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偽クノイチ異界譚  作者: 蒼枝
偽クノイチ、ファンタジー世界へ
8/34

パワーレベリング(2)

お気に入りが37件…ありがとうございます皆様っ!

 町から西へ1時間ほど行った所にある森、通称「西の森」…そのままね。

 私達はその入り口に来ていた。


 「ここには昆虫系や獣系の魔獣が多く出るんです。依頼のブレードマンティスやホーンドウルフは少し奥に入った所で目撃が相次いでますね」


 緊張した様子のキュアリーが町で調べた情報を披露する。


 「急に生息数が増えた理由は彼らの上位捕食者であった『アラクネ』が半年ほど前Bクラス相当の冒険者のパーティに討伐されたから…というのが有力な説みたいです」

 「…なるほどね。で、再び食物連鎖のバランスが戻る前にブレードマンティスやホーンドウルフの素材を集めておきたい訳か」

 「しょくもつれんさ、ですか?」


 きょとん、と言葉を繰り返すネイル。

 ああ、こっちの世界にはまだそういう概念が無いのか。


 「んーと、植物を動物が食べ、その動物をより強い動物が食べ…最後には死んで大地の肥やしになり、再び植物の栄養になって芽吹く…といったサイクルのこと」

 「そういう考え方は初めて聞きましたけど…確かに言われてみれば納得ですね」

 「ごしゅじ…シノ様は博識なのです。異か…他の大陸を知っていますから」


 ネイル…うっかりぽろっと言いそうになってたよ。

 ここは話題をそらす為にもそろそろ行きますか。


 「それじゃ、そろそろ行こうか…二人とも装備は良い?」

 「はいっ!」

 「大丈夫です、シノ様」


 ネイルは『絹の袖無し忍服』に『闇薙の包丁・紫乃壱式』


 キュアリーは自前の『シルバーロッド』と私からのレンタル『年賀の巫女服』だ。


 ちなみに私はクノイチに再びキャラクターチェンジをし、更に今回はちゃんと装備に身を包んでいる。

 『霞の忍者鎧』『玄武の鉢金』『圧縮腰袋』『龍皮の籠手』『風魔の脚絆』『守護の印籠』

 武器は『岩切の小太刀』『波切りの小太刀』の二刀流だ。


 「スキルのチェックもね…ああ、そういえばネイルはスキル何か持っている?」

 「雑益奴隷のレベル1で持っているのは『レジストペイン』だけなので、悩むまでも無いです」

 「レジストペイン…痛みに耐える技能?防御力が上がるの?」

 「いえ、ただ痛みに鈍感になるだけで…」


 微妙な…対お仕置きスキルなのか…


 「ち、ちなみに他にはどんなスキルを覚えるの?」

 「そうですね、『アンチビュート』は鞭の攻撃に対して防御が上がります。『レジストワード』は相手の悪口雑言に耐えることが出来ます。マスターレベルになると死に至るダメージでも快楽に変える『チェンジペイン』とゆースキルが…

 「よし、一刻も早くクラスチェンジしようか」


 ふ、不憫すぎる…


 「私は治療術初級と治療範囲拡大で良いでしょうか」


 私がネイルの不遇すぎるスキルに密かに涙していると、キュアリーがスキルの確認を求めてきた。


 「そうね、それで良いと思うわ…ああ、そうだ、今回は相当の素材を回収するから…二人ともこれを持ってて」


 私は二人にスーパーのレジ袋(小)サイズの綿の袋を渡す。

 

 「これは?」

 「シノ様のお腰の袋とお揃いですね」

 「そう、これは圧縮ふとん…もとい、『圧縮腰袋』…二人に渡したのは30種類の道具を大きさに関係なくそれぞれ99個まで収納できる魔道具マジックアイテムだよ」

 「!それは…世の冒険者が聞いたら目の色を変えて欲しがりますね…もしかして、シノさんが時々空中からアイテムを出していたのも…?」

 「そういうこと」


 それに加えて『物品転送符』のおかげで、直接4キャラクター共同倉庫から物を出し入れ出来るから、実質ほぼ無限に持てるし重さも感じないけど。


 「よし、装着したね」

 「「はい」」

 「じゃあ、近くに寄って…『隠形』」


 隠形は隠れ身と違って完全に姿を隠すものではないが、その代わり術者を含めて6人までに効果が及び、効果時間も長い。

 いわゆるトヘ○スだ。


 (静かにね…このまま奴らの生息地へ向かうよ)

 (はい)

 (分かりました)


 森の中を獣道をかき分ける様にして進み約2時間。

 私は明らかに周りの気配が今までより物騒になって来ているのに気が付いた。


 (そろそろみたいね…心の準備は良い?)

