるもお構いなし。


 大きいものがあるなら、それを足場にすればいいもんだけど、幸か不幸かいまだにそうしたデブリには当たってない。


 距離 598.23・・・596.78・・・595.51・・・


 そこまで遠くないはずの距離が、いまだに遠く感じる。


 距離 584.36・・・582.65・・・581.04・・・


 目的地はあそこの明かり。


 非常灯というには明るすぎる色。


 緑色の非常出口のマークでもない、警告を知らせる赤のランプでもない黄色の灯り。


 展望デッキではないはず。


 でも窓の大きさからすると、外をのぞく用の小部屋の窓といった大きさで、すぐ横には外出ハッチらしきものが見えている。


 ただ、この形は見たことがない。


 通常コロナのハッチは垂直に取り付けられるが、このハッチはコロナの表面に沿うような平べったい形になっている。


 この構造じゃ中からハッチを開けたら、遠心力で外に放り出されないか?


 距離438.16・・・436.79・・・435.24・・・


 あるいはこのハッチは、外に何か放り出す専用のものとか?


 距離 365.55・・・364.01・・・362.88・・・


 コロナの表面に近づいてきたけど、距離計の数字が無かったら、マジで大きさを見誤る。


 ハッチだって、大きさの比較になるようなものが無かったら、遠くからじゃただの板にしか見えてなかったかもしれないし、これに気付けたのも光ってる窓があったからだ。


 距離267.36・・・266.25・・・264.91・・・


 空っぽのタンクを構える。


 ここでしくじったら、俺もデブリの仲間入りだ。


 さぁ、気合入れろ大島クルス天馬!

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