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魔法剣士と呼ばれたい  作者: あおおに


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30/39

死線

 アイドルのDVDを見ながら、これを書くのは辛かった(汗)

 やばいな。

 オレは、目の前の魔物を見上げていた。

 初めて遭遇した人型の魔物。

 しかし、その姿はあまりにも異質だ。

 身長3メートル近い骸骨とは。

 武器の類は何も持っていない。

 鎧も着けていない。

 だのに、感じるプレッシャーは半端なかった。

 迷ってる場合じゃない。スネークソードを鞘に戻すと、腰の小物入れから魔法結晶を1つ取り出す。

 仮に手持ちの魔法結晶全てを使ってしまったとしても、目の前の骸骨を倒せば、とんでもない大きさの石が手に入るハズだ。

 問題は、それが人の形をしてるだろうという事だが・・・。

 ゆらりと魔物が動き始めた。

 やはり、動きは鈍い。

 いざとなれば、走って逃げるか。

「ヴィシュヌ様・・・!」

「試しに、こいつを撃ってみる」

 親指を立て、人差し指を真っ直ぐ伸ばした右手を、魔物に向けた。

 残りの3指で魔法結晶を握りこんだままで、すでにリボルバーを起動している。

 馬鹿の一つ覚えだが、仕方ない。

 魔法力を集中し、撃つ。撃つ。撃つ。

 骸骨の頭部に向けて、3連発。

 狙い違わず命中したかと思った瞬間、銃弾は骸骨の目前で爆発した。

「え、爆発?」

「魔法です!」

「え、なに?」

 呆けるオレに向かって、何か見えない力が迫る。

 目の前に黒い影が滑り込み、手に持った大鎌でそれを叩き斬った。

 またも、爆発。

 オレは吹っ飛ばされ、カルラの足元まで転がっていく。

「げほっ、げほっ・・・!!」

 爆発音で耳が馬鹿になって、目も回っていた。方向がつかめない。それでも、必死に身体を起こそうとする。

 そのオレをかばう様に、カルラが立つ。

 カルラの前には、スレーンドラジットの黒い影。

 その向こうで、魔物の巨大な姿に、ラサーヤナが討ちかかっていく。

 完全に足を引っぱっていた。これじゃ、逃げようとも言い出せない。

 ポーチからポーションを取り出して、一気に飲む。

 身体の痛みが引くと同時に、揺れていた三半規管も正常に戻った。

 立ち上がると、カルラの横に並ぶ。

「大丈夫ですか?」

「もう、大丈夫。申し訳ない」

「どう攻めますか?」

「スネークソードで手足を狙ってみる。ヤツが魔法を飛ばしてきそうな時だけ、雷の魔法で迎撃できないか?」

「分かりました。やってみます」

 恐れる様子もなく、カルラが受けあう。

 なんで、ここまで肝が据わってるのだろう。

 気持ちだけでも、負けるわけにはいかない。

 左手に盾を持ち、右手でスネークソードを抜き放つ。

 ラサーヤナが風のように飛び回りながら、魔物の足に斬りかかるガツガツいう音を聞きながら、背後に回りこむ。

 あれだけ刀を打ち込みながら、手足の1本も両断できないのか。やはり、普通じゃない。

 スネークソードの刃に魔法力を通わせると、魔物の足を狙って鞭のように振るった。

 細かく分離した刃が、魔物の右の大腿骨に巻き付く。

 魔法力を通わせて操作したスネークソードは、その刃たちをきちんと食い込ませている。

 間髪を入れず、伸ばした刃を手元に引き戻す。

 ギャリギャリっ!という耳障りな音を立てて削れる骨。いや、ニクか。

 しかし、切断できない。なんて堅さだ。

 魔物がこちらを振り向こうとするのを、ラサーヤナが追撃する。

 双刀が嵐のように回転した。

 並みの魔物なら、とっくに無数のニク片になっているところだ。

 しかし、効かない。

 わずかに削られたニクが散るのが見えるが、ほとんどダメージになっていない。

 魔物は悠然とこちらに向き直ると、またあの不可視の魔法を撃とうとした。