 (は、はい…)

 (大丈夫、です…)


 改めて二人に確認すると、やっぱり大分緊張している様だ。

 まあ、いくら私が「二人に危ない目には負わせない」と保証してもそれと本能的な恐怖はまた別だろうしね。


 (んじゃあ90分一本勝負で…はい、二人ともこれ飲んでね)

 

 私は例によって薬師で作ってストックしてあった丸薬を3種類ずつ二人に渡す。


 (90分、ですか?…これは?)

 (んくっ…ごくん)

 (ネイルちゃん早いよっ)

 (大丈夫です、たとえ毒薬だろうと××な薬だろうと…ふ、ふふふ)

 

 いや、そんな怪しい薬じゃないから。


 (加速丹、金剛丹、抗魔丹…SPD、VIT、MIDを90分間、倍加する薬よ。副作用も無いから、早く飲んで)

 (はっ、はい…ごくん)

 (飲んだわね?じゃあ、私も技能セットを変更して…と)


 フィールド移動セットからパワーレベリング用セットに技能セットを切り変える。


 【回避術極意】【おとり】【挑発】【結界全体化】【影縛り・改】【命奪斬】

 【多重結界】【迎撃刀術】【迎撃手裏剣術】【二刀流】【斬鉄二連撃】【三連撃】


 技能スロットを2個追加する効果のある『守護の印籠』のおかげで技能は12個セットされている。


 「よっし!では、作戦名『パワーレベリング』始めますか!『多重結界』!」


 私が大きく声を上げると『隠形』が解除され、同時に『多重結界』が『結界全体化』によってパーティ全員にかかる。

 と、途端に周辺から不穏な気配が膨れあがる。

 しかし、なかなか姿を現さない。私がレベル高すぎるせいだろうか。


 「じゃあ、まあ…引っ張り出しましょうかね」


 私は所持品欄を開くと食料アイテムの一番下にある物を取り出した。

 これは食料を生産する時に一定確率で出来る失敗品。その名も『魔物の餌』


 「ほーれ、寄っといで~」

 

 一見ドッグフードにも見えるそれを景気よくばらまく。

 と、途端に


 「「「ぐるぉあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」」」


 パーティの周りに巨大な一本角を持った狼…十数頭のホーンドウルフが勢いよく飛び出してきた。


 「ひぃぃぃぃ!いきなり多すぎませんかぁぁぁぁっ!?」

 「大丈夫…よく見て。シノ様の薬のおかげで目で追えない動きじゃない」


 意外なことに、パニックに近いキュアリーに比べて、レベル1のネイルの方が落ち着いて周りを見れている。


 「そう、加速丹は動きだけじゃなく知覚も鋭敏にしてくれるわ…結界も3回までなら物理攻撃を防いでくれるから、落ち着いて周りをよく見て…よっと『影縛り・改』!」


 私は二人に声をかけて落ち着かせながら、飛びかかってきた四頭のホーンドウルフに向かってスキルを発動、棒手裏剣をそれぞれの影に向けて放つ。


 「ぎゃぅぅん!?」


 見事に四頭は影を射抜かれその動きを止める。

 このスキルは昨日ギルドに登録した『影縛り』の上位スキルで、多少MPは使うが複数に向けて使用が可能な上、発動率も高いという…パワーレベリングの為の様なスキルだ。

 おまけに今の私はMP無限というチート状態なので、MP消費という唯一の縛りも無いに等しい。


 「動きを止めた敵から二人で集中的に攻撃して!」

 「はいっ」

 「了解です」


 今回は二人の為のレベルアップを兼ねているから、私が無双してしまっては経験値効率が悪い…らしい。

 そもそもこの世界の『レベルアップ』というのは、魔獣や魔人、魔族、その他の人系種族など、魔法や魔力を扱える可能性を持つものを倒した時に、その『魂の力』が倒した者に分け与えられる事によってなされるもの、だそうだ。

 今回のこのホーンドウルフのように一見魔法を使っていなくても身体能力の強化に本能的に魔力を使っていて、それが魔獣と動物の違いらしい。

 だから精肉作業の課程で牛を殺しても、狩りで普通のイノシシを狩ってもレベルアップはしない。

 パーティを組んでいれば直接倒さずとも最低、半分程度は魂のけいけんちを得られるとのことだが、それにしてもキュアリーの様な攻撃手段の少ない『治療術師』は同パーティの中でも成長の遅れる傾向にあるという。

