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偽クノイチ異界譚  作者: 蒼枝
偽クノイチ、異界の日常
32/34

エピローグ→プロローグ

次作へとつながるお話です。

※ちょっとシノさんが下品になっていますので、ご注意!

シノさん本人は気にしていませんが、人によっては「これはバッドエンドだろ」と思われる方もいらっしゃるようです。


 皆様、お久しぶりです。

 ファリーアスでクノイチやっていた神楽紫乃、と申します。


     ・

     ・

     ・

     ・

 ……ファリーアスから『界渡りの宝玉』によって消えた私は、新潟県は○○市忍者村の女性用控え室(スタッフルーム)に実体化した。

 周りには誰も居らず、転移を見られなかったのは幸いだった。


「むー、カレンダーが進んでないな、本当に私が消えた直後の時間に戻ってきたんだ」


 いまだに日本に戻った来たと言う事を信じられず、しばらくそこに立ち尽くしぼーーーー……していると何か違和感が。


「んー……なんだろ…………………あ、装備品!」


 そう、ファリーアスで装備していた服や武器をそのまま身につけていたのだ。


「は、はは……まさか実際に使えるなんて事は」


 ひゅん、と軽く小太刀を一振り。

 ぱかっ………ズズゥゥゥン……


「えーと……」


 うっかり刃をかすらせてしまったロッカーが、綺麗な断面を見せて左右に切り開かれ、開き(・・)にされていた。

 まさか、と思い「所持品」とつぶやくと、あっさりスマートフォンのウィンドウ……戦オンの所持品欄を開くことが出来た。

 神鉄の忍者鎧、ドラゴンブーツ、神殺しの短剣ダガーオブゴットスレイヤーエリクサー・オール(パーティ完全回復薬)Etc.


 戦オン内アイテムだけで無く、ファリーアスで入手した物も所持品欄から取り出せる。


「……世界の管理者さーん、チートが治ってませんよー……」


 地球では私の声は届かないのか、残念ながら返事は返ってこない。

 諦めて所持品の確認を続けると、ギルドカードも実体化できたので、現在のステータスを確認してみる。



 氏名シノ・カグラ 性別女 年齢21(1021)歳 

 

 総合レベル1000 ギルドランクEX

  クラス メイン『クノイチ』LV1000

 

  ステータス

   HP34525

   MP測定不能


   基本値(実効値)

   STR 17(1715)

   VIT 15(1514) 

   DEX 18(1816)

   SPD 18(1816)

   INT 13(1312)

   MID 18(1816)


  称号

   世界の天秤

   クノイチマスター

   神楽商会創業者

   ファリーアス世界の新たな神


  固有スキル

   キャラクターチェンジ

   マナ解放

   マナ譲渡

   超回復(HP自動回復)

   神の威厳


  属性補正

   闇+50%

   炎+20%

   光-10%


  祝福

   名も無き世界の管理者

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

スキルスロット12

 セットスキル 【万象看破】【神卸・久遠】【流水】【結界全体化】

        【攻撃破界化】【命奪斬・極】【積層結界】【気配察知】

        【総合迎撃術】【真・二刀流】【斬鉄二連撃】【千刃】

――――――――――――――――――――――――――――――――――――


「……は、はは……ちょっとこっちの世界では……オーバースペックか、な」


 こんな能力、それこそ紛争地帯に一人飛び込んでパワーバランスを崩す位にしか使えません。いや、しませんけど。


「……それより、これ……どうしよう……クビかな」


 私の目の前には真っ二つになったロッカーが相変わらず鎮座ましましていた。


         ※


 結果から言えば、私は何とか首にならずに済んだ。

 あの後、速攻で貴金属買い取り専門店に駆け込み、ファリーアスの金貨を5枚ほど買い取って貰ったのだ。

 もちろん、アンティークコインとしての価値などある訳も無く、純粋な金の価格として買い取って貰ったのだが、意外と金の含有率の高かった金貨は昨今の金価格高騰もあって一枚10万ほどで買い取ってもらえた。

