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真・こことは違うどこかの日常  作者: カブト
過去(高校二年生編)
52/199

第六話 『そして、二人は巡り合う』 その6

 これだけは。

 できればこれだけは使いたくはなかった。


 カラスは自分が懐から手元に取り出したモノをしばらく見つめた後、そっと小さく溜息を吐きだした。


 今、手元にあるのは一見なんの変哲もないカードに見える代物。

 

 しかし、これは、彼の幼馴染を地獄へと導くとんでもない最終兵器なのだった。

 

 元々、カラスはこれを使うつもりはなかった。

 調子に乗っている幼馴染にある程度お灸を据えて、自分がしていることに対して少しでも反省している素振りが見えたら、できるだけのフォローを入れて速やかにこの場から姿を消すつもりでいたのだ。

 カラスは、幼馴染に『変形七三の刑』を実行した後、さらし首状態の幼馴染が少しでも反省してくれていることを期待してその視線を向けて見た。

 ところが・・

 肝心の幼馴染を見てみると、自分が行った暴虐を反省する様子など全くない。

 それどころか、恋人達をけしかけ利用してカラスに意趣返しをしようとまでしている。


 そう。

 幼馴染は元々こういう性格であった。

 長年一緒にいて、よ~くわかっていたはずなのに。

 今更ながらにカラスは自分の考えの甘さを反省する。

 いや、本当にいつものカラスならば、ここまで甘い考えを持って行動することはないのだ。

 むしろ『(たたり)』の仮面をかぶり、黒装束に身を包むことで闇夜のカラスになった彼は、冷徹極まりない『悪』の策士に変貌するのであるが、どうも今日はダメなのである。

 理由は彼自身よくわかっていた。

 彼が大事に大切に一途に想っている憧れの『人』



如月(きさらぎ) 玉藻(たまも)


 

 その『人』と今日会う約束をしていて、そのことが彼の心を狂わせていた。

 どうしても、彼女のことを考えると心が非情になりきれないのである。

 彼女が屈託なく笑っている姿や、朗らかで温かくて優しい声を思い出すだけで、彼の中の戦意とか闘志とか、あるいは彼の根底に存在している悪意や害意もしおしおと霧散してしまうのである。

 今日の昼間もそのことが原因で危うい目にあってしまったカラス。

 十分自覚しているし注意しようと思っていたはずなのだが、結局どうすることもできなかった。

 幸いにも危機一髪のところで頼りになる『友達』が駆けつけてくれたため大事には至らなかったが、しかし。


 頼りになる彼の『友達』は今、この場にはいない。


 自分の身を守れるのは、いつも通り、自分しかいないのだ。


 そのことを改めて思い返し心に刻み直したカラスは、覚悟を決めた表情を仮面の裏に作り出して顔をあげる。

 そして、その視線は少し離れたところに立つ三人の美少女達へ。

 彼の幼馴染、『龍乃宮(りゅうのみや) 剣児(けんじ)』の三人の恋人達。

 三人が三人とも可憐で美しく、一見荒事には全然向いていない、淑やかで優しげに見える彼女達。

 しかし、その大人しそうな外見の裏側に、とてつもない猛毒を隠し持っていることを、カラスは嫌というほど熟知していた。

 侮って手を抜いたりすれば、いとも簡単にその猛毒の餌食になってしまうだろう。

 特に、恋人の敵討ちをするためと、完全に本気になっている今の状態の彼女達が相手とならば、尚更手加減している余裕はないし、手段を選んでいる場合でもない。


 カラスはもう一度自分の手の中のカードに視線を向け覚悟を決めると、カードを握る手に力を込める。

 そして、対峙する三人の強敵へと再度視線を向け直そうとしたのだが、そのとき自分の視界に地面すれすれのところにある幼馴染の顔が入った。

 幼馴染の視線は自分の手の中にあるカードに注がれており、やがて、その瞳は驚愕に見開かれる。

 どうやらカードの正体に気がついたようだった。

 

