第四話 お~ぷにんぐ
玉藻:連夜くんってさあ、本当にいろいろな料理が作れるけど、一番好きな料理ってなんなの?
連夜:旧八幡朝廷領(この世界の日本に似た国)料理か、旧上華帝国領(この世界の中国に似た国)料理ですねえ。どっちも作るのも食べるのも好きだけど、やはり上華料理のほうが好きかなあ
玉藻:そうなんだ。上華帝国の料理っておいしいよねえ。
連夜:ええ。あの国は世界中の国の中でも特に古い歴史を持つ国でしたから、食文化も物凄く発達していたんですよねえ。『害獣』の出現で滅ぼされてしまったことで、数多くの珍しい料理のレシピが失われてしまったのは、本当に残念なことです。
玉藻:そうねえ。まあ、あの国に限ったことじゃなくて、他の国々も似たような状況になっちゃったんだけどね。
連夜:そうですねえ。でも、国は滅んでも、まだ人は生きていますから、失われた料理を復活させるチャンスは残っているわけです。生き残った料理人のみなさんにはがんばっていただいて、是非復活させていただきたいものです。
玉藻:うんうん、そうねそうね。ところで、今日の夕御飯はなんなの?
連夜:今日は玉藻さんの大好きなチャーハンに、レバニラ炒め、それに上華風あっさりサラダに、上華風玉子スープです。
玉藻:おお、今日は上華料理なのね。にしても、本当に連夜くん、上華料理を作るのが好きよねえ。
連夜:ええ、玉藻さんがおいしそうに食べている姿を見るのがなによりも大好きですからね。
玉藻:え
連夜:だって、玉藻さん上華料理大好きなんでしょ?
玉藻:え、え、なんで? なんでそんなことを知って・・
連夜:特にビールや、紹興酒なんかとあう焼餃子とか、茄子味噌炒めとか、レバニラ炒めとかだと、大皿に何杯も召し上がるし、お酒も浴びるほど飲まれるとか。
玉藻:ちょっ!?
連夜:でもなあ、確かに玉藻さん、明らかに上華料理を作ったときは通常よりもたくさん召し上がっていらっしゃるけど、なんか僕が聞いている話よりも明らかに量が少ないんですよねえ。玉藻さん、いつも遠慮なさっているでしょ? 僕と玉藻さんの仲なのに、今更ですから遠慮なさらないでくださいね。ちゃんと多めに追加ですぐ作れるように材料用意しているし、お酒だっていっぱい買い置きしているんですから。
玉藻:待って待って待って!! 何それ、何それ!? なんで! なんで? なんで!?
連夜:え、違うんですか? 上華料理のファミリーレストラン『皇軍』に大学のお友達のみなさんと食事に行かれた時に、一人でビール大ジョッキ十杯以上空けられて、餃子も二十皿近く召し上がられたって・・
玉藻:いやああああああああっ!! 誰!? 誰なの!? 私の知られたくない黒歴史を暴露したバカは!?
連夜:いや、あの、み~ちゃん・・ですけど、あれ? これってひょっとして秘密だったのかな?
玉藻:み~~ね~~る~~ば~~!! 殺す!!
真・こことは違うどこかの日常
過去(高校二年生編)
第四話『燃えよ!! 緋の鳥』
CAST
宿難 連夜
言わずと知れた本編主人公。
都市立御稜高校に通う高校二年生。人間族。男性。十七歳。
高校内に存在している不良グループのほとんどから標的とされている不幸な少年。
しかし、それに負けることなく今日も彼は過酷な日々を生き抜く。
(さて、どう戦うかな?)
陸 緋星
剣児のことをライバル視する少年。朱雀族。男性。十七歳。
休み時間のたびに自らがライバルと目している剣児と拳を交え続ける。
三大実力者のうちに入ってはいないが、剣児に匹敵する武力の持ち主である。
剣児と仲の良い連夜のことを敵視していたが、その瞳に宿る深い闇を知り・・
「今度はボクが君の為に飛ぶ、この力の限り!!」
アマデウス・アンソニー・アンデルセン
通称【AAA】。中央飛蝗族。男性。十八歳。
御稜高校随一の情報屋。特殊な楽器を調整手入れする能力に長けており、普段は第三音楽室に常駐している。
現在学校内で窮地に立たされている連夜の現状を、緋星に伝える。
「情報を売りたくないときもある」
龍乃宮 姫子
連夜のクラスの委員長で、御稜高校が誇る最高にして最強のスーパーアイドル。上級龍族。女性。十七歳
上級種族中の上級種族である龍族のお姫様でもある。
男女共に人気があるせいでいつもひっぱりだこ。
「今日こそは連夜と食べられると思ったのにぃぃぃぃっ!!」
龍乃宮 瑞姫
姫子の腹違いの妹。上級龍族。女性。十七歳。
姉の姫子に比べるとやや細身ですっきりしたスタイルの持ち主の美少女。
以前、自分を助けてくれた『祟鴉』を慕う。
「私は宿難くんとご一緒したいのにぃぃぃぃぃぃっ!!」
龍乃宮 剣児
姫子と瑞姫の腹違いの兄。上級龍族にして上位の王位継承権を持つ少年。上級龍族。男性。十七歳。
御稜高校三大実力者の一人にあげられるほどの武術の達人であると同時に、三人の美少女達を恋人に持つハーレムマスターでもある。
何人もの女性と関係を結んでいる自他共に認める女好きだが、実はそれは求めても手に入れることができないある人物に対する気持の反動からくるもので・・
「女だったらよかったのに。そしたら俺はこんなに渇くことも他の誰かに求めることもなかったのに」
連夜:な~んだ、じゃあ、み~ちゃんのいつものいい加減なウソだったわけですね。
玉藻:そそ、そう~なのよ。やだわ、連夜くんったら、もう~~。おほほほほほ
連夜:そっかあ、いくらなんでもビール大ジョッキで十杯とか、焼餃子二十皿とかありえないって思っていたんですよねえ。
玉藻:でしょ~。いくら私でもそんなに食べるわけないじゃない。
連夜:ですよね~。しかし困ったなあ。
玉藻:何が?
連夜:てっきり玉藻さんがそれくらい食べるのだと思っていっぱい作り過ぎちゃったんですよね。あと、ビールもたくさん用意しちゃったし、このままだと勿体ないしなあ。あ、そうだ。そういえば、今、兄さんが家に帰ってきているんだった。兄さんならたくさん食べるからちょっと持って行ってきますね。
玉藻:待って待って、連夜くん、いったい何人前くらい作ったの?
連夜:え? チャーハンもマーボー茄子も十人前くらいずつですけど。あとビールも十本くらい買いこんできてます。
玉藻:あ~、な~んだ、それくらいなら私一人で楽勝よ。持って行かなくていいってば。
連夜:なんだ、そうでしたか・・って、え?
玉藻:・・あ。
連夜:・・
玉藻:・・
連夜・・た、玉藻さん?
玉藻:・・げほ、ごほ、え、えとえと。皆様、お待たせいたしました。それでは第四話『燃えよ!! 緋の鳥』です。どうぞ!!」
連夜:た、玉藻さん、さっきのはみ~ちゃんが言っていたいい加減な嘘だって・・
玉藻:いっただきま~す!!(やけくそ)