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78.ベヒモスとの死闘


 キキリとカンナは夜空を飛び国境付近にたたずむキャラバンを発見した。


 カンナは懐からコンパスと地図を取り出しキキリの背中で広げる。指先から小さな球電を発生させて地図を見た。

「たぶんあのキャラバンにいる」


 見知った土地ではないが遠くに見える山脈が神聖アガルタ帝国の有名な土地であることはわかった。

「通称『白い天蓋』だ。常に雪がかかっている。キキリ、ここだ」


 キャラバンは森の側に流れる運河の側で野営していた。運河にはカヌーがいくつか停泊している。


 運河の上流の方に降りたキキリとカンナは打ち捨てられたカヌーがあるのを発見した。


「あの中に隠れよう」カンナは提案する。


 カヌーは一人乗りくらいの大きさだったのでキキリは小狐の姿になり甲板に横たわるカンナのお腹の上に乗った。


「キキリは温かいな。ユカラ様がよく膝に乗せている理由も分かる」

 そう言ってカンナはお腹に乗ったキキリごとヒップバックに入れていた防水シートで体全体を覆った。


「月の位置が西に傾いたら行動開始ね」カンナは言った。

 神無球というこの世界では太陽と月はほぼ対角に位置しているのでそのまま時計代わりになる。


 月が西の地平線まで落ちた辺りでキャラバンから悲鳴が聞こえた。

 キキリはその声を聴いてカンナの顔を舐めて起こした。


「え‥‥。何かあったの?」

 カンナは防水シートをゆっくりとめくりカヌーの上からキャラバンが停泊する方を見た。


 キャラバンは三台の馬車で構成されていた。その右端の馬車からモンスターが現れたらしい。


「あれは、‥‥ベヒモスか」


 朝日が差す少し前の紫色の空が広がっていた。

 それを背景に頭に角を生やした筋骨隆々のモンスターがキャラバンの人たちを蹴散らしている。


「朝日が近い。行こう!」

 カンナの言葉と共にキキリは二回転して妖狐になった。


「しかし何故この場所なんだろう?」

 そんな疑問を口にしたカンナはキャラバンの側に来て合点がいった。


「軍隊蜂の塚だ。ダンジョンにしか居ないはずの軍隊蜂の、しかもこんなに巨大な塚の群れがあるなんて」

 カンナはキャラバンの向こう側にある軍隊蜂の塚がまるで遺跡のように立ち並んでいる光景を目にして言った。


 夜中に見た時は運河近くにある森林にしか見えなかった。


「こんな大事な事を見落とすなんて! ユカラ様なら気づいたはずなのに!」


 キキリはカンナの嘆きに首を上げて振り返った。何故あの軍隊蜂の塚が大事な事なのか? と言いたいのだろうとカンナは考えて説明した。


「軍隊蜂は一度攻撃すると動く者を根絶やしにするまで無差別に攻撃しつづける。ダンジョン内なら外に出ることはないので被害は及ばない。けれどこの規模の軍隊蜂を刺激したら国中の人間を襲うだろう」カンナはそこで一区切りして考えた。


「おそらくモシレコタネは人間の姿でその対策に赴いたという体にして、実際には軍隊蜂をけしかけるつもりで此処に来たんだ。オロチが討伐された代わりに!」


 ベヒモスはキャラバンを蹂躙したあと、軍隊蜂の塚の方へと振り返る。


「ヴァジュラ(雷神雷刀)!」カンナは射程距離に達した時に叫んだ。


 ベヒモスがヴァジュラで硬直した一種にキキリはその両腕を掴んで空に飛んだ。


 カンナはあえてヴァジュラを制限して発した。

 まずはベヒモスを昏倒させて軍隊蜂の塚から離す事が最重要事項だったからだ。


 キキリはトップスピードで飛んで運河が見えない荒野のど真ん中にベヒモスを落とした。


 その瞬間に朝日が差した。


 おそらく落下の最中にベヒモスは目覚めたのだろう。着地の瞬間に翼を広げて落下の衝撃を抑えた。


 それでも地面にクレーターが出来るほどの衝撃があった。


「ユカラの手の者か!」ベヒモスは叫んだ。


「お見通しか。だったら早期決着するしかない! ヴァジュラ(雷神雷刀)!」


 カンナのヴァジュラはベヒモスの手前で火花となって消えた。


「なんで⁉︎」


 よく見るとベヒモスの周囲には鉤爪のような物体が何個も浮かんでいる。

「貴様の攻撃は何度も受けた! 対策くらいするのが当たり前だろうが!」ベヒモスと化したモシレコタネは叫んだ。


 このパターンはダンジョンで蠍型モンスターのときに経験している。


 そうカンナが考えた瞬間に目の前にベヒモスの鉤爪のある手のひらがあった。


「ウグッ!」キキリとカンナはベヒモスの振り回した手のひらの攻撃を直撃した。


 キキリは衝撃で気絶した。

 カンナを守って身を挺してベヒモスからの攻撃から守ったからだ。


 落下しつつもカンナは叫んだ。「なんで!」


 同時に考える。このままでは地面に激突する。

「キキリ、ごめん!」

 そう言ってカンナは極小の電撃をキキリの首筋に流した。


 電撃のショックで目覚めたキキリは地面との衝突を避けて着地した。


 そこへ上空からベヒモスの追撃が迫る。


「エレクトロ・スフィア(雷神繭)!」 

 叫び声と共にカンナとキキリの前に巨大な球電が出来た。


「クソッ」

 ベヒモスは球電を避けて地面に着地した。


 カンナは不意に作戦を思いつきキキリに耳打ちした。

 そして叫んだ。

「ヴァジュラ(雷神雷刀)!」


「だから効かないんだよ!」ベヒモスはカンナの攻撃に合わせて切り離した鉤爪を幾つも空中に散布した。


 ヴァジュラは避雷針の役割を担った鉤爪に吸い込まれるように消えた。


 だがその直後突風が吹いて鉤爪を吹き飛ばした。キキリの遠距離魔法だ。


「な!」ベヒモスの姿をしたモシレコタネは驚いたように呟いた。


「ヴァジュラ(雷神雷刀)最大!」


 ベヒモスは黒焦げになり、体表面が粉々になる。やがてその塵の中に小さなモンスターが逃げようとしているのをカンナは見逃さなかった。


「エレクトロ・スフィア(雷神繭)!」

 カンナは粉々になりつつあるベヒモスの体をさらに球電で包んだ。


「ぐあああああああああああああ!」

 逃げようとしていた小さなモンスターも消し炭になる手前で叫び声を上げた。

 そして跡形もなく消えた。


 キキリは少女の姿になりカンナとハイタッチした。


「あれ?」裸のキキリを見てカンナは違和感に気づいた。「おっぱいが膨らんでいる? 背も少し高くなって‥‥」


 キキリは照れたように頭を掻いた。


「もしかして呪いが解けていくと成人女性の体になるの?」


 キキリは胸に手を当て、それから手で自らの体中を触って確認する。

 そして頷いた。


「また恋敵が増える‼︎」

 朝日が差す荒野でカンナは頭を抱えて叫んだ。



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