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82.ヤマタノオロチ再び


 俺は子供を抱えてーー、その俺をさらにハルニレが抱えて廊下を飛んだ。


 尖塔の袂のバルコニーに出た時に俺は子供を放して再び訊いた。「君の名前を教えてくれないか」


「俺はもうモシレコタネじゃない。名無しなんだ」子供は言った。「だからナナシでいい」


「そうか。じゃあナナシ。これから君をサールまで送る。だが何故古城から出られないのか教えてくれないか?」俺は確認の為に訊いた。


「まず城には結界が張られていて外まで辿り着けない。今は外が見える。何でだ?」ナナシは首を傾げた。


「それは俺とハルニレがいて道案内の役割になったからだ」俺は結界スキルで得た知識で説明した。


「そしてもう一つ。城から出ようとすると隠し部屋からアイツが現れて俺を捕まえるんだ」ナナシは言った。


 隠し部屋にいたあのモシレコタネはバックアップの役割とは別に生命維持装置を見張る為の警備員の役割もあった。


 そう俺が驚いた瞬間に背後の入口から爆音がした。


「そいつをこちらに渡せ!」モシレコタネは巨大化し三つの首が伸びた異形の姿になっていた。


「せめて入口を出てから巨大化すれば良かろうに」俺は言った。


「ついでに貴様らの逃げ道を塞いだ」モシレコタネはそう言って突進してきた。


 掴みかかってきたモシレコタネの横をすり抜けつつ俺は武器を抜いた。「ターヘルアナトミア」


 モシレコタネの体をバラバラにした。


「ハルニレ!」俺は再びナナシを抱えて叫んだ。


 ハルニレは俺を背後から抱きしめて翼を生やした。

 古城のバルコニーから滑空するように飛んだ時にナナシは歓喜するように叫んだ。

「外に出られた! やった!」


 古城を離れた瞬間に「バチッ」と強烈な音が聞こえた。おそらくナナシの配給装置としての魔力ラインが切れた音だ。


 地平線上が紫色に染まりつつある。夜明けが近い。

「おそらくまだ決着は着いていない」


 古城前の荒れ果てた庭に降りた。バルコニーの辺りから巨大化したモシレコタネの首が見えた。


「もう復活したのか」俺はハルニレにナナシを離れた場所に逃すよう指示をした。


 一瞬心配するような表情を浮かべたハルニレだったが森の中へとナナシを連れて飛んで行った。


「さて、どうするかね」古城の上から次々とモシレコタネの首が幾つも降りてくる。「ヤマタノオロチの姿に戻ったのか」


 顔だけがモシレコタネのヤマタノオロチが古城の上から伝う様に降りてきた。


 正直なところ再びハルニレと分身して戦うのは気が引けた。同じ手が通用すると思えなかったからだ。

 何よりハルニレに負担をかけたくない。

「となると」


 俺はこちらに突進してくるヤマタノオロチにターヘルアナトミアを抜いて構えた。


 大口を開けたモシレコタネの顔が目前に迫った。

 拳にしたポルターガイストで顎下を殴り上げその首筋をターヘルアナトミアで切りつける。迫り来る八つの首にそれぞれ同じように対処した。

 

 ヤマタノオロチは首だけが八つ横たわり、胴体がもどかしそうに跳ね上がっている。

 大地をもんどり打つ胴体と尻尾は周囲に瓦礫の破片を飛び散らせていた。


 その破片を掻い潜り、再び俺はターヘルアナトミアで首を切り刻みにかかった。微塵切りなら復活出来ないだろうと考えたからだ。


 だが早々に起きた首の一つから赤い光が見えた。


「ヤバい!」インドラの矢を防ぐために俺はポルターガイストを出した。

 辛うじてインドラの矢は防いだものの、その期に乗じて他の首も胴体と繋がり復活してしまった。


「ジリ貧だな。キリがない」


 そう呟いたと同時だった。

 視界の両端に巨大な箱が二つ見えた。


「クソッ」俺はポルターガイストで自分を殴りつけて移動ダンジョンから逃れた。


「しぶといな」とモシレコタネは言った。「だがいつまで保つか」


 それはこっちの台詞だ、と言いたかったがポルターガイストのダメージが思ったより大きい。大地に寝転びながら、こんな攻撃を相手にしていたのかと我ながらポルターガイストの力が恐ろしくなった。全身打撲をエターナルゾンビで急速に治した。


 復活したヤマタノオロチが俺を四方八方から見下ろす。その八つの口が同時に開いて赤い光を発した。

 八つの顔の向きが微妙に違う。広範囲にインドラの矢を放って逃げられないようにしているのだろう。

 ポルターガイストで防ぐのにも限界がある。


 ーーこれは死んだか


 そう思った瞬間にヤマタノオロチが視界から消えた。そしてやたらめったら発射されたインドラの矢が周囲を赤く染めた。


 巨大な、あまりにも巨大なモンスターが俺の顔を覗き込んでいた。

 カーカに置き去りにされた時にダンジョンで出会ったあのモンスターに似ている、と思った。

 そしてモンスターは言った。


「クルクル」


「え?」



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