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80.クラインの布


 逃げたモシレコタネの手首は廊下に出ても見当たらない。


「また再生されたら厄介だ」ニドは考え込んで爪を噛んだ。


「やっと出番ですね」ヴォルクは言った。「ズビニャー(西洋松露)! モシレコタネの手首の位置を教えて!」


 網の目の模様が壁中に浮かび、向かいの部屋の壁に光が灯った。


「この部屋の中か」ニドはドアを蹴り破るとそこには女性がスライムのような物に巻きつかれて立っていた。


「た、助け‥‥」女性は辛うじて言った。


「王妃様!」ヴォルクは叫んだ。


「王妃なのか。別室で寝ているんだな」ニドは呑気に感想を述べた。


「動くなよ、動いたら王妃の体を乗っ取るぞ!」巻きついたスライムのような物にモシレコタネの顔が浮かんで叫んだ。


「いや、そもそも乗っ取る気だろう」ニドは言ってシザーバッグから苗木のような物を掴んでモシレコタネに投げつけた。「エアプランツの魔草だ」


 エアプランツはモシレコタネの体に張り付いた。


「そもそもモンスターとは動物や無機物などと精霊との混合体だ。そしてスライムはアメーバや生物の粘液が元と思われがちだがほとんどは泥で出来ている。つまりその生成体のほとんどが水でできている」


「うっ、おああああああああああああああ」王妃に巻きついたモシレコタネのスライム体は急激に縮んで床に落ちた。


「エアプランツは大量に水分を吸い上げる、戻れ」ニドが言うとパンパンに膨れ上がったエアプランツの魔草はスライムから離れシザーバッグに戻った。物理的に入れないはずの巨体は難なくシザーバッグに入った。「さて程良く乾燥したな」


「やめろ! 何をする気だ!」乾燥して体が硬直したモシレコタネは体が動かせないまま叫んだ。


「フランマ」ニドが右手をかざすと炎が噴き出てモシレコタネを包んだ。


「ぐああああああああああああああああああ!」


 部屋の中に炎が渦巻き、やがて鎮火して小さな消し炭が残った。


「ここからが大事だ。また逃げられるからな」ニドはシザーバッグから風呂敷包みのような物を取り出して消し炭に掛けた。


「それは?」ヴォルクは王妃を介抱しつつニドに訊いた。


「これは『クラインの布』だ。布に包まれた物は何処に行くか誰も知らない。移動ダンジョンの劣化版みたいなものだ。まあ行き場所この世とは違う所なのは確かだから安心しろ」そう言ってニドは奇術師のように空中で一回転させて布をシザーバッグに入れた。


 今までクラインの布があった場所には何もなかった。ニドのフランマという火炎魔法の焦げ跡だけが床に残されていた。


「そのシザーバッグは何でも入っているんですね!」ヴォルクは感嘆して叫んだ。


「何でもは入っていない。特に惚れ薬は世界中の何処を探しても見つけられなかった」ニドは落胆して言った。


 そう呟いたニドの横顔を窓から朝日が照らした。

 その瞬間ニドは体を震わせて倒れた。


「ニドさん!」ヴォルクは叫んだ。


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