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偽クノイチ異界譚  作者: 蒼枝
偽クノイチ、ファンタジー世界へ
16/34

お庭のダンジョン(4)

だいたい5000字位で投稿していたらとうとう(4)まで来てしまった。

今回は戦闘メイン?

百合萌え期待している方はすみません。

次位でまとめたいですがどうなるか…

   

          ※

          

 ――地下二階――

 

 階下は一見して地下一階と変わらないように見えたが、ネイルが産毛を逆立てて注意を促した。


「シノ様っ…います、ここっ…今までより生き物の気配が濃い…」


 その忠告の通り、地下二階は今までとは打って変わって魔獣が大量に出現する階だった。

 迷宮の構造こそほぼ一本道で単純であったが、小部屋に入る度に地下一階の最後にいた人喰長虫マンイーターワームや、森に棲息しているはずのブレードマンティスと遭遇する始末。

 ただ、苦戦するようなレベルの高い魔獣が混じっていなかったのは幸いだった。


「ち、雑魚とはいえここまで沸かれると鬱陶しいな…」

「……」

「どうしたの?ネイル……手を見つめちゃったりして」

「いえ、ブレードマンティスを見て感慨にふけっておりました。あの時はシノ様にお膳立てをしてもらってやっと倒していたのに…今では一対一で倒せるようになったんだなと」

「あー…ネイルの急速レベルアップ作戦の時ね」

「なんだそりゃ」


 ダンさんが興味を引かれたように聞いてきた。


「私のクラスチェンジの為に、シノ様が当時レベル1だった私を伴ってホーンドウルフ17体、ブレードマンティス44体、デスマンティス1体を倒されたのです」

「……それはまた無茶をしたものですね」


 ディーンのその言葉には若干呆れたようなニュアンスがにじむ。


「あの時はびっくりしたねぇ……『魔物の餌』があれほど効くとは私も予想外だった。レア種のデスマンティスまで出てきたしね……と、ここが地下二階のゴールかな?」


 九つ目の小部屋を掃討して通路を進むと、そこは今までより大きな広間となっていた。

 

「だろうなぁ……やっぱり楽に通しちゃくれねぇよな……はぁ」


 ダンさんのため息は、突如広間の中央部付近の床に魔法陣が出現したからであった。

 その魔法陣は明滅を繰り返し、その度に広間に魔獣が召喚されていく。

 最終的には広間ほぼいっぱいに魔獣の群れが蠢く地獄絵図となった。


「ブレードマンティスの群れに人喰長虫マンイーターワーム…止めはデスマンティスが4体かよ……笑うしかねぇなこりゃ」

「レア種……特殊進化個体と4体も戦えるとはな……召喚魔法陣様々だなっ!」


 ダンさんとディーンさんはそう言いながらも魔獣の群れに攻撃を開始する。


「私とディーンさんが盾になります!ネイルはファイヤーボール、MP切れは無視していいから撃ちまくって! ダンさんは突破してきた魔獣の処理を!」

「心得た! 『シールド』『挑発』……この聖剣イヴィル・スレイヤーを畏れぬのならかかってこいっ!」

「分かりました! ファイヤーボール! ファイヤーボール、ファイヤーボール、ファイヤーボール、ファイヤーボール!!」

「まかせとけ、『2連射』『狙撃』『必中』…行け!」


 私が以前のように『影縛り・改』で魔獣の壁を作り、回避しながらカウンター。

 ディーンさんが自分に防御魔法を掛けて『挑発』

 ネイルがファイヤーのおボールを乱射し、

 ダンさんがスキルで突破してきたものを潰す。


 幸いにもデスマンティスは群れの奥の方に居るので、他の魔獣が壁になってまだこちらに来る事が出来ない。

 その内に、当初40匹以上いたかに見えた魔獣達は確実に数を減らしていた。

 だが、それは裏を返せばデスマンティスとの距離も近くなるという事で。


 ヴォンッ!! ガキンッ!

  

「ぐっ!!」


 デスマンティスの一体がとうとうディーンさんの元までたどり着き、その凶刃を振り下ろしたのだ。

 ディーンさんはそれをかろうじて盾で受け流す。

 私はそれを見て『影縛り・改』を再び使った。

 さすがにデスマンティスともなるとその動きを止められたのはほんの数秒ほどだったが、その間にディーンさんが剣技『強撃』を叩き込み、ダンさんのクロスボウとネイルの『光弾』連射が止めを刺した。


