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真・こことは違うどこかの日常  作者: カブト
過去(高校二年生編)
181/199

第五十一話 『回避できぬ毒牙』

 この世界には『上級種族』と呼ばれている種族の者達が存在している。

 『害獣』というものがまだこの世界に存在しなかった頃、他の種族の者達に比べ圧倒的に多くの『異界の力』をその身に宿していた者達のことだ。

 当時彼らは強大な『異界の力』を使いたい放題に使い、この世界の覇者として君臨していた。中には『神』、『悪魔』、あるいは『魔王』、『聖獣』などと呼ばれる『人』を遥かに越えた力を持つ者さえいた。

 だが、時代は急変する。

 調子に乗りすぎた人類を粛清すべく、世界は『害獣』という新たな支配者を世に送り出した。

 当り前であるが、彼らに真っ先に標的とされたのは他ならぬ『上級種族』と呼ばれる種族の者達。頂点に君臨している者から淘汰されていき、ただでさえ少数の種族であった彼らは瞬く間にその数を減らして行った。

 このままではそれほど時間をおかずして滅ぼされてしまう。追い詰められた彼らは、生き残るために二つの選択肢を迫られる。

 一つは、その身に宿す『異界の力』をなんらかの方法で隠し、『害獣』という大嵐がいつか去るまでじっと耐え忍ぶというもの。

 『異界の力』という禁断の果実を食してしまい、その味を忘れることができなかった多くの上級種族がこの選択肢を選んだ。いつかきっと、『害獣』はこの世から去る。去ってしまえばまた強大な『異界の力』を駆使し、世界の覇権を握ることも不可能ではない。実際、その考えは決して荒唐無稽なものではない。事実、これまで彼らはその『異界の力』のおかげで他の種族の者達の上に立ってきたのだから。

 しかし、未だに彼らの願いが叶えられる兆しはない。『害獣』達は益々その数を増やし『異界の力』を持つ者が住める場所はどんどん狭くなっていっていき、また、この選択肢を選んだ種族の数もそれに比例して少なくなっていっている。五百年。彼らがその選択肢を選んでから既に五百年という時が過ぎた。かつての栄光をその目で見て知っている者はもうほとんどいない。にも、関わらず、まだ彼らは諦めずいつか来るであろう解放の日を待ち続けている。

 それが正しい選択だったのかどうか、それについての答はまだ出てはいない。

 さて、それとは違う選択肢を選んだ者達もいる。

 それは『異界の力』をすっぱりと捨て去ることを選んだ者達。己の身体の中に存在する『異界の力』を発生させる器官を自ら潰し、あるいは切り取り、使うために必要な技術や方法を全て消去することで『異界の力』との決別をはかった者達。それを行ってしまえば、二度と過去の栄光をその手に取り戻すことはできない。しかし、彼らは躊躇わなかった。

 『害獣』を世界が生み出した新たな自然災害の一つとして受け入れ、それと共に生きていく道を選んだのである。そして、彼らは『異界の力』ではない新たな道を模索し始めた。この世界から異質として認知され排除の対象となっている『異界の力』ではなく、この世界が定めたルールの中にある新たな道を切り拓く。

 それは決して平坦な道ではない。ずっと『異界の力』という万能の力に頼りきり生きてきた彼らにとって、それらを使わずに生活するだけでも大変なことであるというのに、それに代わる新たな力を得るための努力もしなくてはならなかったのである。

 だがしかし、結局のところ世界は彼らに微笑むこととなる。

 この道を選んだほとんどの『上級種族』の者達は、その名を受け続けるにふさわしい新たな力を得ることとなる。

 ある種族の者達は新たな工業技術を生み出し、またある種族の者達は新たな医療技術を生み出した。そして、またある種族の者達は、『異界の力』ではない、この世界そのものに認められ使うことを許可された新たな『力』の創造にも成功。

 こうして彼らは今も他種族から『上級種族』と呼ばれ、生き残った人類社会の中、それにふさわしい地位で活躍を続けている。

 少なくとも現時点では、彼らが選んだ選択肢は正解だったと言えるだろう。

 さて、そんな『異界の力』を捨てるという選択肢を選んだ種族の中に、かつて『聖獣』と呼ばれる『超越者』を排出した名門一族の姿がある。

 彼らは『龍』の一族と互角に渡り合えるほどに強大な『異界の力』を持つ種族であったが、『害獣』の出現を知ると同時にあっさりとその力を手放した。大自然の力をその強大な『異界の力』で捻じ曲げて屈服させ、意のままに動かし支配していた『龍』の一族と対照的に、彼らは自然の力は自然のままにという考え方であった。そのため、大自然を管理する『世界』の意思を『害獣』達から感じた彼らは、その意を汲み取ってあっさりと『異界の力』を放棄。

 当然、強大な力を失うこととなった彼らは格段に弱体化することとなったが、『異界の力』を捨てることを選んだ他の上級種族の者達と同様に別の道から再び高みを目指して歩き始める。

 彼らが選んだ道は己の肉体の強化。厳しい修行を己に課し、『害獣』や手強い原生生物との戦いを繰り返し、種族としての限界を何度も何度も越えることによって、彼らは強靭な肉体を持つ種族へと成長、いや進化していったのだった。

 そして、五百年後。

 彼らは他種族から『上級種族』と呼ばれるほどの力を取り戻す。勿論、その力はかつてのような強大なものではない。しかしそれは、『異界の力』を封じられた現在において、十分に認められるだけの力。

 生身の身体で騎士クラスの『害獣』の一撃を凌ぎきる強靭な生命力。剛腕で知られる恐るべき原生生物『四腕灰色熊(アシュラベアー)』と真正面から組み合うことができるほどの怪力。

 それが彼ら白虎族。

 優秀な戦士を排出する名門中の名門として知られるようになった彼らであるが、彼らの名を世に轟かすことになった要因はその驚異的な身体能力だけではない。

 あまたの上級種族の者達が『害獣』を恐れ、安全な都市の中に引き籠る中、彼らは己の活躍の場を『外区』に求めたのだ。

 彼らが選んだ仕事は、武装交通旅団。

 都市と都市との間を、人や荷物を乗せて定期的に行き来するもの。一応、交通に使われる交易路は各都市の中央庁によって綿密に調査され、ある程度の安全が保障されている道。危険な『害獣』のテリトリーからは勿論外れているし、日夜たくさんの『馬車』や人が行き来している場所。しかし、全く危険がないわけではない。

 恐ろしい原生生物の群れが突如現れて道を塞ぐこともあれば、野盗に襲われることだってある。その可能性は決して低くはない。いくら危険度が低いとはいっても、道があるそこは人類の居住範囲外である『外区』なのだから。