 カラスは仮面の裏側でバツが悪そうな表情を浮かべると、聞こえないくらいの小さな声で、『ごめんね、剣児』と謝るのだった。

 そして、何かを吹っ切るように再び厳しい表情を作り出して、眼前に立塞がる三人の美少女達にその目を向ける。

 カラスがこれまで以上に強烈なプレッシャー放ってきたことを敏感に感じとった三人の美少女達は、素早く戦闘態勢をとって身構えた。

 深い影が支配する裏街の闇の中で、一瞬交錯する八つの視線。

 だが、『静』の時間はごくわずかで、すぐに『動』が時を刻み始める。

 武術の動きではない、しかし、実に滑らかな動作で一瞬後ろに身体を反転させたカラスは、その反動をそのまま利用して逆回転し、手にしたカードを美少女達へと投げつける。

 風を切り、唸りを上げて一直線に三人の美少女達へと飛んでいく無数のカード。


「に、逃げろ、フレイヤ、ジャンヌ、メイリン!!」


 破滅を呼ぶ凶器が、自分の大切な者達へ襲いかかっていく様子にたまらず悲鳴をあげる剣児。

 しかし、その叫びは少しばかり遅すぎた。


 カラスが投げたカードは、真っすぐに美少女達へと向かい、そして・・


 へにょりと、彼女達の手前で失速して落ちた。


「「「「えっ?」」」」


 飛来するカードを叩き落とそうと身構えていた美少女達。

 しかし、彼女達が迎撃行動を起こすよりもはるか手前で、カードは呆気なく失速し『ぺしょり』というなんとも間抜けな音を立てて地面に落ちた。

 その結末を見た三人の美少女達と、そして、遠くからそれを見ていた剣児は、ぽか~んと口を開けてしばし呆然と立ちつくす。


 地面に落ちたことが何かの策の布石で、罠かもしれない。


 そう思ってしばらく警戒しながらカードを見守っていた三人だったが、カードは静かにそこにあるだけで、何のアクションも起こさない。

 敵の意図するところが全くわからずほけ~っと立ち尽くす三人。

 ところが、そんな三人にお構いなく、カラスは次々とカードを投げ続ける。

 びゅんびゅんと唸りを上げて三人めがけて飛んでいくカードの雨嵐。

 しまった、こっちが本命だったかと、慌てて防御態勢を取ろうとする三人だったが、またもやカードは彼女達の目の前で失速。

 結局カードは百枚近く投げられたが、一枚として届くことはなく、すべて彼女達の周囲に落ちてばらまかれる結果となった。

 三人の美少女はしばらくの間、目の前の地面にばらまかれたカードと、そのカードを投げ付けたカラスとに交互に視線を向け続けていたが、カードはその場にそのままそこにあるだけ、肝心のカラスはおどけたように肩をすくめながら両腕を広げて見せるだけ。


 本当に何もない、投げつけられたのが何の変哲もないただのカードらしいと思いいたると、三人は顔をみるみるうちに紅潮させ怒りの炎をその瞳に宿らせる。


「ば、バカにしてるのね」


「あ、あたしらのこと舐めてるよな、てめぇ」


「こ、これでもプロの『害獣』ハンターなんですけどね。そうですか、私達なんて余裕ブッこいて倒せるってことですか」


 怒りでぶるぶると体を震わせた美少女達は、浮き出た血管が今にも切れそうなくらいに力を込めて、己の拳を固く固く握りしめると、ゆっくりとカラスのほうへと歩き始める。

 

「わ、私達を見くびるとどうなるか」


「存分に教えてやろうじゃねぇか」


「勿論、ただじゃないですけどね。私達をバカにした対価は高くつきますよ。こんなカード数枚で支払えるような・・」


 両手の拳を盛大にバキボキ言わせながらゆっくりとカラスへと近づいて行く三人。

 カラスとの距離が縮まり、あと少しで自分達の攻撃有効範囲に入るところまで迫ったところで、三人の司令塔的存在である陽光樹妖精(サンエルフ)族の少女フレイヤが、二人に戦闘開始の指示を送る。


「行くわよ、ジャンヌ、メイリン!! いつも通りメイリンの突撃をジャンヌが援護、防御回復は全て私に任せて二人は攻撃に専念して、いいわね!!」


「おうよ、あたしはいつでもおっけ~だ!!」


 自分の横から頼もしい声を上げる月光樹妖精(ルナエルフ)族の仲間に頷きを返したフレイヤは、切り込み役を任せたもう一人の仲間に戦闘開始の合図の声をかける。


「メイリン!! 始めて頂戴!!」


「・・」


 風狸(ふうり)族の少女が斬り込むと同時に、得意のフォーメーション攻撃を行わんと身構える二人。


 しかし。



 し~~ん。


 

