第二話 お~ぷにんぐ
玉藻:連夜くん、連夜くん、あっそび~ましょ~。って、何してるの? 部屋の中、物で溢れかえっちゃってるけど?
連夜:箪笥やクローゼットの中を整理しようと思ったんですけど。いや、もう、全部出してから片づけようと思ったのが大失敗でして。出してみたのはいいのですが、予想をはるかに上回る物凄い量だったんですよねえ。
玉藻:ほんと、よくもまあこれだけ広げ散らかしたものねえ。ってか、この部屋の中にこれだけの物が眠っていたってことのほうが驚きだけど・・ともかく、片付けないと終わらないわね。私も手伝ってあげるね。
連夜:すいません、足もとに気をつけてくださいね。
玉藻:うん、大丈夫大丈夫。しかしまあ、いろいろなものがあるわねえ。
連夜:ええ、この部屋は僕が倉庫兼作業場として使っていた部屋ですからねえ。使わなくなった物とかいっぱい放り込んでいたんですねえ。
玉藻:あ、この子供服は連夜くんが小さい頃に着ていた服ね。あたしも見覚えがあるのがいくつかある。
連夜:そうですね、玉藻さんと最初に出会った頃に着ていた服とかもありますね。
玉藻:にしても、なんかどれもこれもボロボロね、まるで集団で殴られたり蹴られたりしてこうなったみたいな・・
連夜:あは、あははは(汗) まあ、子供でしたからいろいろとやんちゃに遊びまわっていたので、そうなっちゃっただけですから。あ、あまり気にしないでください(汗)
玉藻:連夜くん。
連夜:は、はい。
玉藻:あとで詳しく説明するように。
連夜:ええええええっ、は、はい・・(ど、どう言ってはぐらかそうかな)
玉藻:言っておくけど、肝心なところはぐらかしたら、許さないからね。
連夜:う、うひぃっ!! (にゃああああ、よ、よまれてるぅぅぅぅぅっ!!) と、ともかく、今は片づけに専念しましょう、そうしないといつまでたっても終わらないですし。ね! ね!
玉藻:まあ、確かにそうね。わかったわ。
連夜:ふ~~~。とりあえず、玉藻さんは、そっちのほうお願いします。小学校や中学校の時に使っていた教科書とかノートとかなんですけど、もう使わないので、廃品回収に出そうと思います。それでまとめておいてもらっていいですか?
玉藻:おっけ。しかし、この小学校の教科書懐かしいわねえ。私も同じ教科書使っていたわあ。あら? 中学校の教科書は私が知っているのと違うわね。
連夜:ええ。僕、中学生の時は城砦都市『通転核』に住んでいましたから。
玉藻:そうなんだ。あれ? でもミネルヴァはずっとこっちだったわよね?
連夜:両親と一部のメイドさん達、それに僕の数人だけが三年間向こうに行っていたんです。み~ちゃん達はこっちに住んでいました。
玉藻:お義母様の事情かしら?
連夜:両方ですね。お母さんの事情もあったし、お父さんの事情もありました。お父さんの仕事のほうで助手が必要だったので、兄弟姉妹の中で僕だけがついていくことになったんです。
玉藻:そっか~、そんなときからすでに連夜くんはお父さんの片腕だったのねえ。
連夜:えへへ、まあ、まだまだ修行中なんですけどね。
玉藻:で、それはともかく、私の注意をこっちに向けておいた隙に、そっちに隠したそれはいったいなんなのかしら?
連夜:!!(げげっ!! バレてた!?) ・・い、いやいやいや、隠しただなんてそんな、大したものじゃありませんから、御気になさらないでくださいませませ。
玉藻:ふ~~ん、でもさ、一瞬しか見えなかったから確証はないんだけど・・それってアルバムよね?
連夜:ぐふっ!!
玉藻:うふっ!! み~~、せ~~、て~~
連夜:ああああああ、これだけわあ、これだけわあああああっ!!
真・こことは違うどこかの日常
過去(高校二年生編)
第二話『狐と鴉』
CAST
如月 玉藻
城砦都市『嶺斬泊』に住む、大学二年生。二十歳。
上級種族の一つである霊狐族の女性。金髪金眼で、素晴らしいナイスバディを誇るスーパー美女。
この物語のヒロインであると同時にヒーローでもある。
「あんたたちみたいなのはね、『狐』に蹴られて地獄に落ちろ!!」
ミネルヴァ・スクナー
玉藻の幼馴染にして大親友。同じ大学に通う大学二年生。二十歳。
玉藻に匹敵する美女であるが、玉藻に比べるとややスレンダーで、モデル体型。
玉藻の初恋の相手の秘密を知っている。
「い、いやいや、本当なのよ。うん。か、かわいそうだけど、あの子のことはお願いだから諦めて。ね、ね」
ブエル・サタナドキア
玉藻やミネルヴァが通う都市立与厳大学の教授で、玉藻が敬愛してやまない『療術』の師匠。年齢不祥。『聖魔』族の中でもかなり上位に位置する種族の男性。
一族に虐げられていた玉藻を、後見人となることで救い出し、以後、影になり日向になって彼女を支えている。
『祟鴉』の正体を知る数少ない人物の一人。
「ズルしちゃいかんな、玉藻くん」
『祟鴉』
城砦都市『嶺斬泊』最大の歓楽街『サードテンプル』周辺に出没する謎の怪『人』。
全身を特殊な黒装束に身を包み、顔は『祟』の一文字がデカデカと書かれた白い仮面で隠しているため年齢、性別、種族、全てが一切不明。
事件のあるところに姿を現し、予測できない行動で場を掻き廻すため、「『サードテンプル』の『招かれざる乱入者』」と呼ばれて恐れられている。
『勅令! 【散布】!!』
玉藻:・・(唖然)
連夜:・・
玉藻:・・(呆然)
連夜:・・
玉藻:・・え、マジで? マジでそうなの? ここに映っているのって、本当に本人なの?
連夜:・・はい。
玉藻:『祟鴉』の正体を知った時も驚いたけど、こっちのほうがはるかに吃驚ドッキリだわ!! えええええええっ、マジっすか、本気っすか、マジっすか、本気っすか!? このかわいらしい小学生時代の連夜くんの横に立っているこれって、え、え、えええええっ!?
連夜:そうです。間違いなく現在うちの高校でナンバーワンスーパーアイドルとして君臨している彼女です。
玉藻:あんびり~~ばぼ~~~っ!!
連夜:玉藻さんにだけは見せないでくれって頼まれていたんだけどなあ。と、ともかく、本編いってみましょう。第二話『狐と鴉』です、どうぞ。
玉藻:こ、これが姫子ちゃんって・・絶対ありえな~~い!!
連夜:世の中とはそういうものです。