 だが、それを十分知りつつも彼らはそこを己の生きる場所と決めた。

 厳しい修行を終え一人前となった部族の優秀な戦士達で構成された白虎族の戦士団。運ぶ人も、荷物も、そして、自分達自身も守り抜いて目的地に到達する。

 鉄の意思を持つ戦士達に守られた武装交通旅団は、危険極まりないその任務を着実にこなしていった。

 やがてその勇名は北方中へと知れ渡っていく。すると、その噂を聞きつけた他の獣人族の者達が、ぽつぽつと彼らの元へと庇護を求めてやってくるようになった。最初はあまり力を持たぬ猫やイタチといった小動物系の獣人族の者達ばかり。異界の力が最初からないに等しい下級種族ゆえ、『外区』での仕事には向いてはいるものの、戦闘特化の白虎族からしてみれば貧弱このうえない部族ばかりだ。

 しかし、当時の白虎族族長は彼らを拒みはしなかった。温かく彼らを迎え入れ自分達の庇護のもとで暮らすことを了承したのだ。

 そのことがさらに噂となって広がっていく。白虎族はどんな弱小部族であっても迎え入れてくれる。勿論、実際にはいろいろと細かい制限や条件があったりしたのではあるが、概ねそれらは彼らに受け入れられ、日を追うごとに白虎族の元に集ってくる獣人族の数は増えていった。

 こうして、白虎族をリーダーとするこの一団は、北方諸都市の中でも最も大きな獣人族の勢力となっていったのである。

 そして、彼らが運営する武装交通旅団は、北方諸都市では知らぬものがいないほどの最大手となった。

 そんな『白光のカーテン』であるが故に、城砦都市『嶺斬泊』の中央庁は、白羽の矢を立てた。

 一年ぶりとなる城砦都市『アルカディア』との交易再開。

 その第一陣先遣隊の中心となるものとして彼らは招集された。

 本来であれば今回の交易再開にあたって中央庁の直轄部隊が指揮を執らなくてはいけないところ。だが、現在、中央庁にはこちらに裂くだけの戦力が足りていない。と、いうのもある大規模な犯罪組織の摘発とその後処理でほとんどの部隊をそちらに回さざるを得ない状況であるからだ。いや、回さざるを得ないというどころか、実はそちらのほうにも戦力が足りてはいない。城砦都市『嶺斬泊』に籍を置くいくつかの傭兵旅団に協力を依頼し、彼らの手まで借りてその仕事をこなしている真っ最中なのだ。

 ならば、交易路の封鎖を解除するのは後回しにすればいいだけではないかといえば、そういうわけにもいかない。

 南方最大の交易都市『アルカディア』との交易再開は城砦都市『嶺斬泊』だけの問題ではないからだ。かの地から流れてくる様々な物資や特産品の数々は、他の北方諸都市にとっても必要不可欠なものばかり。そして、その南方と北方とを繋ぐ生命線は『アルカディア』と『嶺斬泊』の間にしかない。

 封鎖せざるを得ないと判断していた大きな原因となっていたものについては、既に取り除かれていることが他ならぬ『嶺斬泊』の調査団によって確認が取れている。他に危険がなくなったわけではないが、『人』の手で取り除けないというレベルではなくなっているのだ。

 どうあっても封鎖を解かなくてはならない状況。

 中央庁は決断を下す。城砦都市『嶺斬泊』で最も信頼のおける武装交通旅団に先遣隊の任務を任せることにしたのだ。

 いや、より正確にいうならば、武装交通旅団を率いる一人の男に託したというべきか。猛者揃いの白虎族の戦士達を率い、数々の武勲を打ちたてた伝説の騎士。武装交通旅団の軍団長にして白虎族の総帥。

 ベルンハルト・アルトティーゲル。

 『暁の旅団』に属する北方最大の英雄『獅子皇』ほどその名を轟かせているわけではない。だが、傭兵の世界にいるもので彼の名を知らぬものはいない。

 彼が率いる武装交通旅団『白光のカーテン』は、彼が軍団長に就任してからの二十年、一度として乗車した民間人に被害を出したことがない。いや、民間人ばかりではない。運ぶ荷物にも一度として傷をつけることがなかった。

 それは安全な道ばかりを通ることによって達成された武功ではない。勿論、乗客がいる場合はできるだけ安全な道を選ぶ。だが、積荷が命の心配をする必要がない荷物だけの場合、彼らはできるだけ開拓されていない道を選んで通っていた。自らの戦闘技術を高め、様々な実戦経験を積むため、そして、新たな交易ルートを確保するため。

 彼らはその強大な軍事力をフル活用し、これまでいくつもの交易ルートを作り出してきた。そう自らの力で作りだしてきたのだ。

 危険な原生生物の群れが行く手を阻んだこともある。橋をかけなければ渡れない自然にできた峡谷が行く手を阻んだこともある。少しでも吸い込めば死にいたる猛毒の霧が蔓延する道を通ったことだってある。

 しかし、どのような困難に阻まれようとベルンハルトは決して怯みはしなかった。強力なリーダーシップで一族を導き、何度もその窮地を救って見せたのだ。

 一族に属する戦士達にとってベルンハルトはまさに『英雄』。

 そんな彼に憧れ、彼の側に仕えたくて一族の若者達はこぞって武装交通旅団への入団を目指す。


 ヨーゼフ・メックリンガーもそんな若者達のうちの一人だった。


 彼の家は代々一族総帥の側近を務めている。彼の父は現在その立場にあるし、現在総帥の相談役を務めている祖父も、先代総帥の側近を務めていた。当然、彼もまたそうなるべく幼い頃から英才教育を施されてきたわけであるが、その際、彼は父と祖父両方から現総帥の凄まじい武勇伝の数々を聞かされることとなる。

 曰く、一頭だけでも恐ろしい相手である凶悪な原生生物『四腕灰色熊(アシュラベアー)』の群れと単身対峙し、たった一人で勇軍が来るまでの間民間人を守り続けた話。

 曰く、あまりにも急な流れの為にわたることができない河に、たった一週間で強靭な橋を作り上げてかけた話。

 曰く、濃度の高い硫黄が噴き出す火山地帯に命知らずの男達を指揮して入り、比較的安全な道を探り出し西域へと続く新たな道を開拓して見せた話。

 どれもこれも幼きヨーゼフの胸を躍らせた英雄譚。そんな英雄と轡を並べたくて、ヨーゼフは必死になって己を鍛えに鍛えた。中学、高校、大学は全て実戦経験を積ませてくれるエリート兵士養成学校を自ら選択して入学。厳しい訓練と学問の日々を潜り抜け、優秀な成績で大学を卒業した彼は、すぐに『白光のカーテン』に入団。

 入団後も日々努力を怠らず、危険な任務には率先して志願。数々の修羅場を経験し、見事生き残ってきた彼は、三十路にまだ数年あるという若さで騎士隊長に抜擢されるという異例の出世を遂げた。

 少々頑固で融通が利かず頭が固いところがある彼であるが、真面目で何事にも真剣に取り組む彼の性格を現総帥ベルンハルトは大層気にいっており、このままいけば、ヨーゼフの希望通り現総帥の側近になれるであろうことはまず間違いない。団内での人望もそれなりに厚く、また、『虎の若武者』として対外的にもそれなりに名前が知られ始めている。

