第四話 『燃えよ!! 緋の鳥』 その5
「助かった。今日だけはどうしても君の情報を買いたかったんだ」
そう言って安堵の吐息をもらす緋星の様子を面白そうに見つめていたAAAだったが、ふと何かを思いついて楽器の手入れをしている手を止める。
「そういえは、僕の記憶か確かなら君か情報を買いに来るのははしめてしゃないかな?」
「ああ、そう言えばそうだね。でもどうしても知りたい情報があるんだ」
「他『人』にほとんと興味を示さない君かとうしても知りたい情報かあ。そりゃ興味深い。いったいなにかあったの?」
「まあ、いろいろとあってね。とりあえず、これで足りるかな」
持っていた楽器をそっと元の場所に戻し、身体ごと緋星のほうへと向きなおるAAA。そのAAAに近づいた緋星は菓子パンがズシリと入った袋をAAAのほうへと差し出してわたす。
「おや、随分な量たね。それほとまてに貴重な情報ということか。いったいなんたろ? やはり君の最大の宿敵てある龍乃宮 剣児くんのことかな? 意外と龍乃宮姉妹の想い人のことかな? いやいや、それともこの学校の最大の勢力てあるチャン一派の内情についてかな?」
「そのどれでもないよ」
「しゃあ、いったいなんの情報かほしいのかな? さっきもいったけと君には危ないところをチャン一派から助け出してもらったという恩義かあるから情報をたしおしみする気はないけと、いくら私ても持ってない情報は出せないよ」
そう言って首を傾げて見せるAAA。相手が昆虫系という全く自分達とは姿形の異なる種族であるため表情がわからないが、どうやら彼は本気で困惑しているようであった。一年生の時に知り合って以来の仲であるが、そんなAAAの表情を一度も見たことがない緋星はちょっと驚いた表情をしてみせたが、すぐにその表情を引き締め、自分が知りたい情報を口にする。
「ボクが知りたいのはボクのクラスメイトのことなんだ」
「君の? 君のクラスメイトというと龍族三兄姉妹といい有名人か多いけと、いったい誰のことか知りたいのかな?」
「それは、宿難 連夜のことだ。彼のことが知りたいんだ」
緋星はほんのわずかに逡巡をしてみせたが、すぐにそれを消し去ると自分が知りたいと思っている『人』物の名前を口にする。すると、一瞬AAAは実に珍しいことに、いや、というよりも、今まで一度も見せたことがない、異種族の緋星ですらもはっきり吃驚しているとわかる表情で呆けたように口をあけ続ける。
そして、しばらくその凶悪な顎を開けたり閉めたりしていたが、やがて、深く嘆息してみせると一度受け取った菓子パンが入った袋を再び緋星に返そうとする。
「な、なぜだ? 宿難のことは教えられないってことなのか?」
「違うね、逆たよ陸くん。よりにもよって宿難 連夜たって? この学校一番の超有名人しゃないか。彼のことなら別に私に聞かなくても誰たって知っているしゃないか。それこそ君のクラスの誰に聞いても大体のことは教えてくれるはすたよ」
「こ、この学校一番の超有名人? 宿難 連夜が? なぜ? 失礼なことだと思うが、彼くらい地味な奴はいないと思うんだが」
「確かに地味かもしれないね。ても、問題はそういうことしゃないよ。たくさんの生徒達から支持を受けている現生徒会長と完全に逆の意味て彼はひとく目立ってる」
肩を竦めて見せながらそう呟いたAAAは、首を横に振りながら再び管楽器を手に取りその手入れを再開しようとする。しかし、それに気がついた緋星が慌てて駆け寄ってその手を止めさせ、もう一度菓子パンが入った袋を押し付ける。
「ちょ、ちょっと待ってくれAAA。途中で話すのをやめないでくれないか」
「いや、そう言われても彼に関しては別にとりたてて話すような内容はないんたけと」
