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待つこと数分。
ビッグニュースが気になった俺は、女子バスケ部員達に混じって扉の前で木山を待っていた。
「先生遅いわ…」
「木山先生亀だから!」
「「そもそも先輩が走っちゃうからですよ!」」
「むぅ…」
「どこかで倒れてはいないだろうか?」
職員室から体育館までは確かにそこそこ遠いが、歩いてもこんなには掛からない。
心配する晴明を見て、暗い嫉妬心が俺の心に表れる。
そこで俺は提案をした。
「フリースローゲームやろうぜ」
「いいーねー!」
「吠えずらかいてはいけないよ、高凪くん」
晴明と廣瀬がすぐに乗ってきた。
廣瀬は完全に木山の事など忘れただろうが、晴明は心配を押し込めての事だろう。
俺は満足げに頷いた。
そこへ他の三人が乗ってくる。
「「チームワークなら負けないです!」」
「勿論シュートが入ったトータル数を競うのよね?」
「ワタクシ、今なら調子が良いのだよ」
「ちょっと待て!」
俺が提案したのはフリースローゲームと言って、フリースローラインからシュートを打ち入った人から抜けていくゲームである。
だが、こいつらの言っているのは、一人なん本か打って一番多く入れば勝ち。
しかも俺対他。
「高凪が打っていいのは一本だよ!」
「はぁ!?」
どんどん俺が勝てない状況に追いやられた。
意義を唱える間もなく、晴明は楽しそうに笑うとシュートを打った。
いや、打とうとした。
「じゃあ一番晴明めぐみ打ちまーす!せー…きゃぁぁああああ!!」
ビュン!
「グハッ」
しかし、打とうとした晴明がいきなり叫んだ。
そしてボールを、ゴールではなく扉に向かって全力で投げた。
扉の向こうに消えていったボールは、ゴス、と何かに当たったようだった。
しかし、俺はボールではなく晴明に駆け寄った。
俺に続いて他の女子部員も駆け寄ってくる。
「大丈夫か!?」
「て、」
「て?」
「扉に真っ白の手が、ガッて掛かったの…」
片手で目を隠しながら、晴明は震える指を扉に向けた。
つられて俺達も扉を見た。
そこにいたのは。
「「「あ"…」」」
俺と後輩たちが真っ先に音を発した。
一拍遅れて廣瀬が立ち上がって叫ぶ。
「木山先生!?」
「え!?」
「あらぁ」
廣瀬の叫びで晴明もバッと顔をあげた。
そして扉付近でうずくまる人影を認めて顔を青ざめさせた。
「先生!ごめんなさい!!」
「あぁ、ありがとう…。大丈夫だよ」
光の速さで木山の元へ駆け寄った晴明は、何度も頭を下げながら木山を助け起こした。
「お化けかと思って、それでびっくりしちゃって、それで私、あの…」
「大丈夫大丈夫、ほんと大したことないから!」
木山はそう言って笑ったが、誰が見ても無理して笑っていた。