 昨日の夜ネイルのパワーレベリングを思いたった時に、この世界のレベルアップの仕組みについて詳しく聞き出して立てた作戦だった。


 「ぎゃわん!!」

 「すごいっ!『紫乃壱式』…Cランクの魔獣が紙の様に切り裂けます!」

 「え、えーと、とどめっ!」

 

 ネイルが魔法の包丁を振るい、キュアリーがシルバーロッドでとどめを刺す。

 その間に私は次々と『影縛り・改』で別の敵を麻痺状態にしていく。

 時折、麻痺効果が切れて動き出す敵もいるが、それはしょうがないので私が切り捨てる。

 結果、15分ほどでホーンドウルフの群れは殲滅することが出来た。

 内訳はネイルとキュアリーで12匹、私が撃ち洩らしを仕留めて5匹、計17匹の戦果だった。


 「結局依頼の3倍以上倒してしまいましたね…シノ様」

 「多いに越したことはないさ…さて、素材を回収しようか」


 刃物を持っている私とネイルで角を切り離す作業を行い、キュアリーにはその間の見張りを頼む。


 「そういえば、二人ともレベルアップしたんじゃないのかな?どう?」

 「「はい!」」


 よくぞ聞いてくれました、とばかりに嬉しげに報告する二人。

 キュアリーは2レベル上がってレベル15に。

 ネイルは一気にレベル6に上がっていた。


 「それはおめでとう。スキルなんかも増えたのならスキル構成今の内に見直す?」

 「私は『光撃術初級』(ホーリーライト、光弾)を覚えました。これでやっと攻撃にも貢献出来ます!」

 「それはいいね。戦術の幅が広がる…でもここでは回復中心のセットの方が良いかな」

 「そっ…そうです、ね。ええ、もちろんです!」


 早速攻撃呪文使ってみたかったんだろうな、キュアリー。


 「私は…今回覚えたのは『レジストワード』『レジストスパンキング』の二つで…いいんです。HP増えたし…」


 やっぱりそっち系統のスキルなのね…不憫すぎる。


 「さて、一通り素材も回収したし、次はブレードマンティスの巣を探そう…か…いや、」

 「どうされました?シノ様」

 「ん、探すまでも無かったみたい…こちらに来るわね…大量に」


 カサッカサカサカサ…

 カサガサガサガサガサ…

 ガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサ!!


 不気味な音を響かせつつ森の奥から藪をかき分けて姿を現したのは…巨大な鎌を持つ人間サイズのカマキリ…ブレードマンティスの群れだった。


 「ひぃぃぃぃ!グロいっ!グロいですシノさんっ!」

 「ギチギチギチ・・・・」「ギチギチギチ」「ギチギチギチチチチチ!!」

 「んー、40匹前後かなぁ。ちょっと数が多いね…ホーンドウルフの血に惹かれて来たかな」

 「ちょっとで、すまない量だと思うんですがっ!」

 「いざというときは私、シノ様の盾に」

 「キュアリー、パニくらない。ネイルは馬鹿なこと言わないの『多重結界』」


 私はとりあえず多重結界を張り直してネイルに告げた。


 「ネイル、あなたの主人がどれほどのものか…よく見ておくと良いわ…ちょっと経験値もったいないけどね」


 そして私は群れの中に飛び込んでいった。


 「『命奪斬』の代わりに『反撃術極意』をセット…『おとり』『挑発』『迎撃刀術』『迎撃手裏剣術』発動…『影縛り・改』!」


 『おとり』と『挑発』によって敵の大半は私に向かって来ているが『影縛り・改』で動けなくなった数匹が壁となって一度にはかかってこられない。

 その壁を乗り越えたとしても『迎撃刀術』『迎撃手裏剣術』で攻撃を防がれ『反撃術極意』でカウンターをくらい『斬鉄二連撃』で四つに切り裂かれる。

 結果として、私は一匹たりとも背後の二人の方へは通していない。

 

 「申し訳ありません、シノ様…私はまだ主の実力を見誤っていました…」

 「うん、なんてゆーか…言葉がない、ね」


 私は黙々とブレードマンティスの屍を作り続ける。

 技量はチート仕様だから良いとして、これだけの凄惨な殺戮を続けているというのにまったく動揺や嫌悪といった感情が沸かない。

 あるいは私の精神まで『クノイチ・神楽紫乃』として調整を受けているのかもしれなかった。


 結果として。

 10分もしない間に40数匹のブレードマンティスはすべて屍となっていた。

 その惨状にさすがにキュアリーは青い顔をしていたが、ネイルの肌はむしろ紅潮していた。


 「うっ…うぷっ…」

 「素敵すぎます…シノ様…」


 私はそんな二人の様子を横目で見ながら未だ警戒を解いてはいなかった。

 何か…まだ『何かいる』…今までのとは違うヤツが。


 「二人とも…まだその場を動かないで…」


 そう言いかけた時。私は首筋に強烈な殺気を感じてとっさに後方へ飛んだ。

 ーーガオンッ!!ーー

 それと同時に、私の横にあった樹木が幹ごと断たれ、ゆっくりと倒れていった。

 直径30センチはありそうな立派な木だったのだが。

 

