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いつもの狩り風景

1話だけでも何人かお気に入り登録して下さって、嬉しかったです( ̄ー ̄)ニヤリ

 薪に火をつけると、背嚢から取り出した鍋に水を入れて温める。

 火は、魔法でつけた。着火用の火種も持っているが、まわりに誰もいない時にはズルして魔法を使っている。

 冒険者が鍋みたいな生活臭あふれる物を持ち歩いてるってのも、日本のゲームやってた人間からしたらイメージの崩れる話だけど、これ一つあるだけで食べ物のバリエーションがぐっと増えるんだから仕方ない。

 おまけに、背嚢に入れてると、ちょっとした防具がわりになるんだよね。

 水は、水袋に入れてた物を使った。

 これは、大型の獣の膀胱から作ってるものらしい。

 できたら水場の近くで野営したかったが、水の補充はそろそろ降り出す雨に頼るとしよう。

 お湯が沸騰したところで、背嚢に入れてたシカの干し肉を・・・・


 魔法感知に何かが引っかかった。

 魔物だ。

 鍋を火から下ろした。鍋を乗せてた五徳も火から離しておく。五徳っていうのは、鍋とかを火にかける時に、鍋を乗せる足つきの器具のことだ。

 火はそのままにしておいて、小剣と盾を手にする。

 そうこうするうちに、結界の中に魔物が侵入してきた。

 完全にロックオンされてるね。

 でも、都合がいい。

 せっかく作った野営設備を壊されたくないんで、こちらからも魔物に近づいていく。

 基本的に、魔物の動きはノロい。

 余裕を持って、魔法を発動する。盾と小剣に風をまとわせる魔法。

 小剣の刀身を中心に渦を巻くように、風がうなる。

 盾の表面にも同様に風が渦を巻く。

 そして、前方に明かりの魔法を飛ばす。

 前方の空間が薄明るく光を発する。光源がどこかはっきりしない魔法の光に照らされて、魔物の姿が浮かび上がった。

 子牛ほどの大きさの真っ白い姿。見た目は、豚に似ているかも知れない。

 目ははっきりしないが、サメのような歯がずらりと並んだ大きな口が、やたらと存在感を出している。

 そう。ヤツの狙いは、人間を・・・オレを食うことだ。

 オレを目の前にしながら、ヤツの態度に変化はない。

 獲物を前にした何の感情も、ヤツからは感じられない。あいかわらずのゆったりした足取りで近づいてくるだけだ。

 魔物は、生き物ではない。

 何かを核として空間に漂う魔法力が凝集し、生き物のような姿をとった「モノ」だ。

 そして、より大きな魔法力を取り込むために人間を食らう。

 そんなモノを始末するのに、何のためらいも感じずに済むのは、ありがたい。

 ホントに淡々と近づいてくると、ヤツは大きな口を開いてオレに齧りつこうとした。

 分かってさえいれば、余裕でかわせる速度だ。

 こいつらの犠牲になるのは、恐怖心で身体の動かなくなった素人がほとんどだ。

 まあ、複数でかかってこられると、冒険者でもやられる時があるそうだが。

 オレは、表面に風をまとわせた盾で、魔物の横っ面を張り飛ばした。魔物の頭部が勢いよく横を向くと同時に、その頬の部分が風に削られる。

 続いて、小剣を魔物の前足に叩き込む。

 渦を巻いた風が魔物の「ニク」をこそぎとるが、足の機能を失うほどではない。

 バックステップして距離をとると、今までオレのいた空間に魔物が噛み付いた。ガツン!という音が響き、肝が冷える。あんなのに噛み付かれたら、手足なら簡単に持って行かれる。

 距離をとったまま魔物の背後に回り込むと、ヤツの尻に連続して斬りつける。

 普通の生き物相手なら、尻のような脂肪の厚い箇所に攻撃を入れるのは、あまり効果がない。しかし、魔物相手だと、その身からある程度の魔法力をこそぎとると活動が停止するため、攻撃を入れるのはどこだっていいのだ。

 3~4回攻撃すると、後ろ足が1本ちぎれ飛んだ。本体から離れた足は、急速に輪郭をぼやけさせて、空間に溶けて消えた。

 こちらに向き直ろうとしてた魔物が、バランスを失う。

 チャンスだ。

 オレは、風の魔法をかけ直すと、残ったもう1本の後ろ足を狙って、小剣を突き込んだ。

 刀身までがグサリと魔物のニクに潜り込み、刀身にまとって風の渦が更にニクを削り取る。そのまま小剣を横に払って、もう1本の後ろ足も斬り飛ばした。

 後ろ足を2本とも失って動きの止まった魔物にトドメを刺そうとすると、その前に魔物の身体がゆっくりと輪郭を失い始めた。

 「お?」

 オレは、ちょっと距離をとってなりゆきを見守る。

 魔物は完全に動きを止めていた。

 どうやら、足2本分のニクを失った時点で、形を維持できなくなったらしい。

 魔物の身体がユルユルとほどけて、もとの魔法力へと戻っていく。いったん崩壊が始まると、30秒もたたないうちに完全にその姿は消え去った。

 あとには、直径1センチほどの球形の石が残っただけだ。

 オレは、その白い石を拾い上げた。

 これが魔法結晶。

 魔物を形作る核を中心に、魔法が結晶化したものと言われる。

 魔法が結晶化するって言われても理屈がよく分からないけど、これを使うと魔法が増幅したり、魔力を貯めたり、色々と使い道があるのだ。

 そして、売れる。

 1センチ大の魔法結晶をギルドに持ち込むと、オレ程度の生活水準だと1週間は宿屋に泊まり続けられる。

 ちなみに、これがギルドで買い取ってもらえる最低の大きさだ。

 オレが結界を張るのに使ったような極小の物では、売り物にならない。でも、魔法を使う際に補助的に使うのは可能なので、オレは便利に使っている訳だ。

 オレはニンマリしながら、魔法結晶を腰の小物入れにしまい込んだ。

 フンフンと鼻歌を鳴らしながら、晩メシの支度にかかる。

 

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