「よしっ! 1体潰した!」

「油断するな!空いた隙間からまたデスマンティスが来た…!」


 ディーンさんの歓声にダンさんが注意を促す。

 残りのデスマンティス3体が、埒があかないと見たのか仲間のはずのブレードマンティスを切り倒しながら隙間を広げ強引に前に出てきたのだ。

 だが、これは逆に好機でもある。

 こいつらは私が直接相手を出来ればそう手の掛かる相手ではないからだ。


「ディーンさん、3分……いえ、1分持たせて!」


 私はスキルに防御無視の2連撃『斬鉄二連撃』を組み込むと『迎撃刀術』を使いながらデスマンティス3体の懐に飛び込んだ。


「シノさん!? 無茶だ!」


 そう言いながらもディーンさんは私に変わって一人でパーティの盾役をこなしている。


「一気に行くわよ~『斬鉄二連撃』! 『斬鉄二連撃』! 『斬鉄二連撃』! 『斬鉄二連撃』! 『斬鉄二連撃』! 『斬鉄二連撃』!!!!」


 斬鉄系のスキルは防御無視の強力な技能スキルだが、MP消費が高く、本来はこんなにむやみやたらと連射する……出来る技能スキルではない。

 地球からのマナを橋渡ししている課程で、擬似的に魔力無限となっている私のチート能力あってこそだ。


「止めぇ……斬鉄二連撃っ!!」


 私が7回目の斬鉄二連撃をデスマンティスに叩き込むと、4体いた最後のデスマンティスが地響きをあげて倒れ伏した。


  


 ――ヴァトラSIDE――

    

「やっぱり手伝った方がいいよな、うん」


 俺は誰にともなく言い訳するように声に出した。

 幸い、装備を整える金もある。

 シノさんがくれた忍犬の召喚符も持っている。

 

「……あいつらは、うん、昼寝してるな……一応金貨2枚置いていけばいいよな」


 俺はシノさんから預かった金貨のうち2枚をローリナとメイディンが寝ているベッドサイドに置いて宿を出た。

 金貨3枚あれば上等な革鎧や武器が買える。出物があれば安めの魔法の武器マジックウェポンだって買えるかもしれない。

 俺だってあんな錆びた短剣じゃなければ、一人でゴブリンの1体や2体倒せるんだ。

 そうすればシノさんの手伝いだってできて……よし、早速武具屋へいこう。

 それからダンジョンに潜って……ピンチの時に颯爽と助けたりしたら……かっこよくないか?俺。

 



――手伝いではなく足手まといになる可能性というものを失念していたヴァトラが革鎧と魔法の短剣を装備して魔法陣に乗ったのはシノ達が出発してから一時間後であった――

 

 ――ヴァトラSIDE――END――


 


 デスマンティスらを倒した後、私たちは召喚魔法陣が仕込まれていた床の一部を傷つけ、再び起動しないようにしたり、デスマンティスが落とした2個の魔石を回収したりしていたのだが、その際、ダンさんが何かに気付いたようだった。

 今も広間の右側の壁に張り付いて何かを調べている。


「これは…間違いないな、シークレットドアだ……ん、よし、開くぞ」


 ダンさんが調べていた壁の真下にあったわずかな出っ張りを押し込むと……すうっ…と壁に切れ目が走り、小部屋への出入り口が姿を見せた。

 その小部屋は10畳ほどの広さがあり、机と椅子が一つずつとキャビネットが四つ置いてあるだけの簡素な部屋だった。


「……ねぇ、これ……人骨?」


 私は椅子の付近に散らばっていた人骨らしき物を見つけてしまったのだ……よく見れば、変色しているが貴族っぽい服なんかも落ちている。

 いくらこちらの世界に来た時に耐性が付与されていたとしても、ちょっと引く……耐性があるからちょっとで済むのか。


「服装からして、例の土地の貴族だったのかもしれませんね……服の家紋と同じような物が廃屋にもあったように思います」

「本当? ディーンさん、良く覚えているね、すごい」


 私はあんまり物覚えには自信がないので素直にディーンさんを賞賛した。

 ディーンさんは頭をかきながら「いやぁ、貴族の端くれですから」などといって照れている。

 というか、ディーンさん貴族だったのか。確かに聖騎士とか貴族っぽいクラスだけど。


 室内を全員で調べてみると、キャビネットから巻物が9本、ヒールポーション(中)が5本見つかり、机の引き出しから日記が一冊、人骨の指から指輪が一個見つかった。

その内の巻物を見てダンさんが唸る。


「ほぉ、スキルスクロールか…こらまた微妙な物が」

「ん、なに? 使えないアイテムなの?」

「んー、使えないというかアイテムの使用制限が「レベル50以上」と、厳しすぎて需要がないんだ」

「へぇ、で、効果は?」

「自分の所持しているスキルをスクロール化して他人に渡せる……それを使えばクラスとか関係無しにスキルを覚える事が出来る」

「凄いじゃない!」

「……レベル50に達した奴なんて大抵、国の要職に付いているとか、どこぞの秘境に隠棲しているかだ……ましてや相応の努力も無しにスキルを得る事が出来るコレは、手に入れてもスキルを込めようって奴が滅多にいなくてな」