 まさに順風満帆。

 不満などあろうはずがない。

 ・・・はずだった。本当についさっきまでは。


『なんなんだ、この小汚い小僧は』


 実際に言葉にして口からこぼれ落としたりはしない。しかし、彼の胸の中は物凄い不満でいっぱいであった。

 その不満の元が今、彼のすぐ目の前をのんびり歩いている。

 ぼろぼろになったフード付きの黒いコートに、タコの顔のようなガスマスクをつけた一人の少年。彼は牛よりも大きな金色の大狐にまたがり、のんびり景色を楽しみながらゆっくりゆっくり彼の目の前を先行し歩いていく。そんな少年の姿を、ヨーゼフは愛馬『シュヴァルツ』の上から苦々しげに睨みつける。

 ヨーゼフが所属する『白光のカーテン』は中央庁の依頼を承諾し、『アルカディア』との交易再開の第一陣の任務をこなすこととなった。そのことについて別に不満があるわけではない。むしろこの任務を与えられたことは非常に名誉なことだと思うし、自分達にふさわしい仕事だと心から思う。

 では、何が不満なのか? ヨーゼフが不満に思っているのは、『アルカディア』までの今回の旅において自分に与えられた役割についてだ。

 旅が始まる前、彼は団長であり一族の総帥でもあるベルンハルトから呼び出された。総帥直々のご指名ということから、さぞかし重要な任務であろうと推測しヨーゼフは緊張しつつも期待に胸を高ぶらせて彼が待つ部屋と向かった。そして、そこで彼は一つの任務を命じられる。

 確かにその任務の主軸となっている内容はかなり重要なものであった。

 強行偵察、及び障害の除去。つまり、ヨーゼフの騎士小隊は本隊よりも先に出発して、街道の安全を確認。場合によっては危険な因子を排除するというかなり重要な役回り。

 これだけを命じられていたのであれば、ヨーゼフは腐ることなく意気揚々、闘志満々でこの任務に就いていたであろう。だが、残念なことに任務の内容はこれだけではなかった。ヨーゼフを不機嫌にさせる余計な内容がくっついていたのである。

 その余計な内容とは、『中央庁から派遣されてきた別グループと協力して任務を行うこと』というもの。

 中央庁からの紹介ということであるから、さぞかし名のある傭兵旅団かハンターチームがやってきているのだろうなと思ったら。


『よりにもよって、あんな小汚いガキとは』


 油断すると盛大に漏れそうになるため息をなんとか押し殺すヨーゼフであったが、内心では思い切り不満を爆発させていた。

 自分だって人のことは言えない若造ではあるが、彼の目の前を歩いている小汚い小僧は明らかに二十歳を超えてはいない。ガスマスクで顔が見えないと言っても、白虎族の嗅覚は伊達ではない。その匂いは成熟した男性のそれではない。勿論女性のそれでもないがしかし、大人の男が発するものではない。

 見た目が子供と変わらない草原妖精(グラスピクシー)族の男性でも、もっと男臭いにおいがする。こんな子供のお守をしなくてはならないとは。

 自分が協力するグループのリーダーがこの小汚い少年であると予めわかっていたら間違いなく彼はこの任務を断っていたであろう。そのことで少々彼の心証が悪くなったかもしれないが、こんな素人感丸出しの子供のお守をするよりはよっぽどましだ。悪くなった心証は別のことで取り返せばいいだけ。ヨーゼフにはそれだけの力と時間があるのだから。

 しかし、幸か不幸か、彼がこの少年と顔を合わせたのは出発の直前。最早、断れる状況ではなかったのである。

 考えれば考えるほど気分が滅入っていく。年齢のこともあるが、それにもまして彼の気分を滅入らせていくのは、少年のその言動である。別にヨーゼフに対し嫌味を言うとか馬鹿にしてくるとかそういうわけではない。少年が旅の間始終話しかけているのは彼が乗っている騎獣に対してだ。

 少年は自らが乗る騎獣に対し、まるで恋人に話しかけるように言葉を紡いでいる。いや、間違いなくその内容は恋人に対するものである。『人』の趣味嗜好は様々であるというが、しかし、自分の騎獣に愛をささやく者を見たのは初めてだ。自分のペットや騎獣を家族のように扱う者ならいくらでもいる。ヨーゼフだって、自分の愛馬『シュヴァルツ』を家族の一員として見ている。

 だが、恋人のように思ったことは一度としてない。

 ハッキリ言ってその様子は気持ち悪いもの以外のなにものでもない。それとなく周囲を歩いている部下達に視線を向けてみると、皆やはり自分と同じような奇異の目で少年を見ている。

 しかし、肝心の少年はそんな視線などどこ吹く風。全く気にしていないどころか、ますますその口調を甘くして己の騎獣に話しかけている。


「玉藻さん、重くないですか? 疲れたらすぐに言ってくださいね。僕降りて、歩きますから」


「玉藻さん、見てください。あんなところに鳥が飛んでいますよ」


「玉藻さん、夕ご飯何がいいですか? リクエストがあれば御聞きしますけど」


 などなど。

 聞いているだけで胸やけを起こしそうな内容である。別に聞こうと思って聞いているわけではない。周囲があまりにも静かである故に、どうしても聞こえてしまうのだ。最初のうちは意識して無視していたのであるが、無視し続けるのにも限界がある。

 流石にこれ以上は我慢できないと判断したヨーゼフは、少年を黙らせようと口を開きかけたのであるが、どうやら我慢できなくなったのは彼だけではなかったらしい。彼が口を開くよりも早く彼の部下達が怒鳴り声をあげた。


「おい、小僧。いい加減その気持ち悪い言葉を吐く口を閉じろ」


「おまえがどんな趣味嗜好をもっていようが一向にかまわねぇが、やるなら人のいないところでやれ」


「全く。いろいろな性癖を持っている者を見てきたけど、自分の騎獣に欲情するって奴は流石に初めてだわ」


 堰を切ったように次々とこぼれ出す部下達の毒舌を聞いたヨーゼフは、口には出さないモノの内心ではどの言動ももっともだと深く頷き続ける。だが、一応騎士隊を預かる隊長としてはそのままにしておくわけにはいかない。本心がもれないように、殊更しかめっ面を作ったヨーゼフは、部下達を制止すべく口を開こうとした。

 だが、またしても彼の言葉が口からこぼれ落ちることはなかった。

 部下達が一斉に口を閉ざしたからだ。

 そのことに気がついたヨーゼフは、怪訝に思いつつ部下達の方へと視線を向ける。すると、そこには一様に青白い顔をした部下達の姿。いや、部下達だけではない。部下達が乗っている騎獣達もまた動きを完全に止め大きく震えているではないか。あまりにも異様な様子の部下達に、ヨーゼフは『シュヴァルツ』を止める。そして、唐突にあることに気がついた。

 皆、ある一点をみつめて固まっているのだ。

 ヨーゼフは恐る恐るその視線の先を追い掛ける。


「!?」


 それを見たとき、ヨーゼフはかろうじて悲鳴を飲み込むことに成功した。

 彼らの視線の先にあったもの、それは、恐ろしい形相をした一匹の大狐の姿。雪のように真っ白な顔に血のように赤い隈どり模様が入った凶悪な面相の狐が、部下達を睨みつけていたのだ。ヨーゼフの部下達は皆、彼よりも年上の者ばかり。彼よりも古くからこの旅団に在席し、潜り抜けてきた修羅場も並大抵のものではない。そんな彼らが完全にビビって恐怖の色を顔に出してしまっている。

