足が痛い
壁や天井やあちこちに振り回され、気が付いた時にはさっきまで立っていた場所からかなり離れた場所に横たわっていた。
右足が痛い。
背中はバックパック越しにぶつけたせいか、全体的に痛みはあるものの、骨が折れてるとかしてはいないと思う。
痛いのは痛いんだけど。
ヘルメットも割れてないようだ。
というか、作業用宇宙服を脱がないでおいて本当によかった。
一般用の奴だと、体の各所の保護板がないないから、今のような衝撃に巻き込まれてたら絶対にどこかに穴が開いてるか、宇宙服越しでも骨折していたりしたかもしれない。
Beep音も無いから、作業用宇宙服は壊れてないと思う。
あー、でもまだなんか体痛い。
どこがって言うか全体?
あと、あっちこっちにシェイクされたのがかなりキてる。
なんか貧血起こしたようになってて、目の前が薄暗くチカチカする。
気分が良くないけど、できるだけ早く動かないと。
さっきのはアレだよな。
絶対にアレ。
あの半分。
・・・。
「MOMOに確認。 今の衝撃の原因は何か?」
『衝撃の発生は確認しています。 発生原因については現在データベースおよび観測施設からの情報更新がないため、正確な発生原因はわかりません。 隕石を利用したコロナの性質上、地震の発生はありえませんので、この衝撃は外的要因によるものとなりえます』
ああ、やっぱりかありがとよ。
案の定というかアプリのMOMOじゃ、この衝撃が外的要因であろうことは観測できても、その原因が何かであるかなんてことには答えられない。
だったら自分で確認するしかない。
ぐるりと体をひねってから、あおむけ状態から立ち上がる。
右足がまだ痛むけれど、左足で飛び跳ねるようにして外に続く扉の方へ、跳ねるようにして近づく。
扉のパネルを操作して、一枚目を開ける。
完全に扉が閉まるのを確認して、中の空気を抜いてから、外へ通じる扉を開く。
腰からフックを取り出して、扉の外の手すりにかける。
軽く引っ張って外れないことを確認したら、左足に力を込めて大きく飛び出す。
足元のコロナの地面が少しづつ離れていくのを目で追いながら、手足をうまく振って回転させる。
ちょうど頭を百八十度、体の軸を九十度くらい回転させた辺りで、扉から引っ掛けた命綱を通して衝撃がびりびりと伝わってくる。
大きずぎて実感がわかないが、さっきからの衝撃の正体だ。
二つに割れたコロナの一方が、ゆっくりと回転しながらゴツゴツとぶつかっている。
もっとも宇宙空間では音など伝わってこないので、命綱を通した衝撃をゴツゴツとした音と表現してみた。
実際に音が聞こえていたらもっととんでもない大音量で、それこそ震えあがっていただろうけど、そういった意味では音が聞こえてこないのはありがたかったかもしれない。
コロナの半分は、農業ブロックのある所からずっと遠い向こうで回転しているから、こっちまで来ることは無いだろう。
細かい破片が来ないことは、祈っておくけど。