「それでもいいから、頼むよ!! 自分で言うのもなんだけどボクは友達が少ないんだ。いくらみなが知っているといっても聞けるような間柄の友達が他にいないんだ。この菓子パンは全部食べてくれていいし、聞いた内容についてつべこべは絶対言わないから!!」
「う~~~ん。本当に特別なことは何もないんたけと、そこまて君かいうならわかったよ」
必死にすがりついてくる緋星の姿に困惑した様子を見せたAAAだったが、やがて諦めたように菓子パンが入った袋を受け取ると、ゆっくりと話始めた。
「学年たとか、成績とか、趣味とか別にとうてもいい情報については省かせてもらうね。彼を語る上て一番重要たと私が思っていることについて話すよ。さて君のクラスメイト宿難 連夜たけと、彼はこの学校始って以来の、最も多くの敵を持つ生徒た。各学年に存在しているメシャーな不良クループから、二、三人規模のマイナーな小集団に至るまて、この学校に在籍しているほとんと全ての不良達は表立って敵対を表明し、すてにいくつかのクループは実際に喧嘩も仕掛けている。不良たけしゃない、一般生徒達の中にも彼のことを敵対視している者達も多くいるし、それところか、教師の中にも彼を敵対視している存在かある。その一番の筆頭は下級種族嫌いの教頭て、あのおっさんの息かかかった教師達はみなれん・・いや、宿難のことをよく思っていない」
「なんでだ? なんでそこまで嫌われて狙われるんだ? 彼が何かしたのか?」
「何も。何もしていないよ。彼は何も悪くない。悪いはすかない。ただ、彼は二つの大きな爆弾を抱えていて、それか引き金になってる」
「二つの大きな爆弾? いったいそれはなんなんだ?」
「一つは彼か人間族てあること。君は知らないかもしれないけと人間族は過去に他の種族を裏切り、自分達人間以外の種族全てを滅ほそうとしたという黒い歴史を持ってる種族なんた。その歴史的事実から人間族はどの都市においても非常に迫害の対象になりやすい種族になってる。この城砦都市『嶺斬泊』てはそういう差別的行為は固く禁じられているし、それを破ったものには重い罪が課せられるようになっているけと、それても差別はなくならない。特に学校という閉鎖された空間たと尚更たよ」
「そんな」
「人間族てあるという大きなハンテかある上に、それ以上に大きなハンテがもう一つ彼にはある。それはこの学校のアイトルてある龍乃宮姉妹に非常に好かれていて仲良くしてもらっているという事実。私は実際に見たわけてはないけど、いつも彼の側には姉妹のとちらか、あるいは両方かいるんてしょ?」
「あ、ああ。しかし、それは宿難が自分から近づいているわけではないように見えるんだが」
「うん、らしいね。執心しているのは彼のほうてはなく、姉妹のほうたと私も聞いているよ。てもたからこそ、あの姉妹に想いを寄せる者達にとっては面白くないことなんたよね。自分達がとうやっても懇意になれない憧れの姉妹に対し、下級種族中の下級種族てある人間族の平凡な少年か二人の側にいて毎日仲良くしているんたから。それはもう嫉妬の炎はメラメラ燃えちゃってるてしょ」
「それはそうかもしれないが」
自分が知りたかった情報ではあるが、あまりにも自分の想像とかけ離れた内容に思わず顔を顰める緋星。そんな緋星の様子を横目で見ながら、AAAは宿難 連夜についての話を続ける。
「ともかく、この大きな二つの理由から彼はいろんな『人』達から絡まれ続けているわけたけと、彼にとってさらに不利なのか、敵の多さに見事に反比例して味方が非常に少ないんたよね。と、いうか彼の味方たとはっきり断言てきる人物は私か知る限りて片手の指ほともいないよ。よくもまあ、そんな状況て毎日やっていけるなあと感心するくらい、味方か全くといっていいほといない」
「数少ない味方というと龍乃宮三兄姉妹と、あの二人のお付きのことか?」