 いや、恐怖を感じているのは彼らだけではない。決して認めたくはないが、ヨーゼフ自身も同じだった。


『な、なんなんだ、この狐は』


 ガスマスク姿の少年を背に乗せたまま振りかえり、こちらを睨みつけている一匹の獣。その瞳から放たれている光は尋常なものではない。ハッキリ言って飼いならされた普通の騎獣なら絶対に持ち得ない光。

 まるで一流の武芸者に殺意を込めて睨みつけられたような、そんな気分である。

 身じろぎどころか舌すら動かせなくなっている部下達に代わり、なんとかこの空気を打破しようとヨーゼフは全力を振り絞って言葉を口にしようとするが、どうしても口が開かない。それどころか少しでも気を抜けば歯の根が合わなくなってしまいそうだった。

 それほどのプレッシャー、そして、それほどまでに強烈な殺意。

 ヨーゼフもヨーゼフの部下達も、ヨーゼフ達が乗る騎獣達も、皆揃って彫像のように固まる中、一つの人影が静寂を破って動き出す。


「ありゃりゃ、怒られちゃいましたね、玉藻さん。浮かれすぎちゃってたようです。要反省ですねぇ」


 のんびりとそう呟きながら自分が乗っている大狐に優しく話しかけた少年は、狐の首筋をそっと撫ぜる。すると、大狐は殺意の色を瞳の中から瞬時に消す。そして、先程までの殺意の籠った視線とは打って変わった穏やかな色を瞳に宿して少年に自分の大きな首をすりつける。甘えてくる大狐に、少年は両手でその首を抱きしめることで応えひとしきりスキンシップを楽しんだあと、ヨーゼフ達を残して再び歩き出した。

 そんな少年と狐の姿を呆気にとられて見送るヨーゼフ達。

 だが、しばらくして我を取り戻すと、先行してしまった一人と一匹を猛然と追い掛ける、幸い、相変わらずののんびりした歩調で歩いていたため、彼らに追いつくのはそれほど難しいことではなかった。

 憎たらしいほど何事もなかったかのように歩き続ける二つの影。

 これまで以上に強くなる不信感。頭から侮るような考えは既にヨーゼフの中には存在していない。だが、だからといって彼らを認められるわけではない。


『気持ちの悪い奴らだ。だが、ここで舐められるわけにはいかない』


 傭兵の世界は力が全てだ。どれだけ崇高な目的と気高い意思を持っていたとしても力のない者の言葉は誰も聞いてはくれない。野生に生きる獣達の世界と同じ。誰が上で誰が下なのか、最初にハッキリと示しておく必要がある。

 ヨーゼフは先行部隊の指揮者としての立場をあの少年にハッキリ示しておくために、勇気を振り絞り彼の者の横に自分の愛馬を横付けさせる。


「おい、そこの黒づくめ」


「えっと、それは僕のことですよね?」


 抽象的なヨーゼフの呼び掛けを無視することもなく、黒衣の少年はおっとりとした感じで返事を返して横へと視線を向けてくる。ガスマスクのせいでその表情は見えないが、物騒な気配は感じられない。ヨーゼフは内心ほっと安堵の息を吐き出しながらも、表面上は殊更いかめしい顔を作って少年のことを睨みつける。


「急ぎ出立したため満足に挨拶も交わさないままであったが、あらためて挨拶をしておく。俺はヨーゼフ・メックリンガー。武装交通旅団『白光のカーテン』の七番隊隊長。そして、今回の先行露払い任務の責任者でもある。つまりこの場では俺が指揮官ということだ」


「ああ、そうでしたか。これはご丁寧にどうも。僕の名前は」


「おまえの名前はどうでもいい。それよりも、この際だからハッキリ言っておく。貴様が中央庁でどういう評価を受けているか知らないが、この現場は全て我々が仕切る。お前達助っ人は黙って見ていろ。そして、一切手を出すな」


「は、はぁ」


「ふん」


 一方的にそう断言したヨーゼフ。肯定とも否定ともつかぬ曖昧な返事を返すガスマスクの少年にその真意を確認しようともせぬままに、少年を追い越し鼻息荒くその場を立ち去っていく。

 別にガスマスクの少年に対して特別憎しみを抱いているわけではない。気に入らないとは思っているのは確かであるが、仕事が仕事であるから普段ならその心を押し殺して表には出さなかった。だが、今回の仕事ばかりはどうしても失敗したくない理由がある。よそ者に邪魔をされるわけにはいかない。絶対にいかないのだ。

 城砦都市『アルカディア』へ向かう今回の任務、ただ街道の安全を確認し『アルカディア』に辿り着けばいいという単純なものではない。

 彼ら『白光のカーテン』には公にされていないある重要な任務が課せられている。

 その任務とは北方諸都市の要人達を護衛し『アルカディア』に送り届けるというもの。当り前であるが、この一年、南方とは音信不通で、あちらの情勢がどうなっているのか全くわからないまま。当然、向こうもこちら側の情報は一切いっていないはず。ひょっとするとこの一年の間に命知らずの何人かの傭兵やハンターが数人辿り着き、こちらの情報がわずかなりとも伝わっている可能性はある。

 だが、例えそれらが伝わっていたとしても、街道は封鎖されたままである以上、その情報の真偽を確認をすることができない。ならばその情報はないも同じだ。

 そもそも傭兵やハンターから伝わった情報にどれほど信憑性があるというのだろう。それではダメなのだ。

 政界、財界、そして、その他各分野の然るべき立場の者達が、現在の状況を南方に伝えに行く必要がある。

 そして、一刻も早く北方と南方の交易を本当の意味で再開させなくてはならない。そのために今回の任務、絶対に失敗することはできない。


 と、いうのはあくまでも建て前だ。


 ヨーゼフにとって、政界、財界のお偉いさんがどうなろうと正直どうでもいい。そちらは団長と旅団の重鎮の皆さまがしっかり守ってくださるであろう。そっちは勝手にやってくださいという感じである。彼が守りたいのはたった三人の女性。

 いや、恐らくそれは彼だけではない。旅団の若い戦士達の多くがヨーゼフと同じ想いを抱いているに違いない。

 その女性達は『Pochet(ポシェット)』という。そう、北方諸都市最大のアイドルグループだ。ヨーゼフは彼女達の大ファンである。

 デビュー当時からファンだったというわけではない。どちらかといえば元々ヨーゼフはアイドル否定派であった。アイドルなんて見た目だけ。実際には歌を歌ってはおらず、バックに隠れている影武者に歌わせるハリボテだ。そんな風に思っていた。

 だが、ある曲との出会いが彼の心を百八十度反転させる。

 旅団の兵士となって間もない頃、彼は友人の一人との死別を経験する。同じ部族に生まれ、ずっと一緒に育ってきた大切な友人。迷うことなく『白光のカーテン』に入団したヨーゼフと違い、彼は別の世界に自分の居場所を求めた。高校の卒業時、別の傭兵旅団へと入団し一族から去って行った友人。その彼とヨーゼフは数年後、思わぬ形で再会することとなる。

