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76.ヤマタノオロチ討伐


 天羽々斬を手にした俺とその背後に抱きついたハルニレは七体とも空に浮かんだ。


 結界を解いた。


 途端にオロチは宙に浮かび淵の外に出た。


「なんだその姿は!」モシレコタネが小馬鹿にしたように叫ぶ。


 その問いに答えず七体の俺とハルニレは神速で移動しオロチの首を同時に切り落とした。


「なんだと!」モシレコタネは切り落とされた首の一体と一緒に荒野に落ちた。


「ヴァジュラ(雷神雷刀)最大!」カンナが叫ぶとオロチの胴体が発火して黒焦げになった。


「アポストール、出番だ!」ニドは胴体にアポストールを特攻させた。戻るべき場所が無ければ首も消失するはずという目算だろう。

 実際、首は次々と消失していった。


 最後の首にはモシレコタネが付いていた。

「やめろ! 来るな!」


 アポストールはモシレコタネに抱きついた。

 一瞬にしてモシレコタネは塵になった。


 その様を上空から見ていた俺とハルニレは安心して地上に降りた。

 地上に着いたと同時に七体の俺とハルニレは一つに戻った。


 天羽々斬は元の眠り姫の姿に戻り、そしてハルニレは気を失った。



「まだ終わりじゃない。ハルニレとオキクルミ、そしてキキリにかけられた呪いを解く」俺はハルニレをお姫様抱っこしたまま皆に宣言する。「だがここからは俺の個人的な戦いだ。皆に付き合う義理はない。もし降りたかったら‥‥」


「ニドはいつでもユカラと一緒だ。ユカラもそれを許してくれた」ニドは顔を真っ赤にして言った。「だから付き合う」


「お嬢のために私はここにいます」ヴォルクは言った。「後で色々と文句も言いたいので戻ってもらわないと困ります」


「ハルニレもキキリも私の親友だ」カンナは一言だけ言った。「理由はそれで充分」


 ありがとう、と言って俺は頭を下げた。

 同時にハルニレは目覚めた。


「下ろすけど平気か?」も俺は訊いた。


 頷いたので俺はハルニレを下ろす。


「モシレコタネは分身を幾つも持っている。その全てを倒さないと呪いは解けない」俺は言った。


「だったらカーカの出番だな」

ニドは言った。「あいつのスキルでモシレコタネの分身体を全て見つけ出してシラミ潰しだ」


「だがカーカはどこにいるか分からない」俺は腕を組んで言った。


「それなら大丈夫。こんな事もあろうかとカーカに目印を付けておいた。ダンジョンのマーカーと同じ原理だな」ニドは言ってステイタス画面を開く手つきをした。「あ」


「どうした?」俺は訊いた。


「アイツ、まだ人形のダンジョンにいる。よく生きていたな」



 ニドはシザーバッグから再びシリンを出した。

「全身乗り込んだか」


「今回は最初から手がニドの胸にあるんだが」俺はニドに導かれるままに彼女の胸に手を当てていた。相変わらず柔らかい。


「ニドは活躍したろう。ご褒美が欲しい」ニドは悪びれもせずに前を向いたまま言った。


 それを言われると弱い。ニド無しでヤマタノオロチを倒すことは出来なかったと言っても良い。


「シリンに乗っている間だけだぞ」


「ちなみにニドの胸を揉んだのは生涯ユカラだけだ」


「え」


 俺が困惑している間にシリンは走り出した。



「なんでまた居るんだよ」とカーカは俺達の姿を見て力無く言った。


 カーカはベッドの上で寝転んだまま起き上がれもせずにいる。


「そういえばしまい忘れていた」ニドは頭を掻きながら言った。「よく生かされていたな」


 ニドは謎の丸薬を勇者・カーカの口に放り込んだ。


「口から出まかせで『ニドが戻るまでここを任されている』と言ったら人形は遠巻きに見ているだけになった」と語った後に勇者・カーカは突然上体を起こした。「おお! 元気になった!」


「ここのダンジョンの生贄を取り除いたからな。そこまでの元気もなかったのだろう。おい」


 ニドの掛け声に岩肌の間から人形が姿を現した。『ハイ』


「ダンジョンに生贄を捧げると願いが叶うって言い伝えにはよく分からん所がある。説明しろ」ニドは言った。「生贄はお前のようなダンジョンの主の生命力を底上げするだけに見えるんだが」


『願いを叶えるのは特殊なダンジョンだけだ。それも大昔の話で今は存在すら怪しい』人形は流暢に話した。


「その逸話を体よく利用してお前達は生命力の底上げをしていたわけか」


 ニドが言いたい疑惑とはつまり、願いを叶える為に来た冒険者を捕らえて生贄にするという事だろう。


『そ、それは違う。ある時見たこともない人型のモンスターが現れた。そいつは(生贄を得れば力が増す〕と俺達に妙な石を手渡した。生贄を作る石らしい。実際に得られる力は生贄の半分しか得られなかった。もう半分はその人型モンスターが吸い上げていたらしい』


 ボルテクスもモシレコタネの仕業だったと知って俺は妙な合点がいった。 


「生贄で力の底上げしていたことに特に違いはないように思えるが」ニドは首を傾げて言った。


『それを始めたのは俺達じゃないって言いたいだけだ』人形は焦ったのか、大きな身振りで説明した。


「まあいい」ニドは満足したように言った。「下がっていいぞ」


 人形は一礼してそそくさとダンジョンの奥へと逃げて行った。


「さて。知的好奇心を満たした所で」ニドはベッドの上に乗ったままの勇者・カーカをベッドから蹴り落として言った。「仕事だ」


「もう勘弁してくれ!」ベッドの下に落ちた勇者・カーカは泣き叫んだ。



「お前、臭いな」ニドは鼻を摘んで勇者・カーカに言った。


「ベッドから移動できなかったんだから仕方ないだろう!」勇者・カーカは地図を広げてスキルを展開する準備をしながら言った。


「そういえばずっと臭い」カンナも言った。


 ヴォルクもハルニレも鼻を摘んでいる。キキリは平気そうにしていた。

 俺はベッドの周りの惨状をみて想像はついていた。


「王宮に一人と神聖アガルタ帝国との国境付近にも一人、あとの一人はプルガトリオ付近の村にいる」勇者・カーカは錘の指し示す場所を淡々と告げる。「反応は三人だけだ」


「プルガトリオ付近ってもしかしてサールか?」俺は勇者・カーカに訊いた。


「古城があるところを錘が指し示している」勇者・カーカは言った。


「三箇所か」ニドは腕を組んで唸る。


「なんで三箇所も同じ人物で反応があるんだ?」今更という感じで勇者・カーカは訊いた。


「そこはいい」とニドは勇者・カーカの言葉をいなして考え事をしている。


 おそらく俺も同じ考えを抱いている。オロチ討伐と同じように同時に倒さないとモシレコタネは分身して逃げる。オキクルミと一緒に最初に討伐した時のように。


「大量に吸い上げた生命力はオロチに消費した。そしてギルドと冒険者達のダンジョン攻略によって生贄による生命力の吸い上げが減ったからもうこれ以上自発的に増える事はないとは思う。だが一体でも討伐すれば他のモシレコタネも感知して分身するだろう」ニドは忌々しげに言った。


 もし近くにいるのならばオロチの時のような作戦が立てられるがほとんど国中に散らばっている現状だ。


「モシレコタネの狙いはゲヘナ国の崩壊だ。同時多発的に騒乱を起こして国を壊滅する気だ」ニドは言った。


「となると」

 俺たちはダンジョンを出ることにした。

 カーカが何かを言ったが聞こえなかった。


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