 スキル込める気満々です。ネイルに何かスキルあげようかな。


「なるほど……ちなみに売るとお幾らくらい?」

「白紙のスキルスクロールで銀貨50枚位か……スキルが入っていればスキル次第では化けるが」

 

 そのくらいなら後で交渉して譲って貰うにしてもイケそうだ。


「シノ様……これを」


 そんな事を考えていると、ネイルが見つけた日記を持ってきた。


「この内容を見ると、やはりこの遺体があの土地に住んでいた貴族だったようです……書いてあるのが古代語らしくて私には詳しい所まで読めませんが」


 私も日記の内容を見たが、いわゆる英語のようだった……いくつかの単語は分かるが、とてもじゃないが全部は読めない。

 と、ダンさんが古代語の読み書きが出来るというので簡単に訳して貰った。ダンさん惚れるぜ。

 ……その内容は次のようなものだった。

 

 この貴族……魔術師でもあるドーワナ男爵はあるきっかけから『龍穴』を発見するに至った。

 龍穴とは地中を走るマナの大きな流れ、『龍脈』の交差するポイントの事で、ここに一定の法則に基づいて建築物を建てると、そこはマナの一大集積地になる。

 ドーワナ男爵はそこにダンジョンを建てる事によって、その無尽蔵なマナを使った魔獣、魔物の自動召喚装置を作り上げたのだ。


「ま、この辺は男爵のオリジナルじゃねぇ……現存するダンジョンは大抵龍穴や龍脈の上に建っているしな」


 しかし、ドーワナ男爵は山中深い所にあった己のダンジョンと自身が暮らす港町サザンをそのマナの一部を使って常時つなげる方法を編み出した。

 魔法陣を介してサザンに転送された魔獣はある一定範囲より外に出る事は出来なかったが、それは今後、魔法陣をこっそりと街中に増やしていけばいい。

 やがて住民も領主も知らないうちに魔物の軍団が街中に出現する事になる……それを使って一気にこの街を掌握しようとしたのだ。


「が、事が為る前に男爵はあの隠し部屋の中で急死……心臓を患っていたみたいだからな、なんかの拍子で椅子に座ったままぽっくり逝ったのかもな……かくしてあの土地の魔法陣だけが起動状態で残された訳だ」

「はた迷惑な……しかしつながっていた魔法陣が地上一階のあれだけだったのは幸いだったな」


 あきれ顔のディーンさん。同感です。

 地下二階の広間が街中につながっていたらと思うとぞっとする。


「で、魔法陣のつながりを絶つ方法とかは書いてないの?」

「絶つ、というか……魔法陣を制御する魔法具が地下三階に隠してあるらしい」

「地下三階? 広間の奥に通路や階段なんて無かったよね?」

「ま、こういう場合は大抵……キャビネットが横にスライドしたりしてな?」


 ダンさんがそう言いながら何気なくキャビネットに力を掛けると――


 ゴウンっ!ゴゴゴゴゴゴ……


 あっけなく動いていくキャビネット……その跡にはさらに地下へ続く階段が。


「もうちょっとひねろうよ……」


 なぜか釈然としなかった……ゲーマーなめんな。




 ――ヴァトラSIDE――


 ダンジョンに入って遭遇した敵は、ゴブリン一匹だけだった。

 

「すげぇ……これ全部シノさん達がやったのか……」


 目の前に広がるゴブリン達の骸。

 その中から一匹だけ死んでなかったゴブリンがさっき斬りかかってきたのだが、全然問題無かった。

 革鎧はゴブリンの錆びた短剣を全く通さなかったし、安物とはいえ魔法の掛かった短剣はあっさりとゴブリンの肉を切り裂いた。


「よっし! 自信付いた! 先進むか!」


 奥に見える階段を下りていったんだろうな、きっと。


「だいたいダンジョンてのは奥に進むほど強い敵が出るってのは相場なんだよな……」


 思わずつぶやいた言葉に俺は舌打ちをした。

 情けねぇ。さっき自信付いたって言ったばかりじゃねぇか。俺。

 余計な事考えずにさっさと進もう。


 地下に降りると、そこは明らかに人の手が入った空間だった。

 滑らかに削られた石壁、一定の広さに整えられた通路。

 そこを結構歩いているんだが、全く何も出ない。

 通路だけは入り組んでいてまるで迷路みたいだが……

 もしかして道に迷って延々と同じ所を歩いているのか、と思った頃に唐突に下に降りる階段を見つけた。

 結局地下一階では魔獣は1体も見なかった……シノさん達が全部倒しちまったのか?

 やべえ、このままじゃ全くいい所無しで……無駄金使っただけになっちまう。

 

「急がないと、な」


 俺は一足飛びに地下二階へ続く階段を降りていった。


 ――ヴァトラSIDE――END――

 



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