 いつまで立っても肝心のメイリンが突撃を開始しようとしない。


「あ、あれ?」


「ちょっ、メ、メイリン?」


「・・」


 焦りながら風狸(ふうり)族の少女メイリンに声をかけようとしたフレイヤだったが、よく見ると自分の横には月光樹妖精(ルナエルフ)族のジャンヌしかいない。

 無言でそのジャンヌにもう一人がどこにいるのか問いかけてみるが、ジャンヌも『知らん知らん』と首を振ってみせ、二人はメイリンを探して慌てて周囲に視線を走らせる。

 すると、目の前で物凄くリラックスした様子で立っているカラスが、後ろ後ろと指さしていることに気がついた。

 フレイヤとジャンヌは一瞬顔を見合せたあと、即座に後ろを振り返る。   

 すると、二人の少し後方に、呆然とした様子で立ち尽くす黒髪の風狸(ふうり)族の少女の姿が。


「な、何やってるのよ、メイリン!?」


「をいをい、しっかりしてくれよ、メイリン。どうしたっていうんだよ!?」


 呆然と立ち尽くすメイリンに駆け寄った二人は、俯いたままなかなか顔を上げようとしないメイリンを心配して声をかける。

 すると、メイリンは二人にすっと何かを差し出すのだった。


「え、なに、これ?」


「ああ、さっきカラス野郎が投げつけてきたカードじゃねぇか。これがなんだよ」


「・・-ド・・じゃない」


「「へ? なに?」」


「カード・・じゃない・・です。・・それ・・写真」


「「はぁ? 写真?」」


 二人は怪訝な表情を浮かべながらも、メイリンから手渡されたいくつかのカードに視線を向ける。    

「これがいったいなんなのよ?」


「いったい何が映っているっていう・・」


 ブツブツ言いながらも、手渡されたカードを裏返したり、もとに戻したりして確認する二人。

 言われてみると確かにそれはカードではなく写真だったのだが、そこに映っているものがいったいなんであるかがわかった瞬間、二人の顔が驚愕に歪む。



「「な、なんじゃあ、こりゃあっ!?」」



 およそ少女らしからぬとてつもない野太い声で絶叫をあげる陽光樹妖精(サンエルフ)族の少女と月光樹妖精(ルナエルフ)族の少女。

 そして、しばらくの間、カード、いや写真を握りしめて震えていた二人だったが、やがてはっと我に返ると、慌てるようにして地面に這いつくばる。


「「まさか、まさかまさかまさか!?」」


 地面に散らばった写真を狂ったようにかき集める二人。

 そして、拾い集めた写真の一つ一つを確認したあと、絶望に満ちた絶叫をあげるのだった。


「これも、これも・・これもこれもこれもこれもこれもこれもこれもこれも、結局全部かあっ!?」


「ああああ、そ、そんな、信じていたのに、信じていたのにぃっ!!」


 怒り、悲しみ、憎しみ、恨み、あらゆる負の感情で己の身体を包み込んだ少女達の絶叫が、夜の裏街に響き渡る。

 そんな彼女達の姿を見ていた剣児は、ゆっくりと首を横に振ってみせながら、自分のすぐ側に立つ黒装束の怪『人』に憐れみの視線を向ける。


「何をしたのかは知らんが、おまえ、もう終わりだぞ。あいつらを見ろ、本気の本気の本気で怒り狂ってる」


 剣児の声に気がついた黒装束の怪『人』はゆっくりとその視線を地面に埋まっている剣児の顔のほうへと向ける。

 そして、剣児の言葉の意味がわからないと言わんばかりに小首をかしげて見せる。

 そんな怪『人』の危機感が全く感じられない様子を見ていた剣児は不快気に顔を歪めながら、尚も言葉を紡ぐ。


「おまえ、自分が何をしたかわかってないだろ? 自分で自分の死刑執行にサインしちまったんだぞ? 長年一緒にツルんでいるが、あれだけ怒り狂っているあいつらを見るのは俺だって初めてだ。あれはもう誰にも止められん。俺にも無理だ。自分がしでかしたことだ、しっかり自分で自分のケツを拭きやがれ」


 未だに小首を傾げ続けるカラスに盛大に嘲笑を浴びせかける剣児。

 そんな剣児の姿を不思議そうに見つめていたカラスであったが、やがて、自分に向かってくる三つの『人』影に気がついてそちらに視線を向け直す。


 ちょっとでも油断すれば全てを飲みこみかねない裏街の深い闇。

 その闇を焼き払うようにして、憤怒と憎悪の炎を撒き散らしながらカラスに近づいてくる三人の美しい女神達。

 味方であるはずの剣児ですら、恐怖を感じずにはいられない凄まじい負のオーラ。

 しかし、カラスはそれらを真っ向から受け止めて平然と立っている。

 いや、むしろ、両手を広げておどけるようにして肩を竦めて見せていたが、やがて、自分の目の前まで女神達がやってくるとおどけるのをやめて正面から向かい合う。


 再び交錯する八つの視線。


 やがてくるであろう地獄の饗宴に、身をすくませる剣児。

 仇敵がド派手に成敗される姿を想像するとわくわくするが、しかし、その狂乱の渦に巻き込まれたくはない。

 現在剣児は身動きが全く取れない状態。

 本当なら、できるだけ遠く離れた安全な場所から見物したかったのであるが、流石にこのざまではどうすることもできない。


(できれば俺を救出してからやりあってほしいんだけどなあ・・)


 心の中でそうぼやきながらも、三人の少女達の爆発を待ち切れないといった喜悦に歪んだ表情で見守り続ける剣児。

 しかし、彼の期待とは裏腹に、カラスのすぐ目の前まで到着しておきながら、彼女達は一向に怒気を爆発させる気配はない。


(あ、あれ?)


