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魔人と貴族

またも、設定披露会です(;´瓜`)

 魔人と呼ばれる存在がある。

 膨大な魔法力を有し、呪文も唱えずに、地を割き、海を割るような大魔法を使うという。

 そう伝えられてるということだ。

 少なくとも、ここ1000年近くは、その存在が確認されたことはない。

 大戦中、ザムザラの大規模儀式魔法が無数の魔物を生み出し始めた時期には、数体の魔人が確かにいたらしいが。

 魔人とは、魔法結晶化した人間のことだ。

 強い想いを持ったまま息絶えた人間を核とし、魔物が生まれることがある。

 珍しいとは言え、これは近年でも起こっていることだ。

 その魔物は人型となるため、すぐに分かる。

 が、通常、人型の魔物が倒されても、残るのは魔法結晶化した「人間の遺体」でしかない。

 しかし、人間を核とした魔物が成長し切ると、その身体を断ち割って、魔人が誕生するという。「遺体」が蘇るというのだ。

 魔人と元の「遺体」が、記憶や意識を連続させているのかどうかは分からない。

 1000年前にわずか数例だけ誕生事例があるというだけで、あまりに情報が少ないのだから。

 しかし、はっきり分かっていることもある。

 魔人は、真っ白な肌に真っ白な髪、真っ白な瞳を持つという。

 魔法結晶化した武器が真っ白なのと同じ訳だ。

 そして、全ての貴族は魔人の血を引いている。

 目の前のカルラの髪の色が白銀色なのは、そのせいだ。

 より、肌や髪、瞳の色が白に近いほど、色濃く魔人の血を引いてる証となる。

 そのため、血の濃さにこだわる貴族の一派は、より魔人に近い者同士を結婚させ、完全な魔人を再誕させようとしているらしい。

 カルラの言う政略結婚とは、政治上の権力を得るためのものではなく、魔法的な力を得るためのものだろう。

 シヴァの髪も青銀色だったけど、貴族の血が入っていると思われる。

 ナラガ領主の下で要職を司っている家という話だったが、その領主の分家か妾腹の血筋なのかも知れない。

 ちなみに、オレの髪も瞳も真っ黒だ。

 これっぽっちも魔人様の血は流れてないと思われる。


 「例えば・・・」

 ハーブ茶を口にしながら、オレは語り始めた。

 「衣服のニオイを消す魔法を考えたんだ」

 「え?」

 何事にも動じそうにないクールビューティーのカルラが、間の抜けた表情になる。

 「衣服は、どうして臭くなると思う?」

 「・・・汗や汚れで?」

 「もちろん、汗や汚れも関係ある。でも、根本的な原因は、細菌なんだ」

 「さいきん?」

 この世界に「細菌」という概念は存在しないので、「細菌」という言葉だけ日本語を使った。

 「目に見えないぐらいに小さな小さな生き物だ。

  この世界には、無数の細菌がいる。それも、色んな種類のね」

 「衣服についた細菌は、汗や雨で濡れると、臭いニオイを出すんだ」

 「あ。それで、雨に濡れたままにしておくと、服がイヤなニオイになるのですね」

 「つまり、臭いニオイを消そうと思ったら、衣服についた細菌を殺してしまうといい」

 「どのようにしてですか?」

 「まず、衣服をしばらく沸騰したお湯につけるという手がある」

 カルラは、目をキラキラさせながら話を聞いている。

 「しかし、これだと衣服が傷んだり、縮んだりすることがあるので、オレは紫外線を使う」

 「しがいせん?」

 やはり、「紫外線」は日本語だ。

 「紫外線て言うのは、簡単に言うと光の一種なんだ」

 「光にも種類があると?」

 「わかりやすく言うと、色の違いなんだけど、紫外線は人の目には見えない色で・・・」

 カルラは、チンプンカンプンな表情だ。

 オレだって、小学校レベルの理科的知識もない人間に、紫外線をわかりやすく説明できる頭脳は持ってない。

 「服や布団を太陽の光に当てると、ニオイが抜けるよね?あれは、太陽の光の中に紫外線が含まれているせいだ。

  その紫外線だけを魔法で発生させて衣服に当てると、衣服についた細菌が死滅して、ニオイも消えるという理屈なんだけど・・・」

 当たり前だが、カルラに理解できてる様子はない。

 「オレの持ってる知識や概念は、全てが今みたいな話の上になりたってるよ。

  どう?そんなホントかウソか分からないような話を、身体を投げ出してまで聞きたいの?」

 「ええ、聞かせていただきたいですわ。

  今の話は全く理解できませんでしたが、ヴィシュヌ様の中にきちんとした理屈が存在してることは分かりました。

  その理屈を教えていただければ、これまで知られているのと全く違う理屈の魔法がが使えるようになるということでしょう?」

 カルラは、目をキラキラさせていた。

 クールビューティーな外見とは裏腹に、熱いものを持っていらっしゃるのかも。

 突然の押しかけ生徒だけど、悪い気はしていなかった。

 オレの持っている知識を、彼女に教えるのも楽しいかも知れないな。

 もちろん、教えていいことと悪いことは選別する必要があるだろうけど。

 「分かった。どれだけ伝えられるか分からないけど、オレの持ってる知識を教えるよ」

 「ありがとう。感謝します」

 「報酬の件は、さっきも言った通り、しばらく保留ということで。

  ちょっと理由ありなんだ」

 「それは、構いませんが・・・」

 「もちろん、ちゃんと教えることは教えるからさ」

 あまりの急展開に、アンナを悼む気分もどこかへ行っちゃってるけど、まあ、これでいいよね。

 焚き火の光を受けながら、カルラが柔らかく微笑んだ。


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