 彼が所属する『白光のカーテン』が北方のある都市に向かうに当たって新規ルートを開拓することになったとき、それをサポートしてもらうべくある傭兵旅団に助力を頼んだ。それはヨーゼフの友人が所属する傭兵旅団であった。

 思わぬ再会に驚きつつも、お互いの成長を喜びあう。だが、その喜びもつかの間。友人は、その旅の途中で命を落とす。誰が悪かったわけでもない。運が悪かったとしかいいようがない。

 狭い谷底を進行中に、突然起こった落盤事故。十分気をつけて通行していた為、旅団本隊は無事であったのだが、旅団から少し後方に離れた場所で警戒任務に就いていた友人は一緒に任務にあたっていた他の隊員諸共生き埋めとなってしまったのだ。

 あまりにも突然の別離。そして、それはヨーゼフにとって親しい人との初めての別れ。兵士となってから何人もの人を見送ってきたヨーゼフであるが、皆、それほど親しいものではなかった。

 それだけに受けた衝撃はあまりにも大きく、彼はしばらくそこから立ち直ることができず家の中で一日中放心して過ごす日々が何日も続いた。このまま兵士として一生復帰できないかもしれない。そう思い始めたとき、彼はテレビから流れてきたある曲を耳にする。

 それは鎮魂歌。悲しい曲調の中に、なんとも言えない優しさが満ちたその歌にいっぺんでヨーゼフは魅せられた。その歌に大いに励まされ心を癒されたヨーゼフは友人の死を見事乗り越える。

 そして、ヨーゼフはその歌を歌っていたアイドルグループ『Pochet(ポシェット)』の大ファンとなったのだった。


『あの人達の前で絶対無様を晒すわけにはいかない。俺にもう一度戦う力を与えてくれたあの人達の前でだけは絶対に』


 やはりその想いを声に出したりはしない。歯を食いしばり心の中だけでそう強く想う。

 彼女達のファンとなり、彼女達の歌を聞くたびに、彼女達を知るたびに強く大きくなっていく彼女達への想い。

 嬉しいときも、悲しいときも、怒りに我を忘れたときも、楽しくて仕方ないときも、いつも彼女達の歌がすぐ側にあって彼の人生に彩りを与えてくれた。

 ヨーゼフにとって『Pochet(ポシェット)』はテレビ画面の向こうのただのアイドルなどではない。憧れ以上の何か。ヨーゼフの人生にとって絶対になくてはならない大事で大切な人達。

 そんな想いを抱くヨーゼフの前に、彼女達を自らの手で守る機会がやってきたのだ。ここで男を見せずしていつ見せるというのか。彼女達に自分の雄姿を直接見てもらえるとは限らない。だが、そんなことはどうでもいい。大事なのは彼女達を自分の手で守りきるという一事のみ。そのためには不安要素が少しでもあってはいけないのだ。

 ヨーゼフの脳裏にガスマスクをつけた貧相な体つきの少年の姿が浮かび上がる。

 中央庁から派遣されてきた『外区』のエキスパートか何か知らないが、自分達以上に実力があるとは到底思えない。素人よりも多少使える程度では困るのだ。そんな輩に現場を引っかき回されて大事な使命を果たせなくなってしまうようなことになったら目も当てられない。

 尊敬する団長の命令ではあるが、ここだけはどうしても譲れない。

 少年に向けて放った拒絶の言葉を、ヨーゼフは全く後悔していなかった。

 自分達だけで必ず任務を達成し、彼女達を守る。

 決意も新たに愛馬の歩みを進めていくヨーゼフ。

 だが。


「・・・ぺっ」


 背中を向けたヨーゼフの耳に聞き流すことのできない一つの音が聞こえてくる。驚き慌てたヨーゼフは後ろを振り返った。すると、何故かめちゃくちゃ慌てている様子のガスマスクの少年と、信じられないものを見たという部下達の姿。今の音は間違いない。誰かが唾を吐いたのだ。

 そして、自分以外の者全てがその犯人を見ている。

 部下達では当然ない。たまに喧嘩をすることもあるが、それでも彼らの中に自分に対して唾を吐きだすような輩は存在していない。

 ガスマスクをつけたままの状態の少年に唾を吐けるわけがないので彼でもない。と、なるといったい誰が唾を吐いたというのだ。しかも明らかに自分に聞こえるようにわざと大きな音を立てていた。

 しばし唖然とした表情を浮かべて自分の後ろに続く者達に視線を向けていたヨーゼフであったが、あまりにも無礼な行いにその顔を怒りの赤に染めていく。


「誰だ、今唾を吐いた奴は」


 獰猛な唸り声をあげるヨーゼフに対し、隊員達はなんともいえない困った表情を浮かべて固まっていたが、やがてその中の何人かがおずおずと指先をある一点へと向ける。

 複数の指先は全てある一点を指し示す。


「黒づくめ。おまえか」


「い、いや、その、あはは、ま、まいったな」


 指先の向こうにいるガスマスクの少年は焦りに焦ったような様子で両手を振り続け返答に困っていたが、今にも殴りかかりそうな勢いのヨーゼフに慌てて部下達が制止の声をかける。


「ち、違います隊長、その小僧じゃありやせん」


「しかし、おまえら、この黒づくめを指さしているじゃないか」


「そいつじゃなくて、そいつが乗ってるその狐ですわ」


「はぁ?」


 部下達の言葉の意味がわからず、毒気が抜かれたようにきょとんとしてしまうヨーゼフ。思わず部下達に疑いの視線を向けてしまったヨーゼフであったが、部下達はみな一様に真面目な表情で頷きを返すばかり。

 ズラリと並ぶその顔の中に一つとしてふざけた様子の表情を持つ者はいない。そして、なによりも部下達の言葉を雄弁に肯定しているのは、皮肉気な『嘲笑』を浮かべてこちらを見つめている一匹の狐の姿。

 そう『嘲笑』だ。

 『人』に飼われる乗騎に過ぎぬただの畜生がヨーゼフを見てあざ笑っているのだ。

 ヨーゼフの背中を冷たい何かが流れていく。煮えたぎるような激しい怒りの炎は今は既になく、その代わりに腹の底にずんと沈みこんでいく得体の知れない何かがある。

 

『いったいこいつはなんなのだ』


 やはりヨーゼフの口から言葉は出てこない。

 今度は押し殺して出さなかったわけではない。心の中で呻くだけで精一杯だったのだ。それでもヨーゼフは、内にある様々なものが砕けて折れそうになるのを必死に抑えつけ、力を振り絞って狐を睨みつける。

 ここで引くわけにはいかないのだ。

 ヨーゼフは再び主導権を握るべく口を開こうとする。

 だが、またしても彼の言葉は外に出ることはなかった。


「襲撃だぁっ!」


 部下の一人が発した絶叫に、ヨーゼフは口を慌てて閉じるとそちらへと視線を向け直す。声の主は街道の西側、死の森のすぐ近くにいた。次々と森の中から飛び出してくる馬のような何かから、逃げるようにしてこちらに必死に走ってくる。