 合計50万円。業務用ロッカーが20台以上買える価格である。


 そして、換金した帰りに事務用品専門店によって同型の業務用ロッカーを購入し、所持品欄にそれをぶちこむと素知らぬ顔で更衣室に戻り、新しいロッカーに取り替えたという訳だ。

 ロッカーを使っていたのが私だけだったのが幸いした。


 あー……そういえば、神楽屋時代の蓄えと1000年にわたる魔物狩りで、私の所持品欄には金貨が50万枚ほどあるのだが。

 日本円でえーと……500億円……むしろ首でも困らなかった……



 翌日。

 私はちゃんと忍者屋敷に出勤して来ていた。

 やはり元気な内は働かないと腐っちゃいますからね。

 そこら辺は私も堅実確実が大好きな日本人の一員という訳ですよ。


 それと、私はチートの影響でかなり美形になっているはずだが、以前のフルメイク=現在のすっぴん、位の違いなので、あまりそこら辺を気にしないおっちゃん達なら日々すっぴんでいれば多分大丈夫だろう。


「…武藤陣内殿とお見受けする」

「忍びか…。さては越後屋に雇われたか。いかにも拙者が武藤陣内じゃ」

「潔いことだ。用件も分かっているようだな…その命、頂戴する」

「簡単にくれてやる訳にはいかんな!」


 いつもの……でも1000年ぶりの懐かしいやりとり。


 抜き打ちに放った浪人(やくしゃさん)の刀が私の短刀を迎撃する。

 竹光同士の激突だから、本来は迫力のある音なんてする訳無いのだが。


 ガキィィィィィィッッン!!


 響いたのは耳をつんざくような金属音。

 事前に私が付与をかけまくって金属武器並の硬度に変えておいたのだ。

 突然響いた、あり得ない音に動揺する浪人さん(共演者)

(大丈夫、このまま続けましょう)

 つばぜり合いの最中に囁かれた私の言葉に、演技中と言う事を思い出し、芝居を続ける浪人さん。

 ごめんね-、びっくりさせて。

 一度お客さんの前で派手で見栄えのする殺陣を演じてみたかったんだ。

 ギイン、と音を立てて刀を弾き返し、距離を取る。

 そして再び浪人さんに向かってダッシュ、切り結ぶ直前――


 タンッ!タタン!


 私はセットの薄い壁を三角蹴りの要領で駆け上がり、空中二回転半ひねりを加えて浪人さんの背後に着地。


「ふ、どこを見ている、ここだ!」


 わざとこちらの位置を知らせるべく叫び、相手がこちらを認識したのを確認して三度突撃。

 そして今度こそ思い上がったクノイチは一瞬の油断を突かれて浪人さんに返り討ちに遭うのだった。


     

         ※

 


「いやー、神楽ちゃんのアドリブには吃驚したよ」


 忍者ショーが終わって、共用休憩室でみんなでお茶をしていると、やはり話題はさっきのアクロバットに集中した。


「ほんとほんと、いつの間にあんな事出来るようになったのさ」

「ははは……いやぁ……能ある鷹は……ってヤツですよ」


 うーむ、調子に乗ってやり過ぎたかな。


「それに今日は竹光も変だったよな……後で調べてみても普通の竹光だし……」


 効果時間は30分ほどにしておきましたからね。

 でも、これっきりかな。あんまり続けるとぼろが出そうだし。

 そんなことを考えながらパック緑茶を啜っていると

 ガチャ、と扉を開けてスタッフの一人が入ってきた。


「おーい、神楽さん、あんたにお客さん」


 客?私に?


「ああ、初めまして。私は東方芸能の宗方、と申します……単刀直入に言います、スタントマンとして映画に出てみませんか?」


スタッフの後ろから登場したスーツの男の人は私に名刺を渡しながらそう言った。


         ※


 3ヶ月後。

 私は東方撮影所の撮影現場に来ていた。

 忍者ショーが休止となる冬期間なら、と言う条件で私はスタントマンの話を受けたのだ。

 あまり目立つのはどうかと思ったのだが……


『必殺仕上げ人~主水復活』


 という映画タイトルを聞かされては出ざるを得ないというものではないか!

