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皆に語らねばならぬ。
それは23世紀に入ったばかりの頃だった。
国家制度が廃止され世界政府が設立されてから100年目が経とうとしていた年。
地球は、人類の犯した罪により崩壊した。
当時、地球はすでに環境破壊が史上最悪の状態だった。それに追い討ちをかけるように人間の愚かさが新たな悲劇を招いた。
それは、開発途中だった化学兵器の爆発事故により、地球の9割が一瞬で死んだ土地へと変貌したのである。
今思うと時期が早まったと言っても過言ではなかったのかもしれない。
だが、元々少ない緑の土地までも壊滅状態と成り果てたのだ。ようやく生きながらえていた動植物もほぼ絶滅し、そうなると人間と言うものは脆い生き物だった。
溢れんばかりいた人工は半数以上が消滅し、世界の秩序は徐々に崩壊していった。
そんな中、生き残った者達は、唯一化学汚染がされず緑が残っていた僅かな土地に自然と集まった。
人々はその土地を「清らかな土地」という意味で、いつしか『清地』と呼ぶようなり、寄り添うように生活を始めた。
しかし、やはり人間というのはどこまでも愚かな生き物だったのか。
次第にこの僅かな土地を支配し、富と権力を欲する者が現れ始めた。争いが起き、いつしか欲望渦巻く弱肉強食の世界へと変貌し、人類は最も過酷な時代を迎えていった。
いつしか、『清地』は三つの世界へと分かれていった。
一つは地上を捨て己の欲望を満たし、力ある者が支配する地下都市『楽園』。
一つは外界の悪夢を捨て夢の世界を望んだドーム『聖地』。
そして、現実という世界に取り残された最も最悪であり、ある意味幸福な廃墟の街『無地』。
この 三つの危うい均衡が保たれたまま時は流れ、今、時代は再び動こうとしていた。