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偽クノイチ異界譚  作者: 蒼枝
偽クノイチ、ファンタジー世界へ
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森の中

 「む…うぅん」

 草いきれの臭いや土の感触に私は意識を取り戻した。

 「…なに?」

 視界一面に広がるのは木。そして草。広い空。

 「え?」

 いまいち状況が理解できない。

 私はさっきまで忍者屋敷の中で戦国オンラインを…

 なのになんで屋外に。しかも森の中に倒れているのだ?

 場所自体は田舎だからちょっと山には入ればこんな所はいくらでもあるけど…

 「忍者服のままで外出はしないわよね~いくら私でも」

 そう、服装はさっきの殺陣イベントの時のまま。鉢金と頭巾を外した忍者服のままだ。

 「さらわれた、とか?でも拘束もしないで外に放り出すというのも変だよねぇ…あ!スマートフォン!」

 私は重大なことに気が付いた。さっきまで持っていたスマートフォンが、無い。

 「うぎゃあ、個人情報の塊だよ?しかも戦オンのアカウント盗られたら目も当てられない」

 さっさと村に戻ってスマフォの停止手続きしないと…『ぴろりろりん』

 「え」

 聞き覚えのある音。メールの着信音だ。

 「え、だってスマフォ自体が無いのに「メール」が何で」

 と言いかけた時、私の目前に浮かんだのは…メール画面。

 まごうこと無き私が持っているスマートフォンの半透明な「画面だけ」が空中に浮かんでいた。

 「な…」

 私が絶句しているとその画面の中の新着メールが勝手に開く。

 『拝啓 神楽様。突然のことでさぞ驚かれているでしょうが、ここはあなたのいた地球、日本ではありません。ファリーアスと呼ばれる、あなたから見れば「異界」です。』

 「メールが透明で勝手に!しかも何その中2設定!」

 『そんなこと言われても現実なので中2設定とか言っても仕方ないのです』

 「メールがリアルタイムで返信!?むしろチャット!?」

 私もいろいろ混乱しているんです。

 『まずはファリーアス世界の管理者たるわたくしからお詫びを。今回の事故は全くの偶然なのですが遠因はこちらの世界にあるので…』

 「…続けて?」

 とりあえずこの空中ウィンドウみたいな技術はこんな森の中でできるコトじゃないはずだ。何か異常な事態であるということは分かる。であれば、まずは情報を得なければ。

 『私たちの世界ファリーアスは元々あなた方の世界とごく近い位相に存在していたのですが、あなた方が科学技術を発展させたように、私たちの世界では魔導技術が発展したのです。』

 「ふんふん」

 『…ですが人間達や魔物が使う「魔法」や「魔導」が少しずつ世界の「マナ」を消費して…崩壊の危機に陥っていたのです』

 「マナ?」

 『魔力や魔法の元となる、世界にあまねく存在するエネルギーです。世界が世界として現実に存在する為の力、といっても良いかもしれません』

 「それが無くなるってコトはどうなるの?」

 『存在が無くなります。ファリーアスという世界は「元々無かった」ことになるのです』

 「…まさか、それをなんとかしてくれってこと?テンプレ召喚め…」

 『いえ、それはすでに解決しました』

 「はん!?」

 解決したんなら帰して下さい。てか、今までの説明は何?

 『正確に言えば神楽さんがこちらの世界にいることで絶賛解決中です』

 なおさら訳分からん。

 『ごく近い位相に二つの世界はあると言いましたが、あまりに近すぎて…こちらのファリーアス世界は磁石に吸い寄せられるようにマナが溢れるそちらの地球に引き寄せられていったのです』

 「マナなんてファンタジーな力、ウチの地球にはなかったと思うけど」

 『そちらは世界構造自体が魔法が発現しない作りになっていますから、マナがあっても使い道が無く、時間とともにどんどん増えていったのです。こちらの世界とは別の意味で世界に悪影響を与えかねないほどに』

 「それで足りないそちらと、だだ余りの地球と…世界同士をくっつけてマナをどうにかしようって?」

 『世界同士の引力にまかせて、ただ接触するのを放っておいたら救世どころか世界崩壊です…なので私とそちらの世界の管理者はなんとかお互いの世界のごく一部が接触した時点で固定し、少しずつマナがこちらに流れるようにしたのです、が』

 「が?」

 いやな予感しかしない。

 『…その接触地点にピンポイントに神楽さんがいて…神楽さんは地球からファリーアスへのマナの通り道としてこちらの世界に固定されてしまったのです』

 「なんじゃそりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 『す、すみませんすみません…』

 「こ、固定されたって…帰れないの?」

 『現時点ではマナの流れ込んでくる勢いが強すぎて…1000年ほどたてばなんとかお帰しできると思いますが』

 「塵も残ってないよっ!1000年!?」

 『あ、流れ込んでくるマナの影響でほぼ不老なので、1000年どころか10000年でも問題ないです」

 「……」

 『あっ、それにほら、接触した時使っていたデータデバイス…「すまふぉ」の「戦オン」のデータもなるべく反映しておきましたから!こちらの世界でも生活するに困らないと思うんです!』

 「はい?戦オンを反映?」

 『うん、名前も一緒だし容姿も近かったし、本人との関連づけが楽だったからサービスしときました」

 「いや、しときましたって…まあ、生活に困らないなら良いか…それこそなんて中2設定」

 『ずいぶんあっさり納得されますね』

 「うーん、向こうにはもう家族もいないしね。帰れないなら帰れないで前向きにこれからのことを」「きゃああああああああっ!!」

 説明の途中で突如森に響き渡る女性の悲鳴。

 うん、中2設定の上にテンプレですね…

 「これ、助けに行った方が良いよね…?」

 『私はあくまで管理者ですので、どうこうしろとは言えません。が、能力値的には楽勝レベルかと』

 「うう…わかったわよ、行きますよ。寝覚め悪い思いするのもヤだし…」

 『ちなみに「技能」もそのまま使えますから…がんばって下さいね…私はこれ以上干渉できないのでこれからはあまりご連絡できなくなると思いますが』

 「えっ!?ちょ…」

 それを最後にプツン…とメール画面は閉じてしまった。無責任なやつだ。

 「もう…技能スキルが使えるって行ってたな…「技能変更」とでも言えば…おっと」

 目の前にスマフォの画面が再び現れる。ただし今度は「戦オン」の技能編集画面だ。

 「とりあえず雑魚狩りセットかな…」

 私が事前に設定しておいた技能セットから「雑魚狩りセット」をタッチ。すると…

 「おお、体が軽い。移動補助「疾風」の効果かな」


 疾風、健脚、回避術極意、会心の一撃、三連撃、不意打ち、火遁の術、反撃術極意、隠れ身、二刀流


 がセットされた事が頭の中に情報として入ってくる。

 さて、とりあえずいろいろ悩むのは後にしてイベントクリアと行きますか。


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