 というかむしろ私のファリーアスで得た力はこの時の為にあったと言っても過言ではあるまい!


「や、聞いたよ。お炎さんのスタントを受けてくれるんだって?」


 一人セットの隅で感慨にふけっていた私に声をかけたのは御堂敬一郎。

 主役の一人、女形で実は仕上げ人の恋次郎、という役を演じる若い俳優さんだ。

 いわゆる細マッチョ系イケメンで時代劇界の色事師(ラヴハンター)等と揶揄されている人だ。

 ち、どうせなら富司田誠様に声をかけられたかった。

 富司田誠……中島主水様なら1000年物の○○(ぴー)を捧げても悔いは無いのに。

 え、下品……?

 すみません、1000年物の超熟女なので、外見はともかく中身はかなりすれてます。


「ええ、私などどれほどのことも出来ませんが、せっかく監督さんが誘ってくださいましたので」


「いやあ、君なら出来るさ、聞いたよ、プロの体操選手顔負けの動きだったそうじゃない」

「いえ、そんなことは……?」


 適当に話を受け流していた私は、自分の感覚に何か引っかかるのを感じた。

 ……ここはファリーアスとは違う。魔獣も出なければ暗殺者も居ない。

 なら、何が……


 ……上かっ!!


 そこに設置されていた巨大な照明が今にも落下してくる所だったのだ。

 このままでは御堂敬一郎に直撃してしまう。

 コイツ自体はどうなろうとあまり関心は無いが映画の完成に影響する。

 私は躊躇なく御堂を押し倒し体の下に庇った……。


         ※


「まったく……無茶しないでくれよ」


 私は市内の総合病院のベッドで寝たまま御堂(おきゃくさん)を迎えていた。

 御堂には傷一つ負わせなかったし、もちろん私もあの程度では怪我などするはずもない。

 しかし、いくら大丈夫だと言っても撮影所のみんなは信じてくれず、とりあえず一週間の検査入院をすることになったのだ。

 一週間も映画の完成が遅れるとか冗談じゃないと思ったが、その間は別のシーンを撮っているのであまり時間は変わらないそうだ。

 一安心。


 しかしあれから御堂はほぼ毎日見舞いに来るようになった。

 映画はともかく、週刊誌などで噂の恋人……安藤愛菜は放って置いて良いのか。

 ちょっと気になってそこら辺を聞いてみると、


「ん?ああ、あれはねぇ、向こうの事務所から×が出てね……今、噂の恋人は安藤愛菜じゃ無かった!実は別に恋人が!って風に持って行きたいんだけど……」

「……けど?」

「紫乃ちゃん、偽装恋人になってくれない?」

「……あのな」

「この通りっ!写真撮られた時の安藤愛菜の格好を紫乃ちゃんにしてもらって、ホテルから出てくる所を別の週刊誌に撮らせれば向こうの事務所も気が済むんだ。アレは愛菜じゃないって言い逃れが出来るからね」

「いや、だから、な?」

「頼むよ~このままだと俺、干されちゃうんだ……何でもお礼するからさ、サインとか」

「おまえのサインを貰っても嬉しくない」

「え?じゃあ、例えば?」

「富司田誠様とか松田健様とか里海浩太朗様とか松良太郎様とか千葉真次様とか」

「……渋い趣味してるね紫乃ちゃん……ええい、分かった!全員貰ってくるからっ!」

「……引き受けよう」


 にやり、と共犯者の笑みを浮かべて握手をする御堂と私。

 しかし、私はこの時、御堂の本当の実力を知らなかったのだ。


         ※


「……どうしてこうなった」


 朝の光が差すホテルのベッドには全裸の男女。

 聞こえてくるのは清らかな小鳥の鳴き声。

 ええ、そうですね、朝ちゅんですね。


「偽装で二人でホテルに入って……2時間の時間つぶしにお酒を頼んで……」


 で、二人で話している内に、結婚まではしなくても子供の一人位居ても良いかなぁ、と言う気分になってきて……ネイルが死んでから恋人無しだったせいで人肌恋しかったというか。