 「そこか!」

 

 私はその木の断たれ方や気配から、だいたいの方向を割り出して棒手裏剣を打ったが、ガインッ!と生物に当たったとは思えない音を発して手裏剣はそいつの両手に弾かれた。

 「そいつ」、は他の個体よりも遙かに大きく…全長5メートルほどの体躯を誇っており、その体表は金属の様な光沢でくろがねの様に光っていた。


 「デス・マンティス…」


 キュアリーの呆然とした声が聞こえた。

 そいつはブレードマンティスの特殊進化個体…限りなくAに近いと言われるBクラス魔獣、デス・マンティスだった。



 


 

 で、ただいまブレード&デスマンティスの素材部位を回収中という所です。

 数が数なので、再び血の臭いに惹かれて魔獣が来ないよう結界石を埋めて安全地帯を作り、それから作業をしています。

 デス・マンティスですが、ボスの割に『斬鉄二連撃』二回であっさり沈みました。

 

 「…Bクラスよ?普通、王国騎士団が一小隊でかかるレベルの魔獣よ?何でこんなあっさり…」

 「いくら強かろうが所詮Bクラス魔獣…レベルにして30あるかないかという所です。シノ様にかなう道理がありません」

 「…シノさんのレベルってそんなに高いの?」

 「主に口止めされているので詳しくは申せませんが…そもそも今回の戦いの中でも六個以上のスキルを同時に操っていましたでしょう?」

 「…そうだよ!ということは少なくとも50レベル…神話の英雄と同レベルはあるって事!?」

 「はいはい、君たち、そろそろ帰らないと日が暮れるまでに森を抜けられないよ~さっさと集めてね」


 女3人寄れば姦しいとはよく言ったもので。

 素材を全部集め終わるにはそれなりの時間がかかったのでした。


 戦果

  ホーンドウルフの角17本

  ブレードマンティスの鎌44組

  デス・マンティスの鎌1組

  デス・マンティスの魔石1個


 ちなみに『魔石』とは強力な魔獣の体内に時折精製される物質で、魔力の圧縮された宝石みたいなもの。

 魔法具マジックアイテムの核として需要があり高く売れるらしい。

 

 また、レベルもそれぞれネイルが目標のレベル15、キュアリーがレベル17に上がっている。

 マンティス系は彼女らは手を出さなかったが、数が数だったのと偶然とはいえBクラス魔獣を倒したせいで十分な魂のけいけんちとなったらしい…私はもちろんこの程度では経験値の足しにもならなかったが。

 新しいスキルはネイルが『ストーンスキン』と『アンチビュート』を覚えた。

 やっと役に立ちそうなスキルを覚えられてネイルが嬉しそうにしていたのが印象的だった。


 「よし、じゃあ町に帰ろうか…近くに寄って…『隠形』」

 私はトヘ○スをパーティにかけ、一路サザンの町へと帰ることにした。






 町に着いたのは日も落ち、暗くなった頃だったが私達はまっすぐギルドへと向かった。

 依頼窓口に依頼文を提出し、依頼を達成したことを告げる。


 「え、今日の朝受けられた依頼ですよね?もう達成されたんですか?」

 「ああ、ちょうど対象の集団と連続して遭遇してね…運が良かったよ」


 私がギルドの依頼カウンターにサンタクロースの担ぐような袋を5つも一気に提出したので周りがちょっと騒がしくなった。

 本当は所持品欄や『圧縮腰袋』から直接出したかったのだが、あまりそれらを詮索されたくなかったのでギルドの近くで麻袋を5つ買って移し替えてきたのだ。


 「しょ、少々お待ちください…」


 あまりの量に依頼受け付けのお姉さんの顔が引きつっている。

 ごめんね。夜遅くにやっかいな仕事持ってきて…


 「食堂の方で待ってますのでごゆっくり」


 私はお姉さんに一言告げるとネイルとキュアリーを伴って食堂スペースの方へ赴いた。

 

 「とりあえず打ち上げでもする?アルコールは無しでね」

 「そうですね、あの状況から無事戻ってこれて信じられない位ですし…お祝いしましょうか。ネイルちゃんのクラスチェンジ(予定)祝いも兼ねて」

 「…ありがとう」


 適当に料理と飲み物を注文して乾杯をしようとした時、横合いからだみ声がかかった。


 「姉さん達景気良さそうだなぁ。あの袋の中身はマンティスとウルフの素材だろ?どうやって手に入れた?」

 