 流石の剣児も、自分の恋人達が発している気が、普通のものとは若干違うことに気がついて、小首を傾げる。

 側にいるだけでひりつくようなマグマのような怒気や殺気。

 それらは確かに彼女達から噴出してはいるものの、どう見ても黒装束の怪『人』のほうに向かってはいない。

 それらは彼女達三人の元に未だに残っていて、まるで、まとめて誰かにぶつけようとしているかのようにどんどんその場に溜まって大きくなりつつあった。


(え、ちょっ、どういうこと? カラスにぶつけるんじゃないの? そんで俺のことを助けてくれるんじゃないの?)

 

 三人の恋人達の心中を察することができず、困惑の表情を浮かべる剣児。

 そんな剣児の困惑ぶりを知ってか知らずか、しばしの間彼を置き去りにした状態で、無言で睨みあう両陣営。

 しかし、その静寂は打ち破られる。

 三人の美少女達の一人である黒髪の少女が口を開き、能面のような無表情で目の前のカラスに問いかける。


「これ、全部本物なんですか? 合成とかではなく?」


 三人は一斉に集めた写真をカラスに向ける。

 すると、黒髪の少女の質問に対してカラスはこっくりと頷きを返し、懐から一冊のノートを取り出して彼女達に見せる。


「このノートは?」


 訝しがる彼女達の前でノートを広げて見せたカラスは、写真とノートを照らし合わせながら、何やら三人に説明を始めるのだった。

 三人は、最初のほうこそ疑わしそうな表情を浮かべていたが、すぐに納得顔になってしきりと頷きを返し始める。


「これは・・ああ、あのときのことね。確か、姫子さん達に付き合うから、私達に先に帰っててくれっていったときだわ」


「このときもそうだぜ。他の旅団との付き合いがあるから、あたしらは遠慮しろって連れて行ってくれなかったよな」


「そういえば、これのときもそうですね。詩織お義母様がお勤めしていらっしゃる中央庁に呼び出されているからって、私達と別行動されたんですよね」


 こうして、写真の一枚一枚について、カラスから身ぶり手ぶりを交えながら懇切丁寧に説明を受ける三人。

 カラスと話しこんでいるうちに、彼女達の身体からマグマのような熱気を持って噴出していた怒気や殺気は徐々に熱を下げて行く。

 しかし、その代わりに彼女達を包む熱は更なる下降を始め、やがて、触れるだけで凍ってしまいそうな凄まじい冷気となって吹き荒れ始める。

 それとともに憤怒と憎悪に彩られた悪鬼の如き様相は彼女達の表情から消え去り、そして、それと入れ替わるようにして浮かび上がるのは大輪の花のような美しい笑顔。

 ただし、花のようなといってもそれは春の日差しの下に咲く穏やかで無害な花では断じてない。

 薄暗闇の中に妖しい光を放って咲く、見てるだけで悪寒を感じる猛毒の華。

 その毒の華を美しくも妖しく咲かせに咲かせた彼女達はやがて、カラスとの長い長い密談を終えた。

 そして、その後、ゆっくりと顔を地面に埋まる剣児のほうへと向ける。


「な、な、なに? なんなんだよ、おまえら? どうしちまったっていうんだよ!?」


 カラスに向けられている、あるいはこれから向けられると思っていた強烈な悪意、害意が、なぜか自分のほうに向けられていることに気がついた剣児。

 三人が放つ強烈なプレッシャーに気圧されながらもなんとか口を開き、彼女達の真意を問いただそうとする。

 剣児の問いかけに三人は一瞬顔を合わせたが、すぐに陽光樹妖精(サンエルフ)族の少女フレイヤが残り二人に視線で何かを確認。

 残りの二人はフレイヤの言わんとしていることを悟って、同時に頷きを返して了承、フレイヤは再び寒々しい笑顔を浮かび上がらせると、地面から突き出た剣児の前に座り込んだ。


「な、なんだよ?」


「剣児くん、ちょ~~っと、お聞きしたいことがあるんですけど、御伺いしてもよろしいかしら?」


「え? 聞きたいこと?」

 

 寒々しい笑顔から放たれたのはあまりにも柔らかく優しい声。



 しかし・・



 しかし、どういうわけか、それを聞いている剣児の耳には、ちっとも柔らかさも優しさも感じられない。

 どう聞いても穏やかな音程で、激しさのような感じは一切ないのにだ。

 だが、どう聞いても剣児の耳にはそうは聞こえない、むしろ地獄の閻魔の厳しい詰問のように聞こえてしまう。

 

 剣児の背中に嫌な汗が流れ始める。

 いや、背中だけではない、剣児の身体のありとあらゆる場所で、最大級の警戒信号が鳴り響き、ひっきりなしに大量の汗が流れ続ける。

 

 長年、危険な『害獣』と戦って来て磨き上げられた戦士としての本能が、剣児に大声で叫び続ける。




『逃げろ、剣児!! 今すぐ、逃げるんだ!! 全力で、死力を尽くして、あらゆる手段を使って少しでも遠くへ逃げろ、逃げるんだ!!』


 


 同感だった。

 できれば、今すぐにでも逃げ出したかった。

 卑怯者と罵られ、蔑まれてもいいから、この場から全力で逃げ出したかった。

 しかし、非常に残念なことに、今の彼にここから逃げる術はない。

 宿敵カラスの手により、身体のほぼすべてを地面の中に埋め込まれ、完全に拘束された状態の彼。

 自力での脱出は不可能。

 本当ならば、目の前にいる三人の恋人達の手で助け出してもらう予定だったのだが、どう観察してみても、彼女達に自分を助けようという意思は感じられない。

 当たり前だが、宿敵が自分を今すぐ解放するということもありえない。

 なんとか、なんとかして脱出できないだろうか。

 焦りもがきながら必死に脱出方法を考える剣児であったが、残っていたわずかな時間もすぐに露と消えた。

 地獄の門が開く。


「ねぇ、剣児くん?」


「は、はい」


「この写真はなんなのかしら?」


「え? 写真?」


 必要以上ににこやかな表情を浮かべて見せたフレイヤは、地面に埋まる剣児の顔の前に一枚の写真を突き出して見せる。

 最初、周囲が暗くてよく見えなかったせいで、写真に何が映っているかわからなかった剣児。

 目を細めたり開いたりを繰り返しているうちにだんだんピントがあってきて、そして、その写真に写っている物がはっきりしたとき、剣児の顔から一気に血の気が消失した。


「え、え、え~~~っとおぉ」


「なにかしらこれ? なんなのかしらね、これは、剣児くん」


「そ、そ、そのおぉ~~」


 写真には二人の男女、そして、一つの建物が写っている。

 照れたような、しかし、物凄く嬉しそうな表情を浮かべた一組の男女が、仲良く腕を組みながらある建物から出てきたところを写したものだ。

 何も知らない『人』がこの写真を見たのなら、別におかしいところは何もない。

 どこにでもいる仲のいいカップルの、ありふれた日常の写真。

 しかし。

 少なくともこの場にいる面々からすれば、あまりにも大問題な写真であった。

 

「ねぇ、剣児くん」


「は、は、はい」


「ここに映っているのって・・剣児くんに見えるわね?」


「そ、そうですね、俺にそっくりですね」


「へ~~、『そっくり』? 『そっくり』な別の『人』ってことかしら?」


「いや、そうじゃないかなぁと思うようなそうでないような気がするような気もなきにしもあらずんばずんばすびどぅば・・」


 わけのわかならい物凄く苦しい、いや、苦しすぎる言い訳をする剣児を凄まじい白い視線で見つめていたフレイヤ達であったが、今度は月光樹妖精(ルナエルフ)族の少女が剣児の前に屈みこんでにっこりとほほ笑みかける。


「あのさ~、剣児。以前、剣児さ、『害獣』狩りで怪我したときに入院したことあったよな」


「あ、あ、ありましたっけ」


「そのときにさ、剣児専属の世話係ってことで新人の看護婦がついていたと思うんだけどなあ。剣児覚えてる?」


「わ、わ、忘れちゃったかなあ、あははは」


「あたしは、はっ・き・り・と、覚えているんだけど、この写真に写ってる女って、そのときの看護婦に『そっくり』なんだよなあ。どう思う?」


「ど、ど、どうかな、どういうことかな、どうなってるのかな。お、俺にはちょっ~~っとわっかんないかなあ」


 『なははは』と乾いた笑いをもらし、なんとか誤魔化せないものかと必死に視線を泳がせる剣児の姿を、ジャンヌ達はさらに白い視線で見つめ続ける。

 すると、今度は風狸(ふうり)族の少女が優しい、いや、優しすぎて返って恐ろしい笑顔を浮かばせながら剣児の前に屈みこみ、口の端をぴくぴくとふるわせて最後の問いかけを行う。


「そっか、わからないんですね。それじゃあ、わからないままでいいので、最後にお聞きしたいんですけど、剣児くん」


「な、な、なんでしょう?」


「このカップルの後ろに建物が立ってますよね。そうです、このピンク色の建物です。カップルはここから出てきたと思うんですけど」


「え、あ、そ、そうですね」


「ここのところ見ていただけますか? そうそう、この看板です。『愛の休憩所 やんちゃな子犬』って書いてありますよね。ここって、何をするための場所なんでしょうね? そして、カップルはここで何をしていたんでしょうね? 剣児くん、どう思います? どうみてもホテルのように見えるんですが、ホテルの前になにか別の言葉が入っている施設だったと思うんですよ。なんていうんでしたっけ? 『ら』ではじまって『ぶ』で終わるホテルだったと思うんですけど」


「あ~~、う~~」


 にっこりとほほ笑みながらも凄まじい眼光を放ち、『言い逃れできるものならしてみやがれコノヤロー!!』と言わんばかりに剣児を睨みつける三人の美少女達。

 その姿に完全に気圧され呑み込まれてしまいそうになりつつも、なんとかまだ言い逃れることができないか、うまい言い回しはないかと、彼女達から目を逸らしながら必死に頭をひねりまくる剣児。

 しばし、無言の時が流れ、静寂が裏街を支配する。

 だが、その静寂の時間は本当にわずかばかり。

 三人の美少女達は、目の前で悪あがきを続ける自分達の獲物にトドメの一撃を解き放つ。


「わかったわ。じゃあ、これについては後でゆっくり思い出してもらうことにするから、今はいいわ」


「ふ~~~、助かった。って、ちょっと待て。今『これについては』って言った?」


「言ったわよ。まだまだあるんだから、さくさくいきましょう。次は、この写真についてなんだけど、これって旅団第六秘書の新人さんよね?」


「ああ、この写真についても頼むぜ。これってさ、このまえ高校に来ていた教育実習の先生だよな?」


「まだまだ、ありますよ。これは、都市立中央病院の内科の先生ですよね? それで、この女性は傭兵旅団『山猫の爪』の専属『療術師』の方、それからそれから」


 出るわ出るわ。

 次々と目の前に並べられていく写真の内容を確認した剣児は、既に卒倒寸前。

 どれもこれも剣児と美しい女性達とのツーショット写真ばかりなうえに、撮られた場所は、どれもこれもいかがわしい場所ばかり。


「それにしても、これだけの写真の数があるというのに、全部別の方と写っていますね。一枚として被ってるものがないわ」


「あたしらの目を盗んでよくもまあ、これだけやってくれたもんだよなあ」


「凄いですねえ。これだけのことをしておいて、平然と私達と付き合っていられるその神経が凄いですねえ」


「あわ、あわわわわわ」


 最早言い訳しても何の意味もないと悟った剣児は、恐怖で顔を青ざめさせる。

 このままではマズイ、絶対にマズイ、何をされるかわかったものじゃない。

 剣児はなんとかこの拘束状態から逃れられないか、抜け出せないかと、懸命に身をよじり始める。

 

「ちっくしょ~、てっきり『戦術(タクティカル)英霊(ヒーロー)呪符(カード)』だと思ったのに、蓋を開けてみれば俺の浮気証拠写真だったなんて、そんなのありか!? だいたいどうやってあれだけの写真を集めやがったんだ、あいついったい何者だ!? それにそれにこの罠は一体どう仕掛けになっているんだ? どういう形で埋まっているのか知らんが、全く動けない。ちっくしょう、それもこれもあのカラス野郎が・・ん?」


 美少女達に聞こえないくらいの小さな声で毒づきながら必死に地面からの脱出を図ろうとする剣児。

 ああでもないこうでもないと体をひねり続けるが、やはりどうすることもできず半分諦めて体の力を抜いた剣児は、ふとあることに気がついた。

 脱出することに夢中になっていて気がつかなかったが、いつのまにか自分の目の前から美少女達がいなくなっている。


 どういうことかわからないが、今がチャンス!!      


 そう思った剣児はもう一度奮起すると、力を込めて地中からの脱出を試みようとした。


 だが。

 

 まさにそのとき、剣児の耳に少女達の楽しげな、これ以上ないくらいに楽しそうな声が聞こえてくる。


「え? いいの、これ使っても?」


「うっわ~、雑誌とかで見たことはあるけど、実物見るのはこれが初めてだ。熱そう」


「これなんてすごいですよ。え、これ中身本物なんですか? こんなに大量に入れるんだ。剣児くん、壊れちゃうんじゃないかなあ」


 くすくすくすと、実に楽しげな・・いや、愉しげな声が聞こえてくる。

 その響きに壮絶に嫌な予感を覚えた剣児は、声のするほうへと無理矢理首を回し、視線を向けてみる。

 するとそこには、彼の想像を絶するとんでもない光景が繰り広げられていた。


「な、な、なに、なにやってんだ、おまえ!?」

 

 盛大に悲鳴をあげる剣児の目の前。

 黒装束の怪『人』は、彼の恋人達にどこから持ってきたのかわからないが、怪しい・・いや、怪しすぎる品々を手渡していた。

 それは、やたらと黒くて太くて丈夫そうなムチや、いったいどこで使うのかわからないような巨大なロウソク。

 なんだか妙に使いこまれている荒縄や、あと、針こそついてないが、やたらとデカイ注射器のようなものまである。


「おいおいおいおいおい、ちょっと待て!! それをどうするつもりなんだよ!? 『嫌だなあ、旦那ったら、わかってるくせに』じゃねぇよ!! そんなのわかりたくねぇんだよ。ってか、おまえそんなとんでもないものを渡しているんじゃねぇよ!! それからおまえらも喜んで受け取ってるんじゃねぇ!!」


 冷や汗を大量に流しながら喚き散らす剣児の姿をしばらくじ~~っと見つめていた四人であったが、やがて、カラスは再び手を懐に突っ込むと、何かのチケットのようなものを二枚取り出した。

 そして、それを三人の目の前に持って行って指先でいったりきたりさせる。


「どちらか選べってこと?」


 フレイヤが代表して問いかけると、カラスはうんうんと頷いて見せる。

 三人は顔を見合せたあと、カラスが差し出したチケットに顔を近づけて書いてある内容を確認する。


「えっと、『秘密の社交場 被虐の秘宝館 一泊無料チケット』って書いてあるわね」


「待て待て待て、ちょっと待て、おま、それは叩いたり叩かれたするのが好きな奴専門の・・」


「こっちは、『禁断の世界をちょっとだけ覗き見してみたいあなたのためのソフトルーム』で、『禁断の世界を存分に楽しみたいあなたのためのハードルーム ※各種暴虐アイテムを取り揃えております』って書いてあるな」


「いらんいらん!! そんな趣味これっぽっちもないから!! カラス、てめぇ、早くそれをひっこめろこんにゃろ!!」


「迷う必要ないでしょ。ハードルームのチケットください」


「「だよね~~」」


「『だよね~』じゃねえわあああああああっ!!」


 極上の笑顔を浮かべて見せる三人の美少女に、恭しい態度でチケットを渡したカラスは、残った一枚を懐に直し、別のチケットを数枚取り出して三人に手渡す。


「え、くれるの?」


「なんだろこれ、やっぱりチケットみたいだけど」


「『三角木馬 レンタル無料券』、『逆さ吊り用チェーン一式、レンタル無料券』、『恥辱痴態撮影用器具一式 レンタル無料券』ですって」


「「「カラスさん、ありがと~~」」」


「ぎゃああああああっ!! バカバカバカッ!! おまえはバカかあああああっ!!」


 これから起こるであろう運命を正確に予感した剣児は、自分を見事に嵌めてくれた黒装束の怪『人』を盛大に罵倒するが、怪『人』は剣児のことを完全に無視。

 そんなカラスの様子に怒り狂う剣児は、更なる罵倒を浴びせようとするのだが、怪『人』は剣児を無視したまますぐ側の廃ビルの壁へと移動。

 そこの壁を何やらごそごそと探っていたかと思うと何かのスイッチを押す乾いた音が響き渡る。

 すると次の瞬間、突然剣児が埋まっている地面が振動し始め、やがて、地面がえぐれるようにして上へと噴き出したかと思うと、剣児の身体が宙へと投げ出される。


「うわわわわわっ!!」


 すぽんっという間抜けな音と共に空中に飛び出したあと、剣児の身体はそのまま失速して落下。

 やがて地面に到達し、しばらくごろごろと転がったあと、カラス達の目の前で止まったのだった。

 その様子を呆気に取られて見ていた三人の美少女達だったが、やがて、剣児の姿を見て一斉に頬を赤らめ、両手で顔を隠してしまうのだった。


「「「きゃ~~、剣児くんのえっち~~!!」」」


「いててててて、え? え! ええええええええっ!? な、なんじゃこりゃああああっ!?」


 美少女達の声にはっと我に返った剣児が自分の身体に視線を向けてみると、なんと、剣児の身体は素っ裸。

 いや、素っ裸だけならまだよかったのだ。

 なんと彼の身体は縛られていた。

 それも普通の縛られ方ではない。

 一見亀の甲羅の模様に見える、高度な、しかし、やたらエロい縛られ方をしていたのだった。


「ちょ、おま、これ!! はずせ、今すぐ外せ、はずせってんだ、コンチクショー!!」


 顔どころか、全身を羞恥で真っ赤にした剣児が盛大に喚き散らすが、カラスはやっぱり無視。

 いったん近くの暗がりの中に消えたかと思うと、そこから台車のようなものを引っ張り出す。

 そして、それをガラガラと押して剣児の側へと近寄ると、動けないでいる剣児の身体をよっこらしょと台車の上に載せるのだった。


「おまえ、俺をどうするつもりだ!? はっ、まさかこのまま表通りに連れて行く気じゃ!? やめろ、それだけはやめてくれええっ!!」


 脳裏に描かれる恐ろしい未来に、悲鳴をあげる剣児。

 しかし、やっぱりそれを無視したカラスは、指の隙間から嬉しそうに剣児の痴態を鑑賞している三人の美少女達を手招きする。


「ああ、ひょっとして、あとは私達に任せてくれるってこと?」


 フレイヤが再び代表で問いかけると、カラスはまたもやうんうんと頷いた。

 その答えを見た三人は肉食獣の笑みを浮かべて台車の上で縮みあがっている剣児を睨みつける。

 誰が見ても絶対にただですませるつもりは全くないとわかる壮絶な笑み。

 しかし、三人はカラスの視線に気がつくと、バツが悪そうな表情で顔を見合わせる。

 そして、カラスのほうに視線を向け直すと、一斉に真摯な表情を浮かべてぺこりと頭を下げてみせるのだった。

 

「何を言ってもいまさらなんだけど・・ご迷惑をおかけしてしまって本当に申し訳ありませんでした。私達がもっとしっかりしていれば彼の暴走を防げたというに」


「ごめんな。よく、確かめもせずに喧嘩吹っ掛けちまってさ、あんた結構いいやつだよな」


「今後このようなことがないように、責任をもって私達が彼のことはきっちり躾けます」


「「「『剣風刃雷』の名にかけて、この償いはいずれ必ずさせていただきます。重ね重ねご迷惑をおかけし申し訳ありませんでした」」」


 すると、カラスは『いいよいいよ、気にしないで』と言わんばかりに片手をひらひらとふって見せる。 

 そんなカラスに苦笑を浮かべて見せた三人は、もう一度ぺこりと頭を下げると、台車に乗せた剣児と共に、裏街を去って行った。


「ちょっと待て、こんにゃろ!! 俺は、俺は全然納得してねええええっ!! 絶対リベンジしてやるからな!! 覚えていろよ、くそガラス!!」


「黙りなさい、剣児くん。見苦しいですよ」


「そうだそうだ、そもそも、まずあたしらが納得してないっつ~の。これまでのこと全部吐いてもらうからな、覚悟しやがれ」


「みなさん、せっかくだから表通りを通ってからホテルのほうに行きましょう」


「「賛成」」


「いやあああっ!! それだけはいやあああっ!! ってか、誰かこの亀甲縛りほどいてええええええっ!!」


『ゲ~~ッゲッゲッゲッ』


 こうしてカラスの嘲笑が響き渡る中、裏街から暴虐の凶龍は姿を消した。

 『サードテンプル』の裏通りに、再び平穏な夜の時間が戻る。

 そう確信したカラスはそっと安堵の溜息を吐きだしてしばしの間美しい夜空を見上げる。

 空には闇夜を照らす美しい星達の姿。

 その姿をしばしの間黙って見つめていたカラスであったが、やがて、その視線を裏通りの闇の中へと向け直す。

 狩人との戦いは切り抜けたが、肝心の用事はすんではいない。

 待っている。

 彼の愛しい人が、この裏通りのどこかで待っているはずだった。

 カラスはぼろぼろのコートを翻すと、愛しい人が待つ場所へ向かうために走りだす。


 だが・・


「どこに行くつもりだ、『祟鴉(たたりがらす)』」


 聞き覚えのある声がカラスを呼びとめる。

 不快極まりない声、彼の心をいちいち逆撫でする嫌な声だった。

 急ブレーキをかけるようにして足を止めたカラスは、声のしたほうに視線を向けようとしたのだが、そのときになって彼は唐突に自分の大失敗を悟る。

 凶龍との戦いに集中しすぎてしまったのだ。

 その間に彼は・・


 完全に取り囲まれてしまっていた。


 十人や二十人ではない、五十人を超えるであろう圧倒的な大人数に取り囲まれてしまっていた。

  

「さあ、『祟鴉(たたりがらす)』、第二ラウンドを始めようか!!」



  

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