「なんてこった、ありゃ、『コブララプター』じゃねぇか」


「よりによってなんてやつが出てきやがる」


 襲撃者達の正体に気がついたベテラン騎士達が、たまらず呻き声をあげる。


『コブララプター』


 シルエットだけならば『馬』のような姿をしたその生き物はしかし、馬のような温厚な生物では決してない。全身を覆うのは青黒く不気味に光る爬虫類の鱗。四本の足の先には蹄ではなく鳥のような鋭く大きな鉤爪。そして、その頭部は猛毒を持つ人食い蛇『コブラ』のそれ。

 常に二十匹から三十匹からなる群れで行動し様々な生き物を狩って生きている。その性格は獰猛にして狡猾。流石に『害獣』に喧嘩を売るような真似はしないが、自分達よりも大きな生き物であっても恐れることなく襲いかかり見事なチームワークで狩りとってしまう。

 元々南方の熱帯雨林地方に生息し、一年前まではこの周辺には存在してはいなかったわけだが。


「街道が封鎖されているうちに南方から流れて来たのだろうな」


「こっちには奴らを狩る専門ハンターがいませんからね」


「厄介なことだ」


 『コブララプター』は あまたの原生生物達の中でもかなり厄介な部類に入る危険な生物。

 それ故に南方では専門のハンター達が存在し、地域の安全の為に定期的にラプター達を狩っている。恐らくそんなハンター達に追われた群れの一つが、封鎖されて人がいなくなったこの街道へと迷い込み、そのままいついてしまったのであろう。

 ヨーゼフは盛大に舌打ちをもらしそうになるがなんとかそれを抑えると、浮足立つ部下達のほうへと体ごと向きなおる。


「浮足立つな! 盾職、俺に就いてこい。『白光のカーテン』護衛騎士七番隊の実力がどれほどのものか、畜生どもに見せてやるんだ!」


 いち早く状況を把握したヨーゼフは、部下達を一喝。愛馬を駆って、森から現れた『コブララプター』の群れ目掛けて一直線に突き進んで行く。

 背中から吠える虎の紋章が刻まれた大楯を取り出して前に突き出し、左手には長方形に近い形をした広刃の片手剣。逃げてきた部下の背中に今まさに鉤爪を振りおろそうとしていた『コブララプター』の一匹に近づくと、愛馬の突進そのままの勢いで大楯を叩きつけて吹っ飛ばす。


「隊長、すまねぇっ!」


「謝罪は後でいい。隊列に戻ってすぐに戦線に復帰しろ。殲滅するぞ!」


「おうっ!」


「俺を見ろ、畜生どもっ! ウルゥオオオオオッ!」


 空に響き渡る白虎の雄々しき咆哮。

 その咆哮を聞いた『コブララプター』の群れは一斉にヨーゼフの方へと視線を向け直す。

 盾職の基本技術の一つ『守人の大見得』。

 仲間を守るという強烈な意思の元で放たれる裂帛の気合が、敵の意識を自分の方へと集中させる。敵を引きつけて仲間達を守る盾職にとってなくてはならない必須技術であるが、敵を引きつけていられる効果時間、その効果範囲などはその技術にどれだけ精通しているかによる。

 ではヨーゼフがどれくらいこの技術に精通しているかといえば。


「流石、隊長だぜ」


「ほとんどのラプターが隊長にひきつけられているわ」


「盾職の人って、どうしても自分の防御力をあげる技術ばかり修練する人が多いけど、隊長はその辺よくわかっているわよね」


「だな。隊長は自分の防御技術をあげるよりも部隊全体の守備能力をあげる技術を特に力をいれて修練しているもんな」


「だからこそ、あの若さで騎士隊の隊長に抜擢されたのさ」


 誇らしげに自分達の隊長を称賛する隊員達。

 突然の奇襲に浮足立った隊員達であったが、自ら先陣に立ち敵の攻撃を一身に受ける隊長の姿を見て奮い立ち次々と戦線へと向かって走り出して行く。

 ヨーゼフと同じく全身を金属鎧で包み、大楯と広刃の片手剣で武装した盾職の者達が彼の横へと並ぶ。隊長一人に攻撃全てを集中させるわけにはいかぬとばかりに、彼らもまた『守人の大見得』を発動させる。ヨーゼフほどの効果はなかったが、それでも何匹かのラプターはヨーゼフから離れ別の盾職の者へと向かっていく。

 ヨーゼフを始めとする全身鎧の騎士姿の者達は、微動だにせずに真正面からラプターの攻撃を受け捌き続けている。


『フォートレス』


 最も防御力に秀でたスタイル。

 全身を強固な金属製の鎧甲冑で固め、大楯を装備して敵の攻撃を真正面から引き受ける。動きは当然鈍重になってはいるが完全に防御に特化しているため、大ダメージを食らって即死するということがほとんどない。

 ヨーゼフ、及び彼が率いる騎士隊のほとんどの者達はこの『フォートレス』である。

 他に『トリックスター』、『グラップラー』と呼ばれる盾職のスタイルが存在しているが、『白光のカーテン』で盾職と言えばこの『フォートレス』だ。

 『トリックスター』は特殊な幻術を使って相手を挑発、撹乱しパーティの盾となるスタイル。

 『グラップラー』は相手の攻撃に合わせて放つ強烈なカウンター攻撃で敵を退けるスタイルだ。

 どちらもそれぞれの特性を活かしてパーティの盾となり、敵の攻撃を防ぐことができるスタイルではあるが、どちらも『フォートレス』ほど防御力は高くない。『トリックスター』は基本的に相手の攻撃をかわすことを前提にした盾職であるし、『グラップラー』は『フォートレス』と同じく正面から敵の攻撃を受けはするが、カウンターを合わせると言う高度な技術を使用するため、動きを邪魔する金属製の鎧や大楯は身に着けない。

 攻撃そのものをほぼ確実に食らうことになるため、怪我を治してくれる回復担当が絶対に必須となるというデメリットはあるものの、強固な防御力を誇るため大怪我を負うということは滅多になく、戦線を安定して維持することができる。事実、奇襲を食らったにも関わらずヨーゼフの部隊は既に落ち着きを取り戻しコブララプターの群れを完全に抑え込んでいた。

 ヨーゼフを始めとする三人の『フォートレス』達がコブララプターの攻撃を完全にひきつけ、その横や背後から攻撃を担当する矛職の者達が次々と自慢の大技を繰り出していく。回復や強化を担当する陽職の者達がヨーゼフ達盾職の者達をバックアップし、敵を弱体化させることを担当する陰職の者達が毒や麻痺の術式で矛職の者達の直接攻撃をアシストする。