 声のした方を見ると茶髪の戦士が下卑た笑いを浮かべながら立っていた。


 「どうって…指定された場所で狩りをして…」


 律儀に答えるキュアリー。


 「おいおい、冗談言うなよ。Cクラス魔獣をあれだけ一日で倒したって言うのか?ありえねぇな…正直に言いなよ…どっかで魔獣の墓場でも見つけたんだろ?独り占めは良くねぇな」


 勝手に納得して私とキュアリーの肩を抱いてくる戦士バカ


 「一人で勝手な推論に達したあげく妙齢の婦女子の肩をみだりに抱くとは…もののふとも思えん所行。少し外の空気に当たって頭を冷やしたがよろしかろう」


 どうも私は怒ると口調が時代劇っぽくなる癖がある…


 「て、てめぇ…俺を誰だと思ってやがる!Bランクの戦士…」

 

 トン


 私は食器ナイフを一本男の影に突き刺した。


 「あ、あれ…?動かねぇ…おい、何をした…!?」

 「ああ、すまんな、そのままでは外の空気に触れることも叶わなかったな…失敬」


 『影縛り・改』を対象を一人に絞り込んで使うと効果時間が飛躍的に延びる。

 とりあえず2時間位そのまま彫像をやっていてもらおうかなぁ。


 「シノ・カグラ様、査定が終わりました」


 ちょうどその時、ギルドの依頼受付のお姉さんから声がかかった。


 「…あの、その方はいかがなさったので?」

 「ああ、なんかギックリ腰みたいですよ。無理するから…」

 「…そうなんですか、お大事に。では、査定をお伝えします。こちらへ」

 「分かりました」


 私達は食事をいったん中止してギルドの依頼窓口へと戻った。


 「では、今回の依頼の査定についてお知らせいたします…

    ホーンドウルフの角17本

    ブレードマンティスの鎌44組

 依頼内容がホーンドウルフの角5本、ブレードマンティスの鎌5組でしたので追加報酬含めまして金貨17枚となります。

 それから、御3人様ともギルドランクのランクアップとなりましたのでギルドカードをお出しください」


 私が3人のカードを取りまとめて受付に提出する。


 「きききききき金貨17枚ですよ!シノさんっ!」


 キュアリーが興奮する気持ちも分かる。

 食事などを基準に日本と金銭価値を比べると…だいたい1クラム100円位だ。

 金貨は10000クラムだから約100万円、今回の報酬は約1700万円相当ということになる。


 「ギルドランクはシノ様とキュアリー様がCへ。ネイル様はDへランクアップです…シノ様、この二日間でCまでになってしまうなんて…どんな無茶をなさっているんですか。お体には気をつけてくださいね」

 「心配してくれてありがとう、気を付けるよ…そういえば名前を聞いてなかった。これからもお世話になるだろうし、聞いても良い?」

 「あ、はい、その…ミシェラ、です…」

 

 心配してくれたことが嬉しかったので笑顔のサービス付きでお礼を言ったら受付のお姉さん…ミシェラさんは真っ赤になってしまった。


 「シノ様…シノ様はご自分の笑顔の威力を自覚なさるべきです」

 

 なぜか少しネイルが不機嫌になっていた。




 私達は食事の続きをしながら今回の報酬について取り分を話し合っていた。(さっきの男は彫像と化して店の隅で立たされていた)


 「本当にこんなにもらって良いんですか?実質ほとんどシノさんの力じゃ…」

 「そ、そうです、手伝いどころかレベルアップにお力まで貸して頂いたのに」

 「だから私はデス・マンティスの素材と魔石も貰うってことで。換金すれば金貨3枚にはなりそうなんでしょ?」


 結局、ネイルとキュアリーがそれぞれ金貨6枚、私が金貨5枚とデス・マンティスの鎌一組、魔石一個をもらうことで報酬を受け取ることに納得させた。


 その後は食堂のご馳走に舌鼓を打ちつつ別れを惜しみ、互いの宿へと戻っていった。

 ちなみにネイルが奴隷ではなくなった為、今夜はスイートルームからノーマルな部屋に移っている。

 お風呂はネイルと一緒に大浴場と露天風呂を満喫した。

 体がまだ暖かいまま、ベッドに潜り込み、さて、いよいよ明日はネイルのクラスチェンジかな…等と思いながらネイルを抱き枕に眠りについた。


戦闘シーンって難しいね。

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