「うーむ 御堂敬一郎、あなどれん。」

「……何一人で悶えてるのさ?もう1回戦行く?」

「行かん! ほら、週刊誌に写真を撮らせるんでしょ? 昨夜のことは私の不覚……水に流すからっ……さっさと撮らせて帰るよ!」

「あ、アレ嘘」

「あ?」

「どうしても紫乃ちゃんと仲良くなりたくてさ、紫乃ちゃんみたいなタイプは泣き落とししかない! と思って」

「ほほう……」

「あ、あれ? 紫乃ちゃん怒った?」

「いや、怒ってないよ、そんなには(・・・・・)

「か、顔が怖いよ? あ、なに、どうするの?どこへつれて……」

「いや?ちょっと廊下に出るだけよ?ただ……そこから動かないのは貴方の勝手よね?」


 私は御堂をホテルの廊下に裸のまま押しつけるとボールペン片手に『影縛り・改』を発動した……


         ※


 さらに約1年後。

 映画が完成してからほとんど寄りついてなかった撮影所に久しぶりに私は顔を出した。

その両手に赤ん坊を抱いて(・・・・・・・)


「し、紫乃ちゃん……そ、その、子は」


 顔面蒼白となる御堂。

 脂汗なんかも流している。


「ああ久しぶりね御堂さん……いえ、1回位は顔を見せた方が良いかなと思ってね」

「じゃ、やっぱりその子は……」

「やっぱりも何もああいう事(・・・・・)をしたのは後にも先にも貴方だけですから」

「そ、そうか……うん、分かってる!責任は取るよ!もちろん認知……」

「必要ありません」

「し、て……え?」

「ですから認知して貰わなくて結構です」

「で、でも一人で育てるのは大変でしょ? あ、養育費だけ送れって……」

「それも要りません」

「……え?」


 訳が分からない、と言うような表情の御堂。


「あのね、分かってないかもしれないけど、その子は僕の子でもあるんでしょ?それをみすみすお金で苦労させるような事をさせたくないんだ」


 ああ、この人は女にだらしないだけで、基本的には善人なんだな。

 なら、まあこれで許してあげよう。


「……お金のことは心配ありません。多分貴方より資産はありますよ?」


 ハンドバッグから通帳を出して記帳してあるページを見せてやる。

 これには事前に50億円分ほど金貨を売って入金してあるのだ。


「…………いちじゅうひゃくせん………ご、じゅうおくえん? し、紫乃ちゃん、君は一体……」


 かくん、と落ちる御堂の顎。


「まあ、そういう事ですのでお気になさらず。ああ、たまになら子供を見に来てもかまいませんが、父親だとは名乗らないでくださいね?」


 踵を返す私達を呆然と見送る御堂。


「こんな事位で茫然自失となるなんてだらしないパパですね~十蔵ちゃん」


 実は御堂に三行半を突きつけたのは、今更意趣返しがしたかった訳では無く……

 この子、十蔵の秘密を守る為に、人から距離を置きたかったのだ。

 その為に田舎の山の中に新しい居宅を立てて引っ越したりもした。

 ……その秘密とは。


「『万象看破』」


 私は息子――十蔵に向かってスキルを使ってみた。


――――――――――――――――――――――――――――――


 氏名 神楽十蔵 0歳 男性

 総合レベル 1

  クラス 無し

 HP     9

 MP 10000


 ステータス基本値(実効値)

   STR 10(10)

   VIT 09(09)    

   DEX 15(15)

   SPD 11(11)

   INT 13(13)

   MID 13(13)

 称号

  真なるマナの申し子

 固有スキル

  魔力自動回復

 属性補正

  全属性+5

 祝福

  母の愛

 才能

  未定 

――――――――――――――――――――――――――――――


この子にもゲームステータスが受け継がれていた事だった。



シノさんがまだ読みたいっと言って下さる方に、せめてものお礼であります。

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