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88.キキリが喋った


 キキリは言った。

「さあ、背中に乗ってください。私たちは結末を見届ける義務があります」


「キキリが喋った! しかも体だけじゃなくて口調も大人びて‥‥」私は呆気に取られて叫んだ。


「呪いが解けて記憶も定かになりました。そして私の役割も」キキリは強引に私の背中を摘んで背中に乗せた。


「ひっ」私は思わず悲鳴を上げた。


 キキリは私を乗せて飛びつつ話した。

「私は他の生贄とは違いましたね? それはあなた方が来て私を助けた後に、あなた方‥‥主にユカラを援助する役割が私にあったからです」


「へ、へえ。そうなんだ」私は怖気付いて答えつつ思い出した。そういえばキキリは他の生贄のように繭に包まれていなかった。


「ユカラは私たちを救う救世主だからです」


「え! まあ、ユカラ様は皆を救ってくれたしねえ。もちろん私も」私は話を合わせるように答えた。


「違います。私たちだけではなくこの国を救ったのです」キキリは毅然とした口調で続けた。


「モシレコタネの野暮も阻んだしね」私は考えつつ言った。「ねえ、キキリは何者なの?」


「私は『化身』です」キキリは答えた。


 化身? モシレコタネのスキル・分身とはまた違うのか? 

 考えているとキキリの高度が下がってきた。


「着きましたよ」着地してキキリは言った。


「ここは」

 

「ユカラとオキクルミが出会ったあの森です」キキリは言った。


 森の中に人がいた。

 奇妙な面を被ったーー、移動ダンジョンから私たちを救ったあの人物だ、と気づいた。


「アートはカンナに真実を告げる。アートはかつてこの国・ゲヘナの産土だった。国を滅ぼすオロチとの戦いでアートはオロチと共に根の国に沈んだ。一緒に戦った戦友も共に付いてきてくれた」アートは淡々と語った。


「戦友? 根の国?」私は質問した。


「根の国とはすなわちダンジョン。そして戦友とはユカラが連れているクルクル、その親に当たる。鳳凰とも呼ばれる。ユカラはその体液を飲んで鳳凰の眷属となった」


「え! ユカラ様が‥‥」私は数々のユカラの起こした奇跡を思い出し納得して言った。「でも何故ユカラ様が選ばれたのですか?」


「アートの娘、オキクルミを救ってくれたからです」


「オキクルミ‥‥、あのハルニレと入れ替わった人のこと?」私は混乱した。


「いえ、そもそも‥‥。ちょうど良いところに当人が来ましたね」アートが言うと上空から風が吹いた。


 木々の間なら鳥型モンスターとその背に乗ったユカラ様、そして知らない子供が舞い降りてきた。


「カンナ! 無事で良かった!」ユカラ様は叫んだ。「えっと、‥‥もしかしてキキリか?」


 自分の隣に裸の成人女性が立っていることに気づいた。

「あ! そういえば合う服が無かったんだ! って、おっぱいでっか!」


「カンナさん。はしたないですよ」キキリは素っ裸のまま上品に言った。


「いや、はしたないのはキキリの方だ!」私は「せめてここだけは」という按配でキキリの股間を全身で死守した。


「成長したんだな。もしかして呪いが解けたせいか?」ユカラ様は微笑んで言った。


「いや、ユカラ様もなんで普通に話しているの?」私は訊いた。


「娘みたいなものだからなあ」ユカラ様は頭を掻いて言った。


「あと、‥‥ハルニレは?」何故彼女が不在なのか。嫌な予感を感じつつ私は訊いた。


「ハルニレは消えた」ユカラ様は目を逸らしつつ言った。「何故か分からない。何もかもが謎なんだ」


 胸がキュッと締め付けられる思いがした。喧嘩も何度もした。私からユカラ様を奪った相手だ。でも居なくなって欲しく無い。また一緒に‥‥。


「あとひとかた欠けている、とアートは告げる」そう言ってアートは森の彼方を見た。「ちょうど来た」


 オキクルミがオイナを伴って森の奥から歩いてきた。

「呼び出されても私に記憶はほとんど無いよ。オイナも」 

 オキクルミは隣にいるオイナを指して言った。


「アートはここに茶会の催しを宣言する。さあ、皆楽しもう」アートは言った。


「ちょっと待った! 同席させて!」といつの間にシリンに乗ったニドとヴォルクがそこにいた。「今、私たちを除け者にしようとしただろう? ニドの目は誤魔化せないぞ」


「チッ」とアートは舌打ちした。「コイツだけは想定外だった」


「何が起きているの? 訳がわからない」と私は呟いた。

ハルニレが消えたという事実からまだ立ち直っていないというのに事態が次々と進んで行った。


 そして茶会という名の解決編がはじまる。



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