 見事な連携攻撃。ヨーゼフの指揮官ぶりも実に堂に入ったものであるが、彼に続く隊員達の働きも無駄がなく洗練されている。

 彼らもまた音に聞こえた武装交通旅団『白光のカーテン』の一員である証拠であった。


『よし、いいぞ。これなら勝てる』


 完全に態勢を立て直し、『コブララプター』達の攻撃を抑え込むことに成功したことをヨーゼフは確信する。

 未だ一匹も倒してはいないが、『朦朧』や『拘束』の術式を駆使する陰職によって多くの『コブララプター』達が攻撃に参加できずに足止めされ、攻撃可能な数匹のラプター達はヨーゼフ達盾職がきっちりシャットアウト。

 攻撃を担当している矛職の者達が順調にラプター達の体力を奪い取っていっているし、ダメージを負い続けている盾職の者達は回復担当の陽職の者達がきっちりサポートして治し続けている。

 このままいけば彼が率いる第七番隊だけで殲滅することも可能。

 敵の攻撃を防ぎながら周囲を見渡したヨーゼフは、部下達が完全に態勢を立て直し反撃に出ていることを確認。みな、落ち着いていつも通り自分の役割を果たし始めている様子を満足気に見つめていたが、ふと視線の中に気になる二つの影が映る。

 それはあのガスマスクの少年と大狐の姿。

 少年は何故か地面に座り込んでおり、自分が背負っていた大きな袋の中を必死になってかきまわしている。どうやら何かを探しているようだ。いったい何をしているというのか。

 狐は狐で少年の前に座り込んで大あくびをしており、目の前で繰り広げられている死闘のことになぞ全く興味なしといった雰囲気。 

 自分達が必死になって『コブララプター』と戦っているというのに、なんという奴らであることか。彼らのことは最初からあてになどしていなかったので、別にどうということもないわけであるが、しかし、この戦いが終わったらきっちり話をつけねばなるまい。

 ヨーゼフは自身の命だけでなく大勢の部下達の命をも預かっているのである。ちょっとしたミス一つで命を落としかねないこの危険な戦場には、足手まといも役立たずも必要ない。


『中央庁からの紹介か何か知らないが、早々にこの場から立ち去っていただくとしよう』


 胸の中でそう決意を呟いた後、ヨーゼフは再び目の前のコブララプターへと意識を集中する。

 無骨なフルフェイスヘルメットの下で、虎は舌なめずりする。招かれざる観客はいるものの、今の状況そのものはまさに自分が待ち望んでいたそれ。

 この行軍に害なす凶悪な原生生物の群れを討伐し、多数の躯を手に本隊に凱旋する自分達をヨーゼフは脳裏に思い描く。その際ヨーゼフ達の雄姿を本隊にいる『Pochet(ポシェット)』の面々は必ず目撃するはず。

 憧れの彼女達に一番かっこいいところを見せることができる。そう考えるだけでヨーゼフの心と身体に言い知れぬ活力が湧き上がってくる。


「いいか、良く聞け貴様ら。何としても我々だけで片を付ける。我ら七番隊こそがこの『白光のカーテン』最強の部隊であることを示すのだ!」


『おうっ!』


 ヨーゼフの雄叫びに騎士達が応えを返す。最前線で身体を張って戦い続ける隊長の姿に皆、闘志を燃え上がらせるのだった。

 こうして、『コブララプター』の戦いは騎士隊優勢のまま進んでいく。

 騎士隊の誰もが自分達の勝利を信じて疑わなかった。


 だが、その均衡は突如として崩れる。


 二匹の『コブララプター』に引導を渡し、三匹目もそろそろ倒れるというそんなときであった。次のラプターを前線に招き入れようと盾職の一人が動こうとしたそのとき、突如としてその身体が崩れ落ちる。


「な? カール? どうした?」


 いち早く異変に気がついたヨーゼフが、すぐ側に倒れ込む部下に声をかける。


「す、すいません、隊長。か、身体が突然動かなくなって」


「なに!?」


 地面に倒れたままの状態で、ぴくぴくと痙攣を続ける部下の姿を唖然として見つめ続ける。だが、悠長にそんなことをしていることはすぐに出来なくなってしまった。慌てて彼のフォローに入ろうとするヨーゼフであったが、今度は彼自身が地面へと倒れ込んでしまったのだった。


「な、なに、お、俺もなのか」


「隊長、自分もであります。ぐ、ぐあああ」


 なんと盾職三人ともに地面へと倒れ込んでしまったのである。

 だが、別に三人とも重傷を負っているわけではない。むしろ、傷はほとんどない。強固な鎧の隙間を縫って爪や牙がかすってできた引っかき傷があるくらいで、行動不能になるほどの大きな傷は三人ともに全くない。

 いったい自分達の身に何が起こったというのか。

 パニックに陥りそうになる心を懸命に落ち着け迫りくる敵の攻撃をなんとか防ごうとする。だが、身体が一切動かない。敵の攻撃を防ぐ盾をもつ左手は勿論、牽制のための剣を持つ右手も、攻撃を避けるための足も、腰も、腹も、胸も何もかもが動かない。かろうじて息はできているししゃべることもなんとか可能であるが本当にそれだけしかできない。

 茫然とするヨーゼフ達盾役三人に、『コブララプター』達の容赦ない攻撃が振りかかる。分厚い装甲が自慢の全身鎧と、あらかじめかけてあった強化術式のおかげで今のところ大した実害はないが、全身鎧もこれだけ滅多打ちにされればいずれは壊れて役に立たなくなるし、強化術式はいずれは効果がきれる。

 何よりも盾職である彼らが定期的に奴らを挑発し攻撃を引きつけていなければ、やがて襲撃者達の目標は自分達からそれてしまう。

 そうなってしまったら最悪だ。

 回復や強化を行っている術者は勿論、攻撃を行っている前衛職の者達も奴らの攻撃に耐えられるだけの防御能力を持ってはいない。目を付けられたが最後、あっという間に殲滅させられてしまうだろう。


(不味い、まずいぞこれは!)


 内心で盛大に焦りながら身体を必死に動かそうとするヨーゼフ。ヨーゼフだけでなく他の盾職二人もまた同じように身体を動かそうとするが、三人ともどれだけ力を入れても貧乏ゆすりほどにしか動かない。

 時間だけが無情に過ぎていく中、ヨーゼフの心を絶望という闇がゆっくりと浸食していく。

 だが、ヨーゼフの部下達は無能ではなかった。唐突にヨーゼフ達への攻撃がやむ。動かぬ身体を無理矢理に動かして視線を向け直すと、そこには攻撃に加わっていた中衛職の者達の姿。

 みな攻撃仕様の装備から、防御仕様のものへと変えてコブララプターの攻撃を防ぎ続けている。


「隊長、大丈夫ですか!?」


「おまえたち」


「ここは我々が支えますので一旦下がってください」


「すまん」


「おらおら、おまえらの相手は俺達だ!」


「かかってこいやぁ!」


 足並みをそろえラウンドシールドを掲げた状態でラプター達に突進。密集するラプター達を力任せに突き飛ばした中衛職の『ファイター』達は、一定間隔で広がって防波堤となる。

 その間に飛び込んできた他の者達が、ヨーゼフ達の身体を引っ張って後方へと退避。後方支援を仕事とする陽職の中でも特に回復に特化した『メディック』の者達がぐったりして動かないヨーゼフ達盾職に状態異常解除の術をかけ始める。