 が、横手から放たれた雷の魔法が襲いかかり、魔物の眼前で2つの魔法がぶつかり、爆発する。

 爆風を受けても、びくともしない魔物。

 そこにグライド・ソードをしかけた。

 風を巻いて、魔物の足元を滑空する。

 すれ違い様に繰り出した刃が、ガキン!という手応えで弾かれた。

 バランスを崩し、またもオレは地面を転がる。

 堅い。

 堅すぎる。

 ラサーヤナの双刀も、オレのスネークソードも、まるで歯が立たない。

 倒れたオレをかばうように、ラサーヤナが猛然と突っ込む。

 ガイナークさんに剣技を習ったせいで、ラサーヤナの振るう刀の一撃一撃は、以前よりはるかに威力を増している。

 が、その全ての攻撃をまともに喰らいながら、魔物の骸骨の身体にダメージらしいダメージを与えることが出来ないでいた。

 オレはスネークソードを鞘に納めると、魔法結晶を右手に掴み取った。

 何個だ?

 3個。よし、なんとか右手は保つだろう。

 レーザーガン。

 魔法を起動する。

 レーザーって言いながら、収束させた光で攻撃するんじゃなく、収束させた魔法力で攻撃するものだが、魔物には一番効果的なハズだ。

 魔物が、また魔法を撃とうとし、カルラの放つ雷が、またそれを迎撃する。

 再び、頭上で起こる爆発。

 狙うなら、ここだ!

 親指を立て、人差し指を真っ直ぐ伸ばした、リボルバーと同じ形から。

 魔物の頭部を目がけて。

 撃つ!

 握りこんだ3指の中で魔法結晶が砕け、人差し指の先から真っ白な閃光がほとばしった。

 右腕が破裂したかと思うほどの圧力が、魔物に向かって走り抜ける。

 直撃!!

 ヤーミの森のたてがみの魔物を1発で消し飛ばした時よりも、さらに強い光。

 砕け散れ!!

 ごっそりと、自分の中から魔法力が抜けて行った。

 足元がふらつく。

 それを気力で支え、ズタズタになった右手に追加の魔法結晶を取る。

 いつの間にか、ラサーヤナがオレの隣で魔物を睨んでいた。

 魔物を。

「マジか・・・」

 魔物は、健在だった。

 ドクロの左半分がごっそり削り取られていたが、2本の足で立っていた。

 どれだけ、しぶといんだ。

 魔法結晶を使って、自分に治癒魔法をかける。

 右腕を苛んでいた痛みが、楽になった。

 まだ、戦える。

 戦えるが。

 どうしたらいい?

 ラサーヤナが、突っ込む。

 それを、魔物の右手がカウンターで迎え撃った。

 吹っ飛ぶラサーヤナ。

「!!」

 右手を振り切ったまま、魔物がオレに向けて魔法を放とうとする。

 カルラの雷が飛んでこない。

 ラサーヤナを吹き飛ばされたダメージが、カルラを襲っているのだ。

 必死に盾をかざし、その陰に身を隠す。

 強大な魔法力が盾にぶつかり、激しい爆発を起こした。

 当然のように吹き飛ぶ身体。

 ごろごろと、凄い勢いで地面を転がる。 

 意識を失ったらお終いだ。

 耐える。

 耐える。

 全身に訳の分からない痛みが走る。

「うぉぉぉぉぉおおおおおっっっ!!」

 無理やりに回転を止め、立ち上がり様に走り出す。

 一瞬遅れて、オレが転がっていた場所が爆発した。

 爆風にあおられて体勢を崩しそうになるのを、根性でこらえる。

 走りながら、ポーチからポーションを取り出し、一気に飲み干す。

 視界の隅で、カルラが身を起こそうとするのが見えた。

 華奢な身体に、ぶるぶると力がこもっているのが分かる。

 もう立つなと言ってやりたいが、今はカルラ抜きでは勝てない。

 魔物が、ゆらりと動き出す。

 カルラに向かって。

 おい、そっちじゃない!

 スネークソードを抜きながら、魔物に向かって急ターンする。

 その瞬間を狙っていたように、魔物がオレを振り向いて、魔法を放った。

「ぐわっ!」

 慌てて盾を構えるが、目の前で爆発が起きて。

 何も分からなくなった。

 

 

 


 

 

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