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偽クノイチ異界譚  作者: 蒼枝
偽クノイチ、異界の日常
23/34

体験入学 序

体験入学編の導入部です。

なのでいつもの半分位の量しかありません。

ご容赦を。

「はいっ!それではみんなの成長ぶりを発表して下さい」

 武家屋敷、神楽邸の居間でカグラ一家五人が集まっていた。

 子供達のレベルアップ作戦が終了した翌日の事、みんなの成長ぶりを確認する為に報告会を行うことにしたのだ。

「んー、じゃ俺から」


 ん、トップバッターはヴァト君ね。


「レベルは12、スキルスロットは一つ増えて2個。覚えたスキルは――

 『調度品取り扱い・初級』

 『邸宅管理・初級』(施錠ロック全施錠オールロック解錠アンロック

かな。戦闘系のスキルを覚えたかったけどなぁ」


「何を仰る。神楽家の筆頭執事として必要なスキルを着実に覚えていっているではないですか。さすがヴァト君だね」

「そ、そうか?へへ」


実際、『調度品取り扱い』はダンジョンでお宝発見時に役立つような気がするし、『邸宅管理』のロック・アンロック系統のスキルも宝箱を開けるのに役立つだろう。

 ……なんか執事と言うより盗賊系統のスキルが多いな。

 まあ、宝箱を開けられるのが私以外にいるというのは万が一の時の為にもよろしい。


「じゃあ、次は私~」


2番手はローリナね。


「レベルは12、スキルスロットは一つ増えて2個……までは同じですね。覚えたスキルは――

 『調教術・初級』

 『鞭術・二連撃』

の二つです。えへへ、『調教術・初級』で仲間にすると、ダンジョンとか動物がいない場所でも小動物使役サモンスモールアニマルが使えるんですよ~」


「なるほど、小動物使役サモンスモールアニマルは元々その付近に生息している動物しか呼び出せないのか……その欠点を事前に仲間にしておくことで解消できると」


 『使役』から『召喚』にパワーアップしたってことかな。


「それに『鞭術・二連撃』もいいね。MPが豊富な分、普段から通常攻撃の代わりに使っていけそう」

「でしょ~?」


 高位調教師って前衛職向きなのかな……実は。


「最後は……私ね」

 

 メイディンがギルドカードのスキル欄を開く。


「レベル12、スロット2個までは同じ。習得スキルは緑の恵み(プラント・ヒール)幻樹の槍(ブランチジャベリン)……単体回復魔法と単体攻撃魔法です……どちらも初級スキルとしては効果は高いけど、植物のあるところでしか使えないのが難」

「ふんふん、使いどころを考えれば強力そうね」


 これで一通り子供達の成長ぶりは確認できたわね。

 あとは……


「じゃあ、次は私の番かな」


 私がそう言うと、みんな吃驚したような顔をしている。


「え……シノさん、今回の依頼ではレベルアップしてないだろ?」

「うん。レベルアップじゃ無くて、条件によって固有スキルが増えたんだ」

「ええ!? あれ以上増えたの?」

「うん……えーと、こんなやつ」


 ちゃぶ台の上にカード開いて置く。

 そのカードの固有スキル欄に新たに加わった一文。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――

  固有スキル

   キャラクターチェンジ

   マナ解放

   マナ譲渡

   流派開眼

―――――――――――――――――――――――――――――――――――


「え? 流派開眼って何!?」

「聞いたことありませんね~」

「……うん」

「……シノ様は開眼も何も……すでにクノイチ、というクラスを立ち上げてますよね?」


 ……やはりみんな聞いたことが無いスキルみたいだ。

 戦オンのバージョンアップによって実装されたスキルだから、こちらの世界には元々無いのだろう。


「うーん、今まで習得したスキルを組み合わせたり、成長させたりして、新しいスキルを作る技能らしいんだけどね」

「……そりゃすげぇ」

「さすがシノ様です」

「うん、だからスキルの使い方を含めてちょっとお庭のダンジョンで実験してこようと思ってね……みんなにはその間、とりあえず一週間位お休みあげるから好きに過ごしてて」

「え、休み?」

「そ、ボーナスとしてヴァト君達には銀貨二十枚づつ、ネイルには三十枚渡すから、遊びに出かけるなり買い物するなりしておいで~」

「おお、シノさん太っ腹!」

「「お買い物~♪」」


 思わぬボーナスとお休みに浮かれる三人。

 それに比べてネイルは反応が少し暗いような?


「……シノ様、私もご一緒してはいけませんか?」

「何言っているの~貴女ネイルこそ私と出会ってからずっと働きづめでしょ?たまには息抜きしなさいね?」

「でも、またグレーターデーモンが出たりしたら……」

「今度はダンジョンマスターの指輪があるから大丈夫よ?それ以外なら一人でも問題ないしね」

「……はい」

 

 ……あら?何で悲しそうな表情を……

 うーん、どうしたんだろう。


 ――ネイルSIDE――


 さすがはご主人様――シノ様です。

 また新たな力を得られたようです。

 ヴァト達もどんどんと力を付けて……今回何の成長も無かったのは私だけでした。

 きっとそのせいです。シノ様に同行を断られたのも。

 これ以上成長の見込みが無い、と思われたのかもしれません……

 ……このお休み、あるいは良い機会かもしれませんね。

 よりシノ様のお役に立てるよう修行の機会を頂いたと思えば……


「すみませーん、カグラさんのお宅ですか?」


 玄関にお客様が来たようです。

 引き戸を開けて出てみれば紺の制服を着た配達請負業者の姿。


「はい、こちらがカグラ・シノ様のお屋敷で間違いありませんが」

「ああ、よかった……まともな住人の方がいたんですね……と、失礼、お届け物です」

「ご苦労様です」


 どうやら手紙の配達だったようです。 


「何の手紙で……『神楽家従者御一同様』? シノ様でなく私達宛ですか……?」


 疑問に思った私はその封筒の表面を確認してみました。

 すると、その封筒の表には『これであなたも一流従者!執事、メイド専門学校体験入学のお知らせ』と書かれていいるではありませんか。


 …………………これです。

 何も戦闘だけがお仕えする道では無いのです。

 というよりもメイドたる者、その本分はお屋敷の管理や主人のお世話ではないですか。

 それなのに私が磨いてきたのは戦闘用のメイド技能ばかり……

 これこそ天の配剤と申せましょう!

 体験入学とはいえ、本来のメイドとしての役割を学ぶには、やはり専門の学校に勝るものは無いでしょう。

 

 シノ様!ネイルは今こそ真のメイドとなって帰ってきます!




 ……もし、今のネイルを他人が見たら、その背後に燃えさかる炎、もしくはうち寄せる日本海の荒波が見えたに違いなかった。    







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