「急いでくれ。防御が専門ではない『ファイター』ではそれほど長い間前線を支えることはできまい」


「は、はい。わかっています。わかっていますから、しばらくお待ちを」


 ヨーゼフの言葉に、若い『メディック』の一人が苦い表情で応えるがどうにも顔色がよくない。この緊急事態に自分と同じく焦っているのかと思い、その後、しばらく黙って見守っていたヨーゼフであったが、いつまでたっても身体の自由が取り戻せないことについに口を開いた。


「おい、どうなっているんだ。いくらなんでも時間がかかり過ぎているだろう。早く状態異常解除の術式を」


「かけています。かけていますけど、効かないんです! いくら『解毒(キュアポイズン)』の術式をかけても一向に症状が改善されないんです」


 たまりかねたように放たれたヨーゼフの怒鳴り声に対し、負けずお劣らぬ大声でヒステリックに若い『メディック』が喚き散らす。

 その言葉の意味がわからず一瞬、口を大きくあけらままぽかんとしていたヨーゼフであったが、すぐにそんな場合ではないと我に返り若い『メディック』を睨みつける。


「ば、バカヤロウ。なんで『解毒(キュアポイズン)』なんだ? そんな基本術式じゃなくて上位回復術式の『特効快癒(キュアオール)』をかければ一発だろうが。なんでそれを使わない?」


 『特効快癒(キュアオール)


 あらゆる状態異常を解除し回復させる最高の回復術式の一つである。

 『毒』は勿論、『麻痺』、『沈黙』、『火傷』、『凍傷』といったポピュラーな状態異常から、『石化』、『疫病』といった厄介な異常に至るまで、この術式一つで治すことができる。

 その為、どんな傭兵旅団にも一人以上は必ずこの術式を使える者が常駐している。勿論、『白光のカーテン』だって例外ではない。いや、『白光のカーテン』では旅団単位ではなく騎士隊単位でこれらの術式が使える術者が配置されているのだ。

 今、ヨーゼフの目の前にいる年若い『メディック』もその一人だ。


「お前たちはみな上位術式の使用を許可された『回復療術』の一級免許もっていただろ? 早くしろよ、一刻を争うんだぞ」


「・・・できません」


「そうか、できないか、だったら早く術式を・・・って、はぁ? で、できない? 今、『できない』って言ったのか?」


 自分の耳に飛び込んできた言葉の意味が今度こそわからなかったヨーゼフは、その言葉を口にした若い『メディック』に視線を向け直す。すると、そこには悔しげな表情で唇をかみしめ立ち尽くす一人の青年の姿。いや、彼だけではない他の『メディック』達もまた同じような表情で立ちつくしている。


「お、おいどういうことだ」


「・・・ないんですよ。一つもないから『特効快癒(キュアオール)』の術式をかけることができないんです」


「『ない』・・・とは?」


「『特効薬(バイオセイバー)』です。『特効快癒(キュアオール)』をかけるために必要な触媒の『特効薬(バイオセイバー)』が我が隊には一つも残っていないんです」


「な、なんだとぉっ!」


 『メディック』の青年の思わぬ告白にヨーゼフは愕然となる。


 『特効薬(バイオセイバー)


 既存の病気や麻痺の毒の治療だけではなく重度の疫病や、石化でも瞬時に治すことができるという文字通の特効薬。勿論全部が全部治せるわけではないが、それでもこれ一本で、身体に異常をきたす症状のほとんどを治療できる。特にこの薬のすごいところは他の薬と違い飲まなくてもいいというところである。身体のどの部分でもいいからかけることができれば、瞬時に効果を発揮するのだ。 

 『特効快癒(キュアオール)』はこの薬を触媒として発動する回復術式。

 術者の使い方一つで広範囲に術を拡散させ複数の患者を治すこともできれば、効力を強めて状態異常を治すと同時に体力を回復させたり傷を修復したりといったこともできる。

 だが、逆にこの薬がなければ術式を発動させることはできない。どんな術式もそうであるが、触媒なくして術式を発動させることはできないのだ。

 そんな強力極まりない薬品であるから『特効薬(バイオセイバー)』は傭兵やハンターだけでなく一般市民にとってもなくてはならない薬品なのであるが。


「そ、そうか、アルカディアとの街道が封鎖されていたことが原因か」


「はい。『特効薬(バイオセイバー)』の原材料の『神酒(ソーマ)』はアルカディアの特産品なのです。街道が封鎖されてから輸入されなくなって、『特効薬(バイオセイバー)』も・・・」


「『解毒』や『解痺』の術式で代用できないかと頑張ってみたのですが」


 基本術式の『解毒』や『解痺』の術式でも状態異常はきちんと治すことはできる。

 別に『特効快癒(キュアオール)』がなくては状態異常が治せないというわけではないのだ。しかし、基本術式である『解毒』や『解痺』といった術式には大きな欠点がある。それは、解除しなくてはならない『毒』や『麻痺』の種類に応じて、それを治療することが可能な薬品を触媒としなくてはいけないということである。


「我が隊にある薬品では隊長達の『麻痺』状態を治療することはできませんでした」


「なんてことだ」


 絶望的な状況にヨーゼフの表情はみるみる青ざめていく。いまのところ中衛職の『ファイター』達がコブララプターの攻撃をなんとか捌いてくれているが、所詮そんなものは一時的な時間稼ぎにすぎない。それほど時間を置くことなく前線は崩壊してしまうだろう。

 なんとか現状を打破する方法はないかと必死に考えを巡らせる。だが、何もいい考えなど浮かんではこない。でてくるのは後悔ばかりである。


(奴らが奇襲をかけてきたときに本隊にすぐに援軍の要請をしていれば。目先の武勲に惑わされ完全に指揮を誤った。この窮地は俺のミスが招いたことだ)


 それでも尚、なんとか少しでも動くことができないかともがき続けるヨーゼフ。しかし、そんな彼に更なる絶望が襲いかかる。


「隊長。ここは私達でなんとか食い止めます」


「隊長達は後衛職の者達と一緒に本隊まで退避してください」


「ま、待て、おまえたち」


「行くぞ、みんな」


『おう!』


 まだ身体を動かすことができる隊員達は、ヨーゼフ達盾職の者たちの身体を小型の馬車の中に放り込んだ後、戦場に向かって走り出して行く。

 絶望的な戦いに身を投じていく部下達の姿を見て、ヨーゼフの瞳に涙が浮かぶ。だが、それすらも霞んで見えなくなっていく。彼らの身体の自由を奪っているラプター達の毒が、その意識すらも奪おうとしていたのだ。

 薄れゆく意識の中、ヨーゼフはラプターの群れの中に埋もれていく自分の部下達の姿と、そして、一人の美しい美女の姿を見た。

 金髪に狐の耳を持ち、メリハリのきいた素晴らしくグラマラスな肢体を持つその美女は、ヨーゼフのことをじっと見つめていた。

 嘲るような表情を浮かべて。


(あれは、いったい)


 どこかで見たことがある。

 そんなことを考えながら、ヨーゼフの意識はゆっくりと闇の中へと落ちて行った。


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