あれ?
?
??
首をかしげる。
その動作のせいで、体がゆるく回転してしまったので、ゆっくり戻す。
作業用宇宙服に備え付けのポーチから、レーザー測量器を取り出して距離を測る。
えっと、ここから見えている範囲の中で目印になりそうなポイントを決めて照射。
3621.62・・・
3856.91・・・
4015.99・・・
数字がだんだん大きくなっているのは、向こうとの距離が開いていっているからだな。
さて、ここで問題です。
コロナの半分が遠ざかっているはずなのに、なぜさっき、とてつもない衝撃が来たのでしょうか?
そもそもだ。
コロナは内部の氷が爆発して、半分になってしまったはずだ。
中からの爆発で分離した物体が、どうしてもう一度ぶつかる?
何かある。
さっき見た時にも電気が生きている気配があった。
二つに分かれて、そのまま分離するであろうはずだった二つのコロナがぶつかった。
こっちにはない何かが、向こうのコロナにはある。
レーザー測量器で表示される数字は、六キロメートルになろうとしている。
・・・。
推進剤はある。
バッテリーはまだ六時間は持つはず。
水や食料は、休息室に行けば多少はあるけれど、救助が来るかわからない状況じゃ、いつまでもいられるわけじゃない。
電源も十分になく、光源も電気コードもない。
こっちのコロナの全部を見れた訳じゃないけれども、少なくとも向こうには電気がある。
なら。
ワイヤーを手繰って、扉のところにかけておいたフックを外す。
エアロックのところに置いておいた重機を背負い、箱をセット。
他は・・・。
念のために飲料水を。
ここに戻ってくることはもう無いかもしれないけれど、エアロックはしっかり閉じておく。
まだ痛む右足をかばいつつ、コロナが分裂した際に出来た絶壁の淵まで移動する。
再度距離を測定。
すでに八キロを超える距離になっている。
見た目がでかいから、そこまで遠いようには見えないけど、結構な速さで遠ざかっているのは確かだ。
とにかくアレに追いつく手段の用意。
少し離れたところにあった、有線ケーブルの固定アンカーの枠に、脱落防止用じゃないただのフックをかけて、炭素ケーブルでつないで伸ばす。
十メートル、いや三十メートルくらい離れようか?
重機のウインチとトーチナイフを用意。
ウインチの巻き上げを利用して、それなりに加速してから向こうに射出させる簡易カタパルトだ。
深呼吸二回。
さぁ、行ってみようか!