探索に出発
今のところの拠点である、休憩所で装備の再確認をする。
エアーよし。
重機のバッテリーよし。
いろいろと詰め込むための、コンテナの用意よし。
コンテナは重機にくくりつけられないので、ロープに繋げて引っ張って行くようにする。
ただし持って行くのは一辺ニメートルある正方形の貨物コンテナではなく、今回は九十センチ四方の軽量コンテナを持っていく。
宇宙空間なら多少のものの大小は関係無しに、無重量状態と慣性の法則とをうまく使えば身一つで、一トンくらいの物品を運ぶことだって出来るけれども、コロナの内部からモノを持ちだそうと言うのなら、貨物コンテナでは大きすぎるし、モノを詰めたあとの搬出方法に難儀することになる。
あとはサイズが問題だ。
日常の身の回りにあるもののサイズを見てみると、一メートルを超えるものは以外に少ない。
布団やシーツは確かに一メートルを超えはするものの、真空パックで圧縮すればサイズは小さく出来る。
ベッドだって分割が可能だし、もっと言えばコロニーに使われている建材だって、プリンターで打ち出したハニカムカーボンを組み合わせて作られている。
ああ、そういえば自動車のパーツなんかには、一メートルを越すモノはあったな。
ただそれらもコロニーの形がだいぶ出来上がってから作られてたし、それ以前に今、拠点にしている休憩所には必要ないし持ち込めない。
今必要なのは第一に照明器具。
同じくらいの優先度で追加の生活用品。
あとできれば役に立ちそうなモノ。
ぶっちゃけて言うと、手持ちの端末の中には、暇つぶしに使えるようなものがあんまりない。
最初っからアプリ登録されているスライドパズルや、辞書関係の文章アプリを精読するしかなく、エロい系のネタが余りにも少ないのは正直つらい。
ネット環境が死んだだけで、こうまで不便になるとは。
農業ブロックに向かうからあまり期待は出来ないが、とにかく行ってみる。
休憩所から重機で移動を開始。
四本のアームのうち、二本をコンテナの固定に使い、残る二本でコロナの表面に走るパイプや突起を手がかりにして進んでいく。
十分な電力が回って来ていれば、ワイヤーゴンドラで行き来できてたかもしれないけれど、コロナが割れた衝撃でレールとかがひしゃげてたから仕方ない。
ただ遠心力の関係上、コロナの表面を逆立ち歩行しているような感覚に襲われるのが恐ろしい。
地球とか月の表面とかだったらまだいいよ?
コロナだと、遠心力に負けるとそのまま宇宙にほうり出されるんだぜ。
慎重にもなるっての。
距離としては遠く無いものの、重機のスラスターをすこしづつ開けて、パイプなんかに手が届く位置を確保しながら農業ブロックに向かう。
このブロックには特別なIDが必要ないから、大扉の方へ向かって行って、そこから中へ入る事にする。
鬼も蛇も宇宙空間にはいないはずだけども、恐る恐るといった具合に中へ入っていく。
岸壁を頭の上に見ながら、床に足をつけて扉を閉める。
空気の入れ替えが済むのを待って、内扉の中へ。
重機はここに置いて、コンテナを引きずるような感じで持って行く事にした。