あまりにもひどい内容にショックを隠しきれない様子を見せながらも、なんとか当り前の事実を確認するように問いかける緋星。しかし、AAAはあっけらかんとした軽い感じでそれを否定する。
「まさか~。彼らは味方しゃないよ」
「な、なにっ!? そんなバカな!? あれだけ毎日仲よさそうにしているというのに、味方じゃないって!?」
「今のところ敵しゃないかもしれない。多分、本当に敵対心はないたろうし、好意も持っているのたろうけと、私に言わせれは、あれたけひとい厄病神はいないよ」
「な、な、なんだって?」
仰天する緋星に、追い討ちをかけるようにAAAはさらにとんでもない事実を暴露する。
「あまり知られてはいないことだけど、宿難は意外と強いんた。そりゃそうたよね、あれたけの不良達に毎日のように絡まれているのに平気て学校に通ってくるんたから、それなりに強くなきゃやっていけないし、それか当たり前たと思う。しかも強いたけしゃない、とうやったら後に引くことなく荒事を収められるかもよくわかっていて、いくつかの不良クループに対してはすでに対処して二度と自分にちょっかいたしてこないようにしていたりもするんた。正直、あの手腕なら一年もあれは十分この学校の不満分子達を押さえられたはすなんたけとね。ところか、悲しいかな彼には潜在的なとんてもない敵かいて、その敵か彼の用意した策のほとんとを潰してしまったものたから、未だに宿難 連夜に不満反感を持つ者達かこの学校に溢れている。いや、むしろ当初よりも圧倒的に増えてしまったくらい」
「ちょ、ちょっと待ってくれないか、AAA。潜在的な敵っていったい誰のことなんだ?」
「たから、それかさっき言っていた龍乃宮三兄姉妹のことたよ」
「えええええっ!?」
「本人達はよかれと思ってやっているんたろうけと、彼らのやってることははっきりいって逆効果もいいところたね。毎度毎度乱闘の最中に宿難 連夜を助けに飛ひ込んていっている彼らたけと、実際は一度も間に合ってないんた。彼らか到着したときには宿難か仕掛けた数々の罠や策略によって不良達はほほ無効化している。なのにそこにわさわさ割って入って、トトメをさして回ってるんたから。恐らくたけと、宿難にしてみれは、自分に仕掛けてもひとい目にあうたけて割に合わないと思わせることが重要て別に本気て全ての不良クループを叩き潰すつもりなんかないんたと思う。そこそこ痛い目にあわせるたけというのか彼の立てた作戦の本分たったんたと思う。実際、龍乃宮三兄姉妹か介入しなかったケースて、宿難に痛い目にあわされた不良クループは二度と宿難に手を出していない。ところかそういう風にことか運ふことはほとんとなくて、大部分は龍乃宮達か介入して必要以上に不良達を痛めつけて終わるケース。そうなった場合、不良達は自分達を必要以上に痛めつけてくれた龍乃宮達よりも、なるへく穏便に済ませようとした宿難を恨むんたよね。権力も腕力もある龍乃宮達に仕返しするよりか、何の後ろ盾もなくて、弱そうな宿難のほうか仕返ししやすいと思うからなんたろうけと」
「そ、そんな。それじゃあ、むしろ宿難にとって龍乃宮達は」
「巨大てあまりにも重い足枷たねえ。自分達はいいことをしていると思っているから尚更始末に悪い。自分達が周囲に与えている影響ってのものを全くわかってないんたと思う。昆虫系種族である私には龍乃宮姉妹の美しさや、剣児くんのスター性については全くわからないか、もし私か宿難なら、これたけ自分に不利な要素を持ってくる彼らとの縁をすっぱり切るね。大きな権力を持っている一族て、普通以上にきらひやかな容姿をしているからといっても、彼らと付き合うことか絶対に割りにあっているとは思えないもの」
