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ジャージ  作者:
2/7

二ページ

「高凪君やーい! 起きたまえよ~!」


どれぐらい眠っていたのだろうか。

重たいまぶたを開けると青空と木々の手前、目の前に急にキノコ頭が生えてきた。

可愛らしい声が発せられた薄い色の唇が、楽しそうに弧に曲がっている。

それを見て俺も微笑みそうになるがなんとか押し止める。


「何か用か…晴明」


人の枕元に立つとは縁起でも無い、と俺は身を起こすと同時にキノコ頭こと晴明を睨んだ。

しかし、俺に睨まれようと晴明は楽しそうな様子を全く崩しはしなかった。

彼女への目線を、くりっとした目から足元のナイキのバッシュへと移し立ち上がる。

俺の胸元に位置する彼女の頭は156cmだ。

思わず撫でそうになる手を握りしめ、俺は彼女を見下ろした。

空の青さとはまた違った青いジャージのズボンを穿いている晴明は、俺を見上げぶんぶんと大きく首を横に振った。

キノコの裾が頭に引っ張られては置いてかれていた。

上半身が制服で下半身がズボンなのは、何度見ても妙な格好だと思う。

しかしこれが着替えやすくて動きやすい格好なのだと、彼女は自慢気に話していた。


「ううん、用とかではないのだよ! ただね、これから練習するから、いきなりドリブルの音でびっくりして起きたら可哀想だな、と思って!」


晴明はにこにこと脇に抱えていたバスケットボールをこちらに見せた。

晴明めぐみは女子バスケットボール部の部員である。

部員は八人でマネージャーもコーチらしいコーチも居ない。

見たままの弱小部だ。

それでもめげるようすも見せず、晴明は毎日毎休憩時間を練習に当てていた。


「今更だろう。休憩時間になればお前が来るのは分かっていることだしな。晴明だっていつもは俺が寝てようと気にしないだろ」


そうだ、この阿呆はいつも俺が寝ていても放課後しか起こさない。

晴明に会うためにここに来ているようなものなのに、毎回起こしてくれてもいいだろ、とまで思ってしまう。

そんな胸中を露ほども表に出さず、俺はしれっと話す。


「つまりお前は理由があって起こした」


「さっすが学年トップの秀才、高凪修誠!」


「これしきの事で褒められるとむしろバカにされている気がするな」


「むむ、素直に照れてはどうかね?」


「誰が照れるか。で、用件は?もうすぐ休憩時間終わるぞ」


俺は携帯の画面を彼女に見せる。

ガラケーだが古いとか言うなよ、俺はメールと電話ができれば充分なんだよ。


「わわ!大変だ!じゃあ教室に行きながら話そうか!」


そう言うと晴明は体育館に引っ込んだ。

俺も晴明のあとに続く。


「手伝うよ。このゴールなおせばいいか?」


俺はゴールの下に落ちていた棒を拾いあげ、ゴールをカラカラグルグルとしまった。


ボールと鍵の片付けをしていたらしい晴明が駆けてきた。


「ありがとう!」


パッと明るくニッコリ笑った晴明の笑顔はとても可愛かった。

俺は無愛想におう、とだけ返した。


「体育館の鍵は開けていて良いらしいから、もう行こう!」


俺達は体育館を後にした。





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