重い溜息を吐きだしながらそう語るAAAを、緋星は愕然とした表情を浮かべて見つめ続ける。
「そんなひどい状態に彼は常にいるというのか? そんなバカな!? 彼は・・彼はいつも笑っていて楽しそうで、そんな素振りは一度も」
「クラスの中て彼かとう振舞っているのかまては私は知らないけとね。少なくとも彼か今四面楚歌の状態にいることは間違いないよ。しかし、彼は本当に不思議な『人』たよね。誰か見てもとてつもなくひとい状態にあって、『人』にかまっていられるはすないなのに彼はこの学校ていろいろな『人』を助けているんた。不良クループにからまれている生徒達を見かけれはわさと自分のほうに注意を向けさせて逃かしてやったり、困っている生徒にさりけなく手を貸してやったり。いやいや、手を貸すはかりてはないよ。彼は実に博学てね、下手をするとここの能なし教師達よりも知識か豊富で、その知識や経験て知恵を貸すことたってある。現生徒会メンハーかいい例さ。去年彼らが当選てきるように影からいろいろと手を貸してやったりもしていたよ」
「せ、生徒会に手を貸してやっていたって、学校で最大の権力を持つ集団じゃないか。なぜ彼らの力を借りてどうにかしないんだ!?」
「彼かそれを望んていないからたよ。現生徒会長達は彼を助けたかっているけとね。たけと宿難は現生徒会長か彼に肩入れすることてこの学校の生徒達の人望を失ってしまうかもしれないからと言って他人の振りを貫くように言ってる。現生徒会長はかりしゃないよ。彼か助けた他の生徒達にも同しようなことを言って回ってる。自分と関わりかあるって周囲にハレたらたたて済まないから、てきるたけ他人の振りを貫けってね」
重い、あまりにも重い溜息を吐きだしいったん言葉を切るAAA。外骨格に包まれたメタリックなその表情は相変わらず読めず今どういう感情を抱いているのかわからないが、しかし、どこか悲しそうに見えるのは緋星の気のせいだろうか。
「たから宿難 連夜はいつも敵たらけた。敵はもちろん敵たし、味方も実際には敵、教頭の息のかかった教師達も敵、味方になるはすの生徒達はそれそれのしからみかあって彼に手を貸すことかてきない、そして、それ以外の生徒達は巻き添えになることを恐れて彼の味方にはならない。全方位見事に全て敵と、敵てはないか味方てもないものしかいない」
「なんだそれはぁぁぁぁっ!?」
その話の内容のひどさに緋星は思わず両手を振り回して激昂し、AAAはそんな緋星から楽器を守るように慌てて立ちあがって彼を止めにかかる。
「お、落ち着いてくれたまえルーくん、そして、頼むからここて暴れないてくれないか、大切な楽器か壊れちゃうよ」
「これが落ち着いていられるか!! ふざけるなっ、ふざけるなっ、ふざけるんじゃないっ!! こんなバカなことがあるか、あってたまるか!! 敵だらけだと? 味方も実際には敵だと? その上彼に助けてもらっておいていざとなったら自分を守って知らんぷりのその他大勢か!? くそくらえだ!! 何もかもくそくらえだちくしょう!!」
もうどうにも耐えられなくなってしまった緋星は悔し涙を隠そうともせぬままぼろぼろと流し続け、声を枯らして叫び続ける。そして、がっくりと肩を落とすと顔を俯かせたままAAAに背を向ける。
「取り乱して悪かった。それと貴重な情報をありがとう。よくわかったよ」
「ルーくん。もういいのかい? また彼に関する説明は全部終わってないけと」
「もう十分だ。自分のやるべきこと、進むべき道は十分わかったよ。だから、ボクはもう行くよ」
AAAに背を向けたままゴシゴシと片手で目のあたりを乱暴に拭き取った緋星は、強い決意の光をその瞳に宿らせて部屋から出て行こうとする。そんな緋星の背中を黙って見送ろうとしたAAAだったが、彼が戸口をくぐろうとしたところで思い出したように声をかける。
「ルーくん、君は宿難に・・いや、連夜に手を貸してやってくれるのかい?」
最初緋星はその声に応えぬままに姿を消そうとしたが、不意にAAAが今までと違い、宿難 連夜のことをファーストネームで呼んだことに気がついて驚いた表情で振り返る。すると、AAAは明らかに悲しみの光を宿しているとわかる複眼で緋星を見返す。
「私はね、彼に助けられたものの一人なんた。留年することなくここてこうして好きな楽器の手入れをしていられるのは彼のおかけさ。彼か私の特技のことか教頭にそれとなく伝わるように画策してくれたおかけて、私はこうしてすっとここにいることかてきるようになった。しかし、それたけのことをしてもらったにも関わらす私は堂々と彼の友達と名乗り出す、こそこそとここに隠れ続けている卑怯者た。彼かとれたけ大変な目にあっているか一番よくわかっているのに何もしようとしない卑怯者さ。怖いんた。怖くて仕方ないんた。彼を助けにいけは殴られたり蹴られたりするかもしれない、それところかもっとひといめにあわされるかもしれない。そう思うと身体か竦んてしまうんた」
「AAA、君は」
「頼む、ルーくん。こんな臆病者て卑怯者の私か言えた義理ではないとわかってはいるか、とうか頼む。とうか連夜に手を貸してやってほしい。連夜は完全に孤独というわけしゃない。本当に頼れる仲間もいるんた。たけと圧倒的に数か少ない、少なすきる。彼らたけてはいすれカハーしきれなくなる。そして、きっと取り返しのつかないことになる。それところか今もすてに大変なことになろうとしているんた!!」
「今も!? 今もって・・まさか、宿難に何かあったのか!?」
「一年生の『シャック・フルータス』が率いている不良クループ達が連夜に絡む声か食堂のほうから聞こえてきたんた。それてさっきからそっちに聴力を集中していたんたけと、連夜かあいつらのこと挑発して始めて、結局一戦やることになっちゃったみたいなんた。とうやら連夜はあいつらを迎え討つつもりらしい。いつもの彼なら心配ないんたけと、今日の彼の歩くリスムを聞いているといつもと違う気かするた。なんか妙に浮かれているような感しかして・・やっぱり今日の連夜は危うい!! いつも冷静てとんな時もそのペースを崩さないはすの彼か、今日に限ってらしくないリスムた。たから・・たから頼む、ルーくん!! 連夜に手を貸してやってくれないか。情報料の報酬は返すから!! たのむ!!」
たまらず駆け寄ってきたAAAは手にしていた菓子パンが入った袋を緋星に押し付け、その頭を何度も下げて見せる。そんなAAAの姿をじっと見つめていた緋星は、菓子パンが入った袋をそっとAAAに押し返し頭を上げさせる。
「君に言われなくてもそのつもりさ。それに思いだしたんだ」
「え? なにをたい?」
きょとんとして問い返すAAAに、緋星はこの学校に来て以来初めてみせる心からの笑顔を浮かべて見せる。
「そう、思いだしたんだ。ボクが・・ボクが武術を覚えたのは大事な友達を守るためだったから。小さい時のボクは友達の後ろにこそこそ隠れて、友達がいじめっ子に殴られていても助けに行かない卑怯なやつだった。そんな自分が嫌で、そして、ボクを守ってくれた優しい友達のようになりたくてボクは武術を倣ったんだ。仕返しをするためじゃなかった、仕返しをするために身に着けた武術じゃない。こんな大事なことを今の今まで忘れていたボクはなんてバカなんだろうね。でも、もう忘れないし、間違わないよ。今こそこの力を正しく使うときなんだ。だから、ボクは行くよ」
己が羽ばたく空を見つけた朱雀は舞い上がる。優しい夜空を守るため、その身に宿る激しい炎を燃やして舞い上がる。
強く、どこまでも強く高く。
迷いの果てに見つけた本当の空へ、今、